[機器][通信] I-ODATA, HDL2-AAX4E〜リモートアクセスできるNAS
今どきのNASを使ったらリモートアクセスもiPhone画像のバックアップもカンタン過ぎてビックリ
瀬戸 学
2022年5月13日 12:16
会社から自宅にリモートアクセスすべく、アイ・オー・データ機器のNAS「HDL2-AAX4E」を購入した
メインは自宅でテレワーク、ときどき出社という今の形になって、ちょっと面倒なのがファイルの保存先だ。原稿などは容量が小さいのでクラウド上で問題ないが、セレクト前の莫大な写真や動画データなどは容量が大きすぎてクラウドでは管理しにくく、自宅のメインPCに保存している状態。ときどき出社する際には、仕事で使いそうな素材を持ち運び用のノートPCにコピーしたり、ちょっとした画像であれば、リサイズしたものだけクラウドに上げたりしてから出社している。しかし出社する度にこうした作業をするのは面倒だし、せっかく準備していっても、やっぱり別の画像が使いたい、なんていうこともある。
そこで今回は、職場からでもリモートアクセスできるNASを購入することにした。テレワークが定着した昨今、INTERNET Watchの編集部員も、それぞれのテレワーク環境を改善すべく工夫を凝らしている。この連載では、そんなスタッフが実際に使ってオススメできると思ったテレワークグッズのレビューをリレー形式で紹介。今回は、ほぼ在宅ワークが中心となった編集部員が、出社したときにも自宅にリモートアクセスするべく導入したNASについて紹介する。
■今どきのNASはリモートアクセスもカンタンらしい……
実は昔、自宅のNASでリモートアクセスできたら便利そうだと挑戦したことがあった。しかしルーターのポートを開いたりIPアドレスを固定したりといろいろ試してみたものの、結局うまくいかず断念したことがある。そんなこともあってNASのリモートアクセス化に苦手意識を持っていたのだが、なにやら最近のNASはリモートアクセスの設定がカンタンにできるらしい。調べてみると、さらにWi-Fi経由でスマホの画像を直接バックアップできるような機能も付いているようで、なかなか物欲が刺激される。それならば今一度挑戦してみるかと、調べていたところ、ちょうどAmazonのセールで安くなっていたこともあって、アイ・オー・データ機器の2ベイ4TBで、2.5GbEに対応した「HDL2-AAX4E」を購入することにした。
我が家の有線LANは現状ギガビットで、2.5GbEはオーバースペックではあったが、4TBのモデルだと下のギガビットモデルと2000円程度の価格差で、CPUもシングルコアからデュアルコアになる。今後何年も使うことを考えると、2.5GbEも普通になるかもしれないし、まぁ2000円程度ならいいか、という気になった。容量は、基本は仕事で使う写真とiPhoneのバックアップ程度であれば、数年間は4TB(実質は2TB)でも十分だと判断した。それとこのNAS、内蔵HDDの交換もとてもカンタンにできる上に、「拡張ボリューム」という、RAID 1とはちょっと違った独自のミラーリングを使っているとのことで、将来的に容量が足りなくなった場合にも、HDDを1つずつ交換することで、データ移行&容量アップがスムーズにできる仕様になっている。最初から大きすぎる容量を買うよりは、まずは4TBにしておいて、それが一杯になるころに、新しくて大容量のHDDへと換装していけば、HDDの寿命的な意味でも無駄のない運用ができそうだ。
■届いた製品をチェック!!
ということで製品が到着。外箱は真っ白で質素だったが、本体は真っ黒でヘアライン仕上げとなっており、プラスチックではあるがAV機器のような高級感がある。縦長の筐体で海外製のNASと比べるとかなりコンパクト。正面にUSB2.0のポートが1つと、背面には電源、有線LAN、USB2.0とUSB3.1のポートと電源ボタンがある。背面には2.5GbEの有線LANポートのほか、USB 2.0と3.1のポートがある。ここにUSB接続のHDDをつないでさらにバックアップを取ることもできる天面に押せる部分が1つあり、ここを押しながら天面をスライドさせると中のHDDにアクセスできるようになる。HDDの脱着は工具不要で可能という容易さだ(ただしHDDの交換にはプラスドライバーが必要)。
🔧HDDを引き出すところまでは工具無しでいける
同梱の説明書に従って接続。といってもLANケーブルの接続と電源の接続程度だ。先にも書いたとおり現時点ではほかに2.5GbE対応の製品がないので、一般的なギガビットのイーサネットにつないでいる。そして電源投入。事前にいろいろなレビューで見かけていたが、確かに起動したときの起動音はデカい。ただ、動作音のレベルはごく一般的な静かさで、書き込んでいるときのカリカリ音もファンの音も、すぐ横にあってもそこまで気にならないレベル。また熱的にも、触ればわずかに暖かい程度で、ヤバそうな感じはない。
🔧専用アプリで設定もスムーズ
次にPCには専用アプリ「LAN DISK CONNECT」をダウンロード。アプリから設定画面を呼び出すと、ウェブブラウザーが立ち上がって、NASの設定画面が見られる様になる。初回は管理者パスワードを設定してログイン。さらにアクセス用ユーザーIDを登録する。共有フォルダーもここから設定可能で、ユーザーIDごとにアクセス権を設定できる。家族での使い分けはもちろん、例えば仕事のPCで使うユーザーIDと、スマホなどプライベートで使うユーザーIDを分ければ、仕事場でうっかりプライベートな写真を開いてしまうことも防げるだろう。
設定項目はいろいろとあるが、同梱されている紙の説明書(初回設定マニュアル)では、基本的なことだけに絞って説明されているので、使いこなすには同社のウェブサイトで「詳細ガイド」を確認する必要がありそうだ。まだ全然使いこなせていないが、オプション(有償)でテレビの録画先としてDTCP-IP対応にできる機能や、セキュリティ機能、また、GoogleドライブやDropboxなど、さまざまなクラウドストレージと同期する機能なども使えるらしい。
ただ、そういうことを考えなければ、ローカルでNASを認識させることはとてもカンタンだ。
■おどろくほどカンタンなリモートアクセス
そしていよいよリモートアクセスを設定する。以前の失敗があるので不安もあったが、実際には拍子抜けするほどカンタンに設定できた。設定画面の共有の中から「Remote Link 3」というのを選択し、「IOPortal」から製品を登録する。IOPortalというのはアイ・オー・データ機器の利用製品を登録するもので、これまで登録したことがない場合は、最初にIOPortalのサイトで会員登録が必要になる。会員登録ができたら、設定画面に戻って登録したメールアドレスとパスワード、NASのシリアルナンバーを入力する。続いてRemote Link 3の設定から[Remote Link 3]を[有効]にし、共有フォルダーごとのチェックボックスにチェックを入れて、有効にする。なお、新しく共有フォルダーを作った場合は、フォルダごとに有効にしないと、外からは見ることができない。実は筆者はそれに気が付かず「共有フォルダーを追加したのにリモートで見えない!!」としばらく頭を悩ませることになった。あとは、ローカル上で見えているNAS(デフォルトだとlandiskー****という名前)を右クリックして[リモート登録]を選択。先に登録したアクセスユーザーの情報を入れれば完了だ。
自宅に複数のPCがある場合は、それぞれのPCでアプリ「LAN DISK CONNECT」をインストールすることでどのPCからでもNASにアクセスできるようになるし、外に持ち出す可能性のあるPCであれば、上記の右クリックで[リモート登録]を選べば、外出先からアクセスできるようになる。あまりにカンタン過ぎて心配になったが、試しにモバイルルーターでアクセスしてみると、確かにつなぐことができた。あのときの苦労はなんだったんだ!?
■スマホはアプリでQRコードを読むだけ
スマホに至っては、アプリ「Remote Link Files」をインストールし、接続機器の登録へ。PC側の設定画面から「接続用PINコード」(QRコード)を表示させて読み取り、アクセス用ユーザーIDとパスワードを入力するだけでOKだ。また、iPhoneで撮った写真のバックアップには「Fotoclip」というアプリ(現在はiOS用のみ)を使うことで、Wi-Fi経由でスマホの中の画像をNASにバックアップできる。しかもiPhone内の画像を縮小することもできるので、バックアップしたあと画像を縮小すれば、iPhoneの容量を圧迫しがちな写真データを圧縮可能だ。
NASにバックアップした写真を見たい場合は、前述の「Remote Link Files」を使うか、「Fotogenic」というアプリでも閲覧できる。Fotogenicは、より写真閲覧に特化したアプリで、NASの中の写真をメールでほかの人に共有したり、タグ付けして整理したり、Instagramに投稿したりすることも可能だ。
スマホ写真のバックアップがめちゃ快適!! でも問題も……
もともと仕事のファイルを外出先からアクセスできるようにと買ったNASだったが、このスマホの画像バックアップがめちゃくちゃ快適で便利すぎた。
子どもが生まれてからというもの、子どもの写真や動画でスマホの容量は常に圧迫されまくっている。Amazonプライム会員なので、Amazon Photoを使ってバックアップしているが、この場合、写真は無制限だが、動画は制限があって、とっくに容量オーバー。もちろんPCでもバックアップもしているが、その都度PCを立ち上げてケーブルをつないで、という作業は面倒な上に、バックアップした写真を見るのにもPCを立ち上げる必要があるなど手軽さがない。結局スマホの中の愛娘の写真を消すことはできずにいた。その点、FotoclipだとバックアップはWi-Fi経由なので、わざわざケーブルをつなぐ必要もなく、動画だってNASの容量を超えなければいくらでもバックアップできる(ただし1ファイルで4GBを超える動画はバックアップされない)。さらにiCloudに保存した写真もバックアップされるらしい。最初はかなりの容量を一度にバックアップすることになったが、アプリも安定していて途中で落ちることもなかった。逆にほかのアプリを開くとバックアップが止まってしまうが、アプリを再開するとちゃんと中断していたところから再開されるので、時間があるときに少しずつバックアップするのでも大丈夫だ。ただし、よいことばかりではない。特にアプリが複数にわたっているのが面倒で、Fotoclipでは簡易のサムネイルが見られるが、NASと同じLAN内のWi-Fiにつながっている必要があるので出先では使えない。外出先でバックアップした画像を見るためにはFotogenicかRemote Link Filesで開き直す必要がある。この時、年月に分かれたフォルダの中から写真を探し直す必要がある。その上Fotogenicではサムネイルが表示されるのにも時間がかかる。JPEGファイルであればそれほどでもないが、iOSのHEICファイルだとサムネイルがなかなかできず、特に出先で探すのは大変そうだ。これについてはiPhoneのカメラの設定でフォーマットを[互換性優先]にすることで、JPEGで撮れるようにした。若干容量は大きくなってしまうようだが、バックアップが容易になればその問題もない。むしろサムネイルの表示の早さでも扱いやすさでもメリットのが大きいだろう。
あとはバックアップした画像を消してしまうのではなく、リサイズして取っておくようにすれば、普段はリサイズした写真をスマホだけで確認できるし、大きい写真が必要になったときだけNASにつなぐといった使い方ができそうだ。試しに筆者のiPhone XRの中の写真を、Fotoclipでリサイズしてみたところ、画像のサイズは3024×4032ピクセルから827×1103ピクセルにリサイズされた。それでいてスマホの画面で写真を楽しむ、という範囲であればサイズが小さすぎるという印象はない。というかたぶん言われなければ気が付かないレベルだ。結果的には、写真4123枚をリサイズして、7.41GBほど削減できた。あとはビデオも消せばだいぶ余裕が生まれるだろう。なお、クラウドのバックアップサービスを利用している場合、場合によってはリサイズした画像が再度バックアップされたり、クラウド上の画像もリサイズされたりする可能性がある。筆者が使っているAmazon Photoだと、リサイズされた画像が再度アップされる形になった。といってもAmazon Photoの場合、アップロードした日で絞り込めるので、リサイズ済み分だけ削除することも可能だ。
■ギガビット接続での速度はいかに?
ということで、これまでメインPCの内蔵SSDに保存していた画像ファイルや動画ファイルはNASに保存するようにした。写真などを保存しているフォルダをネットワークドライブに割り当てれば、内蔵ドライブ感覚で使うことができるようになって、写真整理に使っているLightroomなどでも直接アクセスできるようになる。いままで使っていたのがSSD(SATA)なので、それと比べると遅さは感じるが、内蔵ストレージをHDDからSSDに換えたときにかなり速くなった印象があるので、HDD同士での比較であればそれほど差は感じなかったのかもしれない。試しにSDカードの写真データ(約1GB)の書き込みにかかる時間を実測してみたところ、NASが手計測で3分44秒程度、内蔵SSDがおよそ2分18秒。速度としては約4割ダウンという結果になった。といっても1GBコピーして1分30秒程度の差なので、遅いというよりは、むしろSSDの速さを改めて実感したという印象だ。そこでNASの中のフォルダをネットワークドライブに指定して、CrystalDiskMarkを使って速度を計測してみたところ、シーケンシャルリード(Q8T1)で109.19MB/sをマークした。ギガビット接続ということを考えれば、けっこう速いと言えるだろう。内蔵HDDの速度もあるのでどこまで伸びるかは分からないが、将来的に2.5GbEにしてみるのも楽しみだ。
INTERNET Watch
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/teleworkgoods/1408790.html