[ゲーム][TRPG] ゲームブック/社会思想社~TRPG(テキストRPG)の世界
◆「顔のない村」
顔のない村
2012年08月14日 21時58分48秒 | ゲームブック(社会思想社)
一時期よりは多少マシになってきたとはいえ、まだまだ暑い日が続く今日この頃。皆様、いかがお過ごしでしょうか。
暑い夏には、背筋も凍るような恐怖体験で納涼と洒落込みたいものです。と、いうわけで、夏の怪奇特集と称しまして、ホラー系のゲームを幾つかプレイしていきたいと思います。
怪奇特集の第一弾は、思緒雄二のゲームブック「顔のない村」。元々はウォーロック第12号に掲載された作品で、「送り雛は瑠璃色の」(社会思想社・現代教養文庫)に収録されています。
舞台は現代の日本。主人公は気が付くと、とある旅荘の一室にいた。ふと外を見ると、旅荘の庭に、赤い着物を着た2、3歳くらいのオカッパ頭の少女がたたずんでいる。近くに寄ってみると、その少女には、「顔」がなかった……。
冒頭から状況説明は一切なし。主人公は記憶を失っており、自分が何者で、なぜここにいるのかもわかりません。唯一の手がかりは、部屋に残されていた、切迫した状況を伝える殴り書きのメモのみ。主人公はほとんどヒントもないままに村をさまよい、この村の謎を解いて、生還しなくてはならないのです。
地図に行ける場所とパラグラフ番号が9箇所記載されていて、行きたい番号に飛んで、その場所で起こるイベントを処理して、1d6×10分の時間が経過して、また次の探索ポイントへ移動する、という形でゲームは進行していきます。
主人公が現在どういう状態に置かれているのかがわからないことと、村内で起こる奇妙な出来事に、不気味な化け物たち。さらに探索を進めるにつれてどんどん時間が経過していき、気力点もじりじりとすり減らされる(「地獄の館」の恐怖点並みに、ちょっとしたことで減点されます)ことで、どこか落ち着かないような雰囲気と、焦燥感が演出されます。
システム面は、能力値の決定から、戦闘方法、運試しまで、ほぼファイティングファンタジーシリーズそのまんまです。異なるのは、体力点が気力点になっていることくらいですかね。気力点は、通常の体力に精神力の意味合いをからませた感じ、だそうです。
冒頭にあるルール説明の文面も、体力と気力の表記以外はほぼ同じものです。もっと言えば、冒険記録紙も同じです。
「顔のない村」冒険記録紙
「火吹山の魔法使い」冒険記録紙
ご覧のとおり、「火吹山の魔法使い」のキャラクターシート、そのまんまですね。しかも一箇所、気力点が体力点になってるし。
ちなみに、冒険記録紙には欄が用意されていますが、「顔のない村」には金貨も宝物も飲み薬も登場しません。そのくせ、「顔のない村」にはあってしかるべき、時刻の記録欄が存在しないんだよなぁ。手抜きにもほどがあるだろ!
1回目のプレイは技術点9、気力点15、運点12と、運以外がしょぼかったので、途中で気力が切れて死亡。2回目のプレイでも能力値は平均的でしたが、1回目のプレイのときの知識があったので、普通にクリアすることができました。
パラグラフ数は200とそこそこあるのですが、大量の選択肢(ただし、そのほとんどがハズレで、結局数パターンの移動先に収束する)で水増しされている箇所もあるため、数字ほどのボリュームは感じません。実際、「顔のない村」のゲームパートのページ数は、84ページしかありませんしね。
残念ながら、ゲームとしての完成度は、それほど高くないと思います。最大の理由は前述の移動システムで、次にどこに行くのかという自由度は高いのですが、次にどこへ行くべきを判断する材料が、全然ではありませんがほとんどありませんので、適当に選択していくしかないんですよね。
そういった部分は、どのゲームブックにも少なからず存在します。しかし、それを補うためにあるストーリーや伏線といったものが、「顔のない村」には希薄です。しかも、どうすればクリアできるのかといった攻略的な部分も、移動先があらかじめすべてオープンになっているために、端から試せばなんとかなってしまいます。
結局、たくさん並べられているビックリ箱を適当に開いていって、「当たった」「外れた」と中身を確認する作業を繰り返すだけの、単調なゲームになってしまっているのです。
この辺り、良くも悪くも、「送り雛は瑠璃色の」のプロトタイプといった印象ですね(「送り雛は瑠璃色の」の感想については、こちらをご参照ください)。この1年半後に「送り雛は瑠璃色の」が書かれるわけですが、長所短所共に「顔のない村」と似通った部分が多くなっています。ただ、ストーリーや謎解きといった部分で、「顔のない村」からは明確に進歩していると思いますけどね。
正直、ちょっとイマイチでしたかねー。和風ホラーとFF準拠のルールを結合させたまでは良かったのですが、あまりバランスの良い仕上がりにはなりませんでした。
ところで、一足先に創土社から復刊された「送り雛は瑠璃色の」に続き、「顔のない村」も創土社の復刊予定リストに載っていたのですが、こちらはとんと音沙汰が無くなってしまいましたね。つーか、2011年3月の「七つの奇怪群島」以降、創土社からは1年半もゲームブックが出ていません。ドルアーガの最終巻、待ってるんだけどなぁ……。
しかし、「顔のない村」が創土社から単独タイトルで復刊されるなら、ゲームの構造はシンプル過ぎるし、ボリュームも足りないしで、相当手を入れないとならないでしょうね。復刊された暁には、きっと別物と言えるくらいに改造されるでしょうから、この作品にどんな現代的なアレンジが加えられるのか、楽しみですね。もし、本当に復刊されるなら、ですけどねー。
◆「君ならどうする・食糧問題」
君ならどうする・食糧問題 感想
2006年05月30日 23時39分48秒 | ゲームブック(社会思想社)
だいぶ前の話ですが、4月30日に横浜スタジアムまで野球を観に行ってきました。で、その道中で社会思想社・現代教養文庫のM.アラビー著のゲームブック、「君ならどうする・食糧問題」をプレイしました。
これは発売当初に普通に新刊で購入して当時もある程度はプレイしたのですが、ゲームとしての面白さというよりもネタゲームブックとして楽しんでいたような記憶があります。改めてプレイしてみて、実際ゲームブックとしてどうなのかと言うところを確認してみました。
主人公は国の最高責任者。食糧事情に難のある国をよりよい方向へと導くのが目的のゲームです。最初にコイントスして国の特徴を8種類の中から選択します。今回は「裏・裏・裏」、「裏・裏・表」以外の6種類についてプレイしてみました(7つ目の途中までプレイして、飽きたためです)。
まず国の状況が説明されて、そこから政策を決定→その結果どうなったか→政策を決定→その結果どうなったか→……の繰り返しでゲームは進んでいきます。たまに三択のパラグラフも出てきますが、ほとんどは二択です。まあ二択なのはいいのですが、選択肢はどちらが正解とも言えないような形で、大抵は問題が改善された一方、別な問題がまた持ち上がるといった感じで状況が変化していきます。そして、あちらを立てたり、こちらをなだめたりといろいろ調整していきながら、あるところで八方丸く収まってめでたしめでたしと相成るわけです。
何故プレイしてからこのエントリーをアップするまでに1ヶ月も期間があいてしまったのかと言えば、いろいろ文章を書いていたのですがどうにもうまくまとまらなかったためです。そこでもう端的に書いてしまいますが、クリアを目的としたゲームとしては、はっきり言ってそんなに面白くはありませんでした。
このゲームにおいて最も不満だったのは、作者の政治的・経済的信念のようなものが色濃く投影されている点です。その証拠として、私がプレイした6タイプの国において、全て同じ最終パラグラフに到達してしまったことが挙げられます(未クリアの2タイプがどうかはわかりませんし、到達できなかっただけでマルチエンディングだったりするのかもしれません)。
普通、国が異なれば食料事情の安定する形も異なるはずです。それが全て同じ結末に落ち着く(かどうかははっきりとはわかりませんが)ということは、作者の想定する理想的な食料供給のあり方がこのエンディングであると判断せざるを得ません。扱っているテーマがテーマだけに、「魔術師○○を倒すにはこのアイテムを使うしかない」というような唯一の正解を求める構造にするのではなく、国によって様々な解決を図ることができるようになっていた方が良かったと思います。
◆「送り雛は瑠璃色の」
「送り雛は瑠璃色の」読み進め
2006年02月13日 02時25分32秒 | ゲームブック(社会思想社)
前回は創土社版でしたが、今回は現代教養文庫版の「送り雛は瑠璃色の」をプレイ。改めてみてみたら創土社版の方がパラグラフが10多く、パラパラと眺めてみただけでもそれなりに変更点は多いみたいですね。
※以降、多少のネタばれを含んでおります。ご注意を。
結局、指栞を駆使して最後まで読んでしまいました。まともにプレイしていない理由は、この話をゲームとしてクリアする(というか最終パラグラフにたどり着く)ことに対して、それほど魅力を感じなかったためです。それは「送り雛は瑠璃色の」がつまらないということではありませんが、最終パラグラフにたどり着くことよりも提示された謎を解釈することこそがこの本の主眼だと思いますので、最終パラグラフに至るルートを発見するゲームとしてはプレイするモチベーションが上がらないのです。
しかも、謎を解釈するために必要な情報は「行く事ができる場所」という形で入手方法が示唆されていますが、時間の都合で全て回れないというだけで、当りの情報か外れの情報化はともかく、初見で情報入手の方法の見当はつくわけです。そこをゲーム的に上手く処理できていれば情報入手ゲームとしても楽しめたのかもしれませんが、情報入手を上手く行えるかどうかはほとんどが運で、なおかつ繰り返しプレイで確実に入手可能なものであるため、結局最初から時間などのチェックを無視して全部見た方が、言葉は悪いですがてっとり早いのです。もっと言えば、情報入手ゲーム(と、終盤の呪術合戦ゲーム)など無い方が謎解きを楽しむ上では有用であると、私は判断したわけです。
ですからゲームとしてはインチキしまくりでラストまでたどり着きましたが、ラストで提示されるカズからの問いかけはわからないものが多かったので、それの答えはまだ見ていません。問いかけの内容を念頭に置いた上で、改めてまた最初から読んでみたいと思います。
雑居空間
https://tawa-tower.seesaa.net/
https://blog.goo.ne.jp/tawa_tower/c/a07de26022ca76e1da17462b08b73cc9
https://blog.goo.ne.jp/tawa_tower/e/418f176cda4955bca1adb18636041714
腕の差はキャラでカバー(改)by楓
https://blog.goo.ne.jp/sddkaede/e/29428a9f783c25e7edc7dca052ac2abe
https://blog.goo.ne.jp/sddkaede/c/f3eb045ebf4910786b84d44fe1e42ec7
薙空間
https://blog.goo.ne.jp/nagi3374/c/ee39b80ee96f014ebc34757a1b3f78fe
https://blog.goo.ne.jp/nagi3374/c/d8a680089544193910d1447c9e9bb1b7
◆ デストラップ・ダンジョン
Deathtrap Dungeon デストラップ・ダンジョン・Eidos Interactive
2018-10-10 10:33:05 | ゲームブック
これは1998年にEidos Interactiveが発売したWindows95/98用ゲームDeathtrap Dungeon デストラップ・ダンジョン。ちなみに海外ではプレイステーション1でも発売されていたよう。
こちらはタイトルでわかる人にはわかりますが、Fighting Fantasyシリーズの一冊として1984年に発売されたDeathtrap Dungeon(邦題は死のワナの地下迷宮)をPCゲーム化したもの。Fighting Fantasyシリーズは、本編のゲームブック以外にも何度もゲーム化されており、Games Workshopからボードゲームが2種(1986/1993)、Commodore 64などの欧州でヒットしていたパソコン版(1984)、2006年にはNintendo DS用にFighting Fantasy The Warlock of Firetop Mountain、それ以外にも携帯やスマートフォン用アプリなど色々と開発されています。近年2017年だとSteamで発表されたFighting Fantasy Legends(日本語版あり)なんてのもあります。
この頃、イアン・リビングストン氏はEidos Interactiveの社長兼CEOを務めており、タイトルにもしっかりIan Livingstone’s Deathtrap Dungeonと入っている。
パッケージは、大きな箱の中に変形防止用の紙製の内箱と説明書、ソフトが収められている、この当時の平均的なもの。
しかし評価はデストラップダンジョンを遊んだことがない人が作ったとか散々な模様。実際、日本語版があること自体が奇跡のような怪作。裏を見ると、どことなく嫌な予感が漂い始めます・・・。
Fighting Fantasy第6作目、死のワナの地下迷宮は名作でした。日本でも人気が高い作品のひとつといって良いかと思いますが、これ欧州やイギリス本国ではシリーズ中でも特に人気が高い作品だそうで、イギリス本国では50万本売れたそう。それを反映して2編の続編が作られています。
プレイヤーは旅の冒険者となって、他に4人のライバルとともに強大な権力者Sukumvit公の作った迷宮に挑む。迷宮探索競技は、町のイベントにもなっており、やかましく打ち鳴らされる銅鑼や鐘の音とともに、祭りは最高潮の盛り上がりを見せる。と、このような感じで否が応にも気分が高まる演出が満載で、確かにこれは名作。
書籍のDeathtrap Dungeonは、日本でも2008年に再出版されており、すでに社会思想社はもうなかったため、この時はホビージャパンより発売された。この時のタイトルは、日本版でもデストラップ・ダンジョン。これが萌え絵を使っており、リビングストン氏がそれに反応をしたため、日本語で検索するとこのネタばかりが引っかかる。
ダウンロードを済ませてEidos Interactiveのロゴを見ると、いやな感じのデモムービーが始まります。Windows95/98用ゲームなので動かないだろうと高をくくっていたら、楽々動きやがった。
ゲームの設定や選択を済ませて背景などのモノローグが挟まれる、この時代の標準的なゲーム構成。アマゾネスのRed Lotus(女性)、バーバリアンのChaindog(男性)を選んでゲームを始めます。恐らく性別で性能差があると思われますが、よくわかりません。Red Lotusを選ぶとまんまTomb Raider。この時代のポリゴンなのでカクカクですが、実は動画などで見るよりは緻密で綺麗。
肝心のゲームの方は、英語版Wikiによれば GameSpot誌からDeathtrap DungeonはSony PlayStationのゲームのローエンドになることが判明したなんて言われている。このEidos Interactive社は、Tomb Raiderの発売元なので、つまりはTomb Raiderの3Dエンジンを使ったアクションゲーム。なんだか気持ち悪いモンスターが出てきて、攻撃するといちいちモンスターの首が飛んだり、ばらばらになったりと、どうにも日本人には受け入れがたいテイストに満ちている。セーブするたび、いちいち冒険者がモンスターより斬首される意味不明なムービーが入る。
ただし、個人的な感想はク○ゲーとはいっても愛すべきク○ゲーといった感じ。超難しいようなのでやると腹立つと思いますが、Deathtrap Tomb Raiderだと思ってやれば(駄目じゃん)癖になりそうなテイストはある。全然、Deathtrap Dungeonぽくないけどね。
まあFighting Fantasyのゲーム化として考えたらこれは貴重で、ファンアイテム、コレクターズアイテムとしては良いのでは。オークションだと1,000円~、Amazonだと新品が3,000円ほどで売られていた。現時点は、Amazon、駿河屋さんともにないみたいですが、プレイステーション版(海外版)は売っている。またダウンロード版(海外版)だと、ドル決済ですが遊べるようです。
まさかWindows95/98用ゲームが動くとは思わなかった。今回これが一番驚いたEidos Interactive社のDeathtrap Dungeon デストラップ・ダンジョンでした。
参考:Wiki Deathtrap Dungeon(英語版)、デストラップ・ダンジョン倶楽部、やじうまPC Watch「死のワナの地下迷宮」の“萌え化”に英国の原作者が苦言、GAME Watch Eidos会長イアン・リビングストン氏インタビュー
ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!
◆ ドラゴンスレイヤー(ロールプレイングゲームブック)・MIA/日本ファルコム
ドラゴンスレイヤー DragonSlayer(ロールプレイングゲームブック)・MIA/日本ファルコム
2017-03-01 00:18:08 | ゲームブック
ドラゴンスレイヤー DragonSlayer(ロールプレイングゲームブック)は、1986年に発売されたゲームブック。著者は、日本ファルコムとファルコムの宮本恒之氏。
このゲームブックの題材になっているドラゴンスレイヤーは、当時日本ファルコムに在籍していた木屋善夫氏が、1984年に発表したアクションRPG。これと、この続編のザナドゥで木屋氏は80年代のスタープログラマーの一人となった。オリジナル版のドラゴンスレイヤーは、ハイドライドと並んでアクティブ(リアルタイム)RPGの最初のものとして知られているが、実際には1ターンの時間が短いターン制のRPG。自分を育てるためのアイテムを拾って自宅まで持ち帰り、モンスターを倒して経験値が上がってくると魔法が使えるようになる。三つ首の竜(ビオライン)を倒し、財宝である王冠を持ち帰るとクリアとなる。
ゲームブック版の内容は、4つの話に分かれた4部構成になっていたり、後戻りも可能でマッピングもできる迷路が入っていたりと、かなり本格的。世界観もシリアスになっており、ドラゴンスレイヤーというよりザナドゥのモンスターが登場している。ドラゴンスレイヤーのモンスターだと、足(ピロエース)だとか、エビーラ(フラッピー)とか、タモリだとかなので、やりようがなかったのでしょうが。ゲーム自体は、ドラゴンスレイヤーやザナドゥというより、ザ・ブラックオニキスやウィザードリィ風といった感じ。
特定の部屋に入るとNPCがいて、イベントが挿入される。
このゲームブックの一番の特徴と言えるのが、巻末に魔法やアイテム、装備品などのページが用意されており、ページには折れ線が入っている。アイテムや情報を入手したときには、対応するページを折り曲げてしおりのように検索がしやすくなるという仕掛けがしてある。アイデアとしては面白いと思うが、本を折り曲げるのには抵抗があるし、素直に記録用紙に書いた方が良いかなと思う。
このMIAというのはアスキーの出版ブランドで、ゲームブックや攻略本を当時出版していた。このドラゴンスレイヤーは、数が出たのか1,000円以内くらいで入手できるのだが、ストラットフォード・コンピュータセンター(マジカルズー)と東本昌平氏により書かれた魔塔バイアスの謎―ザ・スクリーマーの方は、10,000円超という希少本になっている。これは、ドラゴンスレイヤーと同じくパソコンのゲームが原作でゲームブック内に東本昌平氏の漫画が挿入されるという作りだった。これが当時欲しくて、今も欲しいゲームブックの一つになっている。
手持ちのドラゴンスレイヤーはMSX版。ドラゴンスレイヤーはPC-88など当時の主要機種のほとんどに移植され、エポック社のスーパーカセットビジョン版、ゲームボーイ版、セガサターン版なども後から発売された。
これはなんとスクエア製。日本を代表するゲームメーカーとなったスクエアにも、他社の作品を移植して販売するという下請けみたいなことをしていた時期があったんですね。
オリジナル版のドラゴンスレイヤーには、前代未聞麻薬的爽快遊戯というキャッチコピーが付いている。このゲーム、アクションRPGという単純な定義をすり抜けてしまう変わったゲームでもあり、倉庫番のようにブロックを押してパズルをさせられたり、セガのペンゴのようにブロックを蹴飛ばしてモンスターを倒したりと色々な遊び方ができた。登場するモンスターも足(ピロエース)だの、怪物君のフランケンだの、仕舞いにはタモリまで登場する怪作であった。
続編のザナドゥでは、一変して超が付く本格的なRPGとなった。これは当時40万本を売り上げ、チャートに何年も留まり続けるなどパソコンのRPGの金字塔となった。発売から30年が経過した現在でもこれを越える記録は無いとされている。ドラゴンスレイヤー自体は、ゲームブック化することが不可能な作品なので、モンスターや世界観などはこちらから取ったのでしょう。ちなみにザナドゥのゲームブック自体も発売されており、こちらはプレミアの付く希少本となっている。
ある種の日本ファルコムファン、木屋善夫氏ファンのためのファングッズのひとつといってよいでしょう。ということで、ドラゴンスレイヤー(ロールプレイングゲームブック)でした。
参考:ドラゴンスレイヤー(ロールプレイングゲームブック)・MIA/日本ファルコム、Wiki ドラゴンスレイヤー(ゲーム)、ザナドゥの項、山口 浩の汚い部屋、なんとか庵 サルモン神宮外苑、Rest In Peace、バイナリーのレトロゲーム攻略
◆ オレのRPGノート
オレのRPGノート・株式会社ウィズ
2015-09-03 19:35:22 | ゲームブック
これは、2014年に株式会社ウィズより発売されたオレのRPGノート。ジャンルは難しいところですが、ゲームブックの新作ということで良いと思います。
コンセプトは、授業中や勉強中にノートに落書きした、俺の考えたロールプレイングゲーム、あるいは俺の考えたゲームブックを再現したもの。学習ノートの体裁を取ったB4サイズ90ページの本に、前半50ページにはゲームブックが、後半40ページは普通の罫線の入った白紙のノートが収められています。株式会社ウィズは、たまごっちやデジモンの開発元で、自社オリジナルの雑貨や貯金箱なども開発しているみたいです。
80年~90年代辺りにゲームブックやロールプレイングゲームに親しんだ層には、誰しも自分お手製のロールプレイングやゲームブックを、夢想した経験があるんじゃないでしょうか。その狭い隙間のストライクゾーンに投げ込まれた、アイデア勝負の一種のお洒落雑貨(文具)という感じでしょうか。ほとんどアイデアだけで成り立っているような商品であり、この着眼点は凄いと思います。
帯を外すとこんな感じ。ジャポニカやコクヨのノートブックのような体裁を取っています。名前欄には、職業のほか、レベル、HP、MP記入欄も。レジェンドオブシャイニングイージスサーガという、壮大で頭の悪そうなサブタイトルもいかにもな感じ。いきなりエピソードⅣとかなってるし。
ゲームブックだと記録用紙にあたるキャラクターシートも付いている。しかもカラー。アイテムはシールになっており、アイテムや情報を入手した後で、キャラクター用紙に貼り付ける形になっている。洒落たアイデア雑貨(文具)の側面もあるため、実際に貼り付ける人や書き込む人は少ないかと思いますが。
前半のゲームブック部分は、ノートの落書き風。項目こそ少ないですが、パズルやクイズなども仕込んであって、意外と本格的なつくりになっている。ゲームブックではお約束の余白に印刷されたサイコロも再現。芸が細かいですな。
このRPGノートと連動してスペシャルアプリも無料配信されている。このアプリを使うことで、よりRPGノートの世界が堪能できるという仕掛け。このグッズのすばらしいところは、価格がリーズナブルなこと。これだけやってあって555円ほど。発売当初は、アマゾンでもあっという間に品切れで、通販でも軒並み売り切れとなり手に入りにくかった模様。あまり販売されている場所も多くなく、入手がし難いのが難点のようです。現時点では、アマゾンでも販売されており価格も300円+送料ほどで売っています。
人により世代によって、このようなノートの落書きの形は様々だと思います。個人的には、自作のゲームブックを教科書の隅に書いた記憶が残っています。後は、1万円を切る価格で売られていたカシオの格安ポケコンPB-100Fで、キャラクターに割ける容量がないので、数値のみで自作のRPGを作っていた記憶も。こういうことをやっていると、勉強時間や学校の授業もあっという間で、全然苦にならなかったように記憶しています。
ゲームブックは、2000年代に創土社や扶桑社が昔の版を復刻して以降は動きが無く、とっくに終わったと思っていたのですが、調べてみると意外と動きがあります。このオレのRPGノートもそのひとつですが、ウェブ上で人気の脱出ゲームを体験型+ゲームブックの形式にした脱出ゲームブックというものや、漫画や雑誌などでもちょこちょこと活用されているようです。考えてみるとフリーの脱出ゲームなどは選択肢を選ばせて物語を進める形式を取っており、ウェブ上でも簡単に再現しやすいことから、ネットとの相性は良いのかもしれませんね。
参考:株式会社ウィズHP、サンケイアプリスタ エンタメ記事、パラグラフの狭間で
◆ ロマンシア
アドベンチャーノベルス Romancia ロマンシア・JICC出版局
2014-05-06 13:51:43 | ゲームブック
こちらは、1987年にJICC出版局(宝島社)より発行されたアドベンチャーノベルス Romancia ロマンシア。
元ネタは、日本ファルコムより1986年に発売されたPC用ゲームのドラゴンスレイヤーJr.ロマンシア。コンピュータRPG・ザナドゥ(85)の大ヒットにより一躍スタープログラマーとなった木屋善夫氏の作品で、ドラゴンスレイヤーシリーズの第3番目の作品。ほのぼのとした外観とは裏腹に凶暴なまでの難易度をほこり、ザナドゥの大ヒットにより次作を期待して飛びついた当時のプレイヤー達を奈落の底に突き落としたという、そういった意味でも有名な作品でした。
ロマンシアは、ドラゴンスレイヤーシリーズということや外観からの印象とは少し異なり、ファンタジーRPGというよりは、謎解きがメインのアクションAVGに近いつくり。JICC出版局のアドベンチャーノベルスシリーズでは、その名の通りゲーム性よりもストーリー性を重視した作りで、ゲームブックにはお約束のサイコロを振った戦闘がないものもあります。そういった意味でも、このシリーズに合った題材であったと言えるでしょう。
物語は、平和な王国であったロマンシアを突然の災いが襲った。隣国のアゾルバの国王に異変が起こりアゾルバ王国は荒廃、モンスターが跋扈する事態となった。そんな中、ロマンシアの王女セリナ姫までが何者かにさらわれてしまう。旅の途中にロマンシア王国に立ち寄った、イルスランの王子ファン・フレディは、王の依頼によりアルゾバ王国急変の謎を解く旅に出発する・・・。
このゲームブックの最大の特徴は、ゲームの世界にあわせて物語のプロローグ、中盤の山場、エピローグ部分が漫画仕立てとなっていること。漫画は、後にりびんぐゲームなどで有名になった星里もちる氏が担当。カバー絵も星里氏の手によるもの。冒頭のプロローグ部分では、物語の経緯が語られる。
ゲーム途中の山場、セリナ王女の救出シーン。
物語が展開した後、パラメーター増減の指示があり、ふたたび指示された番号に戻る。
見事冒険をやり遂げたエンディング。PCゲーム内では語られなかった、セリナ姫とのやりとりなど、後日談もここで展開する。
ザナドゥやロマンシアの製作に携わったファルコムの宮本恒之氏監修ということで、原作を生かして細部まで良く出来ている。原作ではお馴染みの天界もイラストと、パラグラフ指示番号でこのように再現されている。
原作では、ヒントなしの理不尽な謎でプレイヤーを苦しめたアゾルバ城も再現。簡単な構造ですが、マップが付けられている。これ以外にも、マジックアイテムなども原作準拠で再現されている。
原作では、同じパターンの繰り返しでうんざりさせられた溶岩城。モンスターの攻撃を受けないよう豚になって進んだところ。
宮本恒之氏は、ザナドゥの公式本やドラゴンスレイヤーのゲームブックなども手掛けていた。星里もちる氏が、作中のイラストや漫画を手掛けることになった経緯はよくわからないが、86年にデビューし90年に青年誌に転じてハーフな分だけ、りびんぐゲームで人気を博しているので、デビューすぐ後のまだメジャーになる前の作品ということなのかも知れない。
こちらが、原作のPCゲーム版ロマンシア。幻想的なイラストに、凝りに凝った装丁。ザナドゥのすぐ後ということもあって、発売前には随分期待した。
PC版にもイラストや漫画が挿入されたオールカラーの説明書が付いていた。この時期だと、コピーですませたようなモノクロの簡素なマニュアルも多かった。この辺りを境にして、徐々に豪華なマニュアルや凝ったパッケージが増えていった。こちらは、MSX版なのでROMカセット。
X1シリーズ、PC-9801F以降、PC-8801mkIISR以降、MSX、MSX2版が発売されていた。コンパイル移植の東京書籍発売でファミリーコンピュータ版も存在する。後にアンバランス社より、オリジナルとアレンジ版が入ったWindows95/98版も出た。ドラゴンスレイヤーJr.の文字が見える。
マニュアルも漫画仕立て。マニュアル版の漫画は、ザナドゥの漫画やMSX版ザナドゥのパッケージ絵も手掛けていた都築和彦氏。ちなみにコンプティーク誌に連載されていた漫画版のロマンシアもあって、こちらは円英智氏の手によるもの。
マニュアルにヒントが記載されているが、ほとんどの理不尽な謎はノーヒントだったので、焼け石に水状態。むしろ漫画仕立てにすることで、世界観を広げることに一役かっている。
凝ったパッケージングや豪華なマニュアルなど、商品性を高める役割を果たしている。80年代初期の頃だと、カセットケースにコピーしたラベルと説明書を付けただけという手作り感溢れるものも多かったので、この辺りからゲーム市場が本格的に成立してきたということなのかも。ただコンシューマの性能が上がってくると、ゲーム市場の中心はそちらに移ってしまった。
ロマンシアの謎を解いた王子を疑心暗鬼に陥れつつ、理不尽な謎で純なプレイヤーを人間不信に陥れた伝説のゲームでした。
このゲームブック版ロマンシア、このようにとても魅力的な出来なのだが、アマゾンでも700円程度で手に入る。というか、高い金額で売られているのを見たことがない。ということで、ドラスレシリーズのファン、星里もちる氏のファン、ゲームブックファンの方であれば、ファングッズとしてお勧め。
参考:Wiki ロマンシア、木屋善夫氏、星里もちる氏の項、ロマンシア取扱説明書/日本ファルコム、Dra-Sle-Labo(ドラスレラボ)、ソーサリアン情報室(ロマンシア攻略)
ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!
◆ ザ・スクリーマー
アドベンチャーノベルス THE SCREAMER ザ・スクリーマー・JICC出版局
2014-05-05 18:33:43 | ゲームブック
こちらは、1986年にJICC出版局(宝島社)より発行されたアドベンチャーノベルス THE SCREAMER ザ・スクリーマー。
元ネタは、1985年にマジカル・ズゥ(ストラットフォードコンピューターセンター)より発売されたコンピュータRPGのTHE SCREAMER ザ・スクリーマー。これをJICC出版局が、アドベンチャーノベルスのブランドで、ゲームブック化したもの。ジャンルとしてはウィザードリィ型の3DRPGで、ファンタジーではなく核戦争後の近未来が舞台となる、この時期に流行したサイバーパンク+バイオホラーもの。
物語は、199×年に第三次世界大戦が勃発する。対戦終了後、荒廃した世界の食料危機に対応するために作られていた遺伝子工学研究所BIAS内で、中枢システムが暴走を始める。BIAS内では、放射能の影響や狂った遺伝子操作により、得体の知れない化け物が増殖し始めていた。一般人では近寄ることも出来なくなったBIAS内のモンスターを狩り、暴走する中枢を止める為に、政府より報奨金がかけられた。この金を目当てに各地より賞金稼ぎが、BIASのあるビーストシティ目指して集まってきていた・・・。
PC版のザ・スクリーマーは、キャラクターデザインに東本昌平氏を向かえ、パッケージは書籍をくりぬいた中にフロッピーが収められているという大変凝ったものでした。また、説明書の前半部分には60ページほどの東本昌平氏の漫画が入っていた。
とにかく世界観がしっかりと練り上げられた作品で、当時としても人気が高かった。戦闘シーンはアクションゲームとなり、謎解きもヒントが少なく理不尽なくらい難しいなど荒削りな部分も目立ったが、それでもかなりの支持を集めていた。電波新聞社のチャレンジAVG&RPGⅡでも取り上げられて、攻略が行われている。
こちらは、PC版のTHE SCREAMERのタイトル画面。
プレイヤーは、ビーストシティを訪れた賞金稼ぎ(スクリーマー)のひとりとなってBIAS内の謎に挑む。
ゲームブック版では、書籍という形態を生かして設定などが詳細に語られていて、独特な物語世界を構築している。イラストは、残念ながら東本昌平氏ではないが、3DCGの第一人者として知られる駄場寛氏。
主人公以外にも、8名の個性豊かなハンターたちが登場する。パンクスの国粋主義者、蛮刀で武装したネイティブアメリカン、冷酷な仮面の殺し屋、犬を連れたモヒカンの子供、鞭を持った女性ハンター、ヒゲのおっさん、侍などなど・・・。彼らとは、酒場やBIAS内で遭遇し、ヒントをくれたりアイテムを交換したりする。
ゲームブック版でも、他ハンターとの交渉や交流などはかなり再現されている。
遺伝子操作により産み落とされるBIAS内の生物。このグロさが売りの一つだった。この時期、大友克洋氏のAKIRAなどの影響でバイオだとか、世紀末だとか、核戦争後だとかいうネタが流行っていたのですね。
人間に寄生し、その体を操って攻撃してくるキャリーベイビーも再現。
こちらが、PC版の主人公。年齢:??歳、性別:男、性格:????と、プレイヤーがなりきる為に名前などは設定されていない。ゲームブック版では、軍隊に所属していたり、昔の顔なじみや随伴する女性がが登場したりと明確なキャラ設定がされており、3人称の視点で物語を読み進めていく形となる。
ゲームブックオリジナルの設定により、PC版とは異なるゲームブックの独特な世界観が作られていますが、おおまかな流れなどはPC版に沿っています。
このJICC出版局のアドベンチャーノベルスシリーズ、映画を題材としたり漫画やアニメを題材にしたりと、サブカルチャーに強かった宝島社独自の展開を見せていました。中でもアステカ、ウィル、ロマンシア、夢幻の心臓Ⅱ、帝王の涙、ゾーク、ウルティマなど、当時のPCゲームを数多くゲームブック化していた。当時、PCは10~20万~専用モニターは10万~という世界だったので、そう簡単には買うことが出来なかった。現在のように、仕事や通信の手段として使えるならまだしも、8ビット機はプログラムの練習用か、もっぱらゲーム用だった。このようなゲームブックで、PCゲームの世界に触れられるというだけでも意味があった。
このTHE SCREAMERのゲームブック、ストラットフォードコンピューターセンター自らが出したMIA版も存在している。そちらには、ゲームブック内に東本昌平氏の漫画が入っていた。これは、8,000円~程度のプレミア価格となっており、なかなか手に入らない。JICC版は数が出たのか、1,000円以内くらいで入手することも可能と割り合い入手し易くなっている。
参考:チャレンジAVG&RPGⅡ/電波新聞社、REST IN PEACE THE SCREAMER、ザ・スクリーマーの世界
◆ 仮面の破壊者
ゲームブック・仮面の破壊者/R・ウォーターフィールド・社会思想社
2012-03-22 20:59:20 | ゲームブック
仮面の破壊者は、1987年に社会思想社より発売されたファイティングファンタジー23番目の作品。著者はロビン・ウォーターフィールドで、タイタン世界の暗黒大陸クールが舞台。
君は、暗黒大陸クールにある都市アリオンを収める領主。共同統治者の魔術師アイフォー・ティーより、邪悪な魔女モルガーナの陰謀について知らされる。彼女は、12種の魔法の仮面を使った破壊者ゴーレムを作り、世界征服を企んでいる。すでに11体のゴーレムが完成されてしまった・・・というもので、主人公は、町の北部に位置する死の湖、枯葉の谷、矛槍草の大平原、瘴気の沼を抜けて、魔女モルガーナの住む北部山脈のクリルガーナッシュを目指すことになります。
目的を果たすためには、枯葉の谷の領主へヴァーの協力を得なければなりません。彼以外にも、隠遁の魔術師ジュジャ、時間のない国に住むヴァシティなど、幾人かの情報と協力が必要となります。領主へヴァーの信頼を得るためのサーベルタイガー狩りが、ミニゲームになっており、FF(ファイナル・ファンタジー)みたいなゲーム内ゲームに挑戦する展開があります。隠遁者ジュジャや、異世界のヴァシティに会うためにも仕掛けがしてあって、一筋縄ではいきません。また本作の一番の特徴は、ラストにどんでん返しが在ること。そのため物語の進行に合わせて、徐々に伏線が張り巡らされています。悪の対象を倒すだけではなく、裏切りと策略とが織り込まれ文学的になっているんですね。
巻末に訳者の解説があるのですが、リビングストン・ジャクソンを超えたゲームブックの新しい展開が生まれた!とかなり賞賛しています。ただ本国イギリスでは、この後も60巻近くまでシリーズが続きますが、日本ではこのあたりでそろそろ陰りが見え始めてきたようです。発行部数が減ってきたのか、現在の古本市場でこの辺りの巻からプレ値的な値段が付き始めるんですね。ちなみに日本では、第33巻天空要塞アーロック(91)までで社会思想社のシリーズが打ち切りになっています。87年より91年の4年間で約10冊ですから、発行されるペースも随分落ちてます。
87~89年頃というと日本人作家によるオリジナルも登場していて、そちらの方はまだ勢いがあったようです。(東京創元社のこれらものは、88~89年の出版)
東京創元社の折込チラシとして発行されていた、ミニコミ誌的なアドベンチャラーズ・イン1989年2月13号。20号まであったようです。
13号は、第2回創元ゲームブック・コンテスト新人賞の発表と、第3回の作品募集のお知らせ。
このようにゲームブック・ファンによる、ある種のコミュニティが成立していたんですね。ゲームブックが衰退した理由は色々あると思いますが、一番大きかったのはFCソフトなどの中古市場が発達してきて、ゲームソフト自体が入手し易くなっていたことなどでしょうか。
個人的にも、この頃には書店で新作をチェックすることはなくなっていました。ただ90年代になると、古本屋にゲームブックが溢れるようになり、専門書や文学書を物色するついでに、懐かし~という感じでつまんでました。80年代で終わったように思われるゲームブックのブームですが、今度は古本屋で花開いていたんですね。
参考:Wiki スーパーアドベンチャーゲームの項、アドベンチャラーズ・イン(東京創元社)
◆ 恐怖の神殿
ゲームブック・恐怖の神殿/イアン・リビングストン・社会思想社
2012-03-20 14:16:48 | ゲームブック
恐怖の神殿は、ファイティングファンタジー13番目の作品。著者はイアン・リビングストンで、日本では1987年に社会思想社より発売されました。
若きマルボルダスの暗きねじくれた力は、今や絶頂に達しようとしていた。そだて親のエルフらは、砂漠のどこかに隠された都市ヴァトスに秘められてきた竜の飾りを探し出すよう命じた。この5つの竜飾りを手にした時、マルボスダスのアランハ制覇が成し遂げられる・・・というもので、主人公は魔術師ヤズトロモより依頼を受け、どくろ砂漠にある失われた都市ヴァニスに向かうことになります。第12作目フリーウェイの戦士に続いてのリビングストン作品で、第9作の雪の女王以降、久々のタイタンを舞台としたのファンタジー作品です。
リビングストンのタイタンものということで、ストーンブリッジの町に立ち寄った主人公は、ダークウッドの森(運命の森)で魔術師ヤズトロモの教えを乞い、彼の助けを借りて、南のどくろ砂漠を目指します。まずヤズトロモの塔にて、(バルサスの要塞/S・ジャクソンのように)あらかじめ10の魔法より4つを選択して習います。その後は、ポート・ブラックサンド(盗賊都市)に立ち寄って船を使う選択肢があったり、船の沈没に巻き込まれたり、砂漠の大砂蛇と戦う展開などもあります。ちょうど時期的に映画デューン・砂の惑星が公開された頃でしたので、この頃の砂漠ものといえばサンドワームがお約束でした。ハイドライド2にも砂漠に隠された都市があり、そこでも登場していました。前半は砂漠での冒険、後半は失われた都ヴァトスでの竜の飾り探索へと移ります。
この作品の一番の特徴といえるのが、ヴァトスに到着と同時に現れる死の使者の存在。これは、主人公に先回りしてD・E・A・T・Hの5文字をあちらこちらに隠しており、それを見つけると呪いがかけられて、5文字全てを見つけたときに死が訪れるというもの。竜の飾りを見つけるためには、あちこち探さねばならず、必然的にD・E・A・T・Hの文字を発見する可能性も高まるというトラップでした。またヴァトスには巫女リーシャという女性の支配者もいて、マルボルダスだけではなく、こちらも相手をせねばなりません。このように、細かな仕掛けや様々な冒険がぎっしりと詰め込まれた作品になっています。
タイタンが舞台のファンタジーものなのですが、砂漠が舞台ということもあって、どこかオリエンタルなムードも漂っています。衛兵は上半身裸に半月刀のアラビアンないで立ちだったり、巫女リーシャは骸骨兵士に守られていて、ストップモーションの巨匠ハリーハウゼンの世界や、レイダースの街中での立ち回りシーンなどをどことなく連想させます。最後は、マルボルダスとの対決になるのですが、彼は部屋の床に空いた穴より下からせりで登場してきます。イラストも地味なおっさんみたいで、若い才能や野心に満ち溢れた悪役を想像していると、肩透かしをくらいます。シリーズ中もっともかっこわるいラスボスかもしれません。
これは4~5年前に古本で購入したもので、当時の持ち主の冒険記録が挟まってました。FCの復活の呪文とかバックアップもそうですが、これらは一種のタイムカプセルみたいなものと言えるのかも。
個人的には、前作のフリーウェイの戦士や、サムライの剣、迷宮探索競技、サイボーグを倒せ、ロボットコマンドウなどは遊んでいるのですが、これは当時の印象は薄い作品です。この位の時期になると、オーソドックスなファンタジーものにはそろそろ飽きてきていた時期だったのかもしれませんね。
◆ 死神の首飾り
ゲームブック・死神の首飾り/ジェイミー・トムスン&マーク・スミス・社会思想社
2012-03-17 06:37:56 | ゲームブック
死神の首飾りは、ファイティングファンタジーシリーズの11作目として、社会思想社より1986年に発売されたゲームブック。本作の特徴は、S・ジャクソン、I・リビングストンは監修にまわって、2人以外の作家さんの手によるものという点と、このシリーズに馴染み深いタイタン世界ではなく、オーブ(Orb)という特殊な世界を舞台としているという点。シリーズ8作目サソリ沼の迷宮/S・ジャクソンも、2人以外の手による作品でしたが、これ以降2人は監修にまわって、別の作者による作品が増えていくことになります。
物語は、オーブ(Orb)の世界に世界を転覆させる死神の手が迫っていた。それを阻止するには、昔作られた死神の首飾りが必要となる。君は、死神の首飾りの力を無にするためにオーブ(Orb)の世界の神々によってこの世界へ召集され、死神の使途の追跡を逃れて、首飾りを運ぶ役割を担うことになる・・・。主人公は地球よりこの世界に招集され、オーブ(Orb)世界のダンジョンに現れます。そこでは、十字軍のパーティが首飾りを使途の手より奪取しており、主人公にそれを託します。プレイヤーはこの世界を回って情報を集め、元の世界へ首飾りを持ち帰る道を探すことになります。ウルティマみたいな感じですが、読者が主人公となる巻き込まれがたの冒険ものですね。物語の前半は、学問の都グレイギルドでの邪悪な巫女との対決。後半はグレイギルドを出て元の世界へのゲートを目指す展開になります。
主人公は、グレイギルドに付いた途端、ホーカナという巫女に首飾りを奪われてしまいます。学問の都ということで、学者アポテカスの協力を得て、この世界の仕組みを教わり、手助けをしてもらいます。その後、酒場レッドドラゴンにて情報を集め、盗賊のギルドの助けを借りて寺院に潜入し、ホーカナと対決することになります。とてもTRPGっぽいというか、ありがちですがよくできた展開になっています。ライバル的な2人組の盗賊や妖術師の手を逃れて、後半の山場は元の世界へのゲートの門番をするレッドドラゴンとの対決になります。ドラゴンの弱点や装備など、情報を集めて対決をするのですが、このレッドドラゴンあの手この手を使って主人公を懐柔しようとし、一筋縄ではいきません。ここまでのシリーズに登場した中でも、屈指のラスボスになっています。この辺りの老練なドラゴンとの交渉も、TRPGを連想させていい感じだと思います。
という感じで、なかなかいい雰囲気の作品なのですが、残念ながら当時はあまり印象に残っていません。少ないこずかいの中でやりくりしながらゲームブックを買っていますので、S・ジャクソン、I・リビングストン以外の作品には目が向きにくかったんですね。ゲームブックブームも去った90年代頃に、古本屋で100円で投売りされていた時に買って読んでいるとは思うのですが、これもあまり記憶に残っていません。もうその頃には、他の事に目が向いていたのだと思います。
◆ 魂の宝箱と12の呪文
クエストブック・魂の宝箱と12の呪文・イアンリビングストン/社会思想社
2011-08-25 02:09:29 | ゲームブック
『クエストブック・魂の宝箱と12の呪文』は、1990年に社会思想社より発表された(パズル)ゲームブックです。著者はゲームブックの第一人者の一人であるイアン・リビングストン。
同様のシリーズに、スティーブジャクソンの『魔術師タンタロン12の難題』があります(知名度としてはこちらの方が上でしょうか)。これらは、両方ともゲームブックブームの末期に発表されていますので、ゲームブックに詳しい方でも実際に遊んだことのある方は少ないかもしれません。
内容の方は、イラストを見ながら謎をとくパズルブック。大きさも絵本ほどのサイズで、海外などでは子供向けに割とメジャーなジャンルなのでしょうか。ウォーリーを探せとか、迷路が一面に書かれたパズルブックとか、イラストを見ながら犯人を当てる推理物とか、ああいった種類のものです。ただしファイティングファンタジーの作者が送り出した作品ですから、ただのパズルブックには終わりません。子供でも十分遊べるとは思いますが、世界観もファイティングファンタジーと共有しており、難易度もかなりの高難易度で、ゲームブックの読者であった層でも十分に楽しめるように作られています。
舞台は、アマリリア王国。アマリリアにはデーモン軍団が押し寄せておりアマリリア軍との戦いが行われていた。大魔術師サラザールは、そのデーモンを封じ込める呪文を12の宝に託して王国の中に隠した。読者はサラザールの依頼を受けて、12個の宝を探すこととなる・・・。構成は、見開きの左側に物語、右側に大きなイラストが置かれています。各ページごとに文章にはタイトルが付けられ、12個の宝物のイラストも示されています。宝物には1~12までの番号が振ってあり、イラストの中から宝箱を探し出して、見つかったページ最初の語句を順番につなげてゆくと、ひとつの文章が現れてきます。これがデーモンを退ける呪文で、この呪文を探す事が目的となります。
要は、だまし絵というか、隠し絵ですね。上のようなファンタジー風の美麗なイラストの中に巧妙に宝物が隠されていて、それを探すゲームです。ただしその謎が一筋縄ではいかないもので、いろいろな角度から眺めたり、時にはページを折ったり、鏡を立てたりしないとわからないように巧妙に隠されています。そもそも冒険の目的すら、文中でははっきりとは示されておらず、解答もこの本には入っていません。あまりにわかりにくいので、訳者の安田均氏がイントロ部分で、解き方の解説をしているほどで、それがないと何をすればよいのかいまいちわからないまま、解答のない世界をさまよい続けることとなります。
宝箱の隠され方もかなり抽象的で、解釈によっては幾通りもの解答が考えられ(しかもフェイクも入っている)、正式な解答が明かされていないため、現在でもネット上で謎解きがされてるような感じになってます。正式な解答を示さず、はっきりとした遊び方も明示されてないというのは、読者に遊び方を委ねているというようにもとれます(安田氏も野暮を承知の上と断った上で、遊び方のヒントを出しています)。実際のところあまり謎解き中心には考えず、ファンタジー世界をきままに楽しむという方が、ほんとうの遊び方なのかも知れません。
宝物のひとつ王冠。
黄金の聖杯。
タイタンの旗印。どこかで見たことがある?
スティーブジャクソンの『魔術師タンタロン12の難題』の方は、ロープにつながれたとらわれの囚人を助け出せるのはレバーの右か左か・・・というような感じのパズルブックになっています。こちらはゲームブックブーム最中の1987年に先に出版されており、知名度だけではなくゲーム性としても、こちらが上のようです。魂の宝箱と12の呪文の方は、ゲーム性としては幾分淡白な感じです。火吹き山の魔法使いで迷路を挿入したり、バルサスの要塞やソーサリーなどで魔法を導入するなど、新しいルール作りやパズルのようなゲーム性を得意としたジャクソンと、物語や世界観を重視したリビングストンの作風の違いが、ここでも現れているように思います。
高難易度で解答も含まれてないなど、クールで読者を突き放したかのような作りが、あの頃のPCのPRGなどをおもわせます。同時にそれが神秘性を生んでいるような気もします。また日本製のものだと、このような味わい深いイラストや奥深いファンタジー性もなかなか難しいかなと思います。
◆ T&T RPGシナリオ・ベア ダンジョン
T&T RPGシナリオ・ベア ダンジョン・社会思想社
2007-10-14 21:32:43 | ゲームブック
『トンネルズ&トロールズ』(Tunnels & Trolls)は、1975年に米フライングバッファロー社より発表されたTRPGです。これまで何冊かゲームブックのような感覚で遊べるソロシナリオを紹介しましたが、この『ベア・ダンジョン T&T PRGシナリオ』は、多人数で遊ぶことを前提としたTRPG用の本格的なシナリオです。これだけではゲームブックのように遊ぶことはできず、ゲームを司るDM(ダンジョンマスター)のために、迷宮の構造だとか、罠の配置などの設定を解説したものになります。写真は初版なのですが、日本では88年に社会思想社より出版されました。
このシナリオは、書中の解説によるとT&Tのルールブックや、迷宮の原型などが作られてから約一ヵ月後に作られたT&Tのシナリオ(ダンジョン)の中では、最も初期のもののようです。これは地下三層からなる巨大なダンジョンから構成されており、地上には“監視の城”と呼ばれる廃墟があります。そして女魔術師“バニタルア”の手により配置された悪魔がダンジョンの入り口を監視しています。実はかなり難易度の高いシナリオでもあるようで、基本的には一度に最後まで攻略するものではなく、地上と地下を行き来しながら少しずつ歩を進めてゆくタイプのものになります。実際、入ってすぐ巨大な球が転がってきたり、部屋に閉じ込められて上から水(ピラニア入り)が噴出してきたりと、いきなり過激な罠が登場してきます。また、これはプレイヤー用ではなく、ゲームを管理する(DM)ダンジョンマスター用のものですから、部屋A、部屋B、などそれぞれの部屋と、罠、モンスター、(冒険の結果得られる)宝物などが、順番に記されています。プレイヤーはDMと会話をしながら、部屋に入ったキャラがどういう行動をとり、その結果どういうことが起きたかを(DMに)判定してもらってゲームは進んでいきます。ですから実際にこれで遊ぶ場合には、(TRPGのルールに精通した)DM役と、(TRPGのルールを理解している)冒険者役のプレイヤーが何人か必要だということになります。
私の場合はゲームブックやPC、FCのRPGには熱中しましたが、周りにTRPGを分かる人(関心を持つ人)がそれほどいなかったので、本格的にTRPGで遊んだことはありません。ルールを熟知した人が何名か必要ですから、TRPGは(ゲームブックやCRPGなどと比べると)結構敷居は高かったのですね。ということでプレイした感想を述べることはできないのですが、多彩なトラップ、様々な効力を持つアイテム、多様なモンスターなど、RPGの資料集、設定集として楽しみました。現在でこそポリゴンによって広大なダンジョンが作られ、モンスターがリアルタイムで襲いかかってくるゲーム当たり前ですが、当時のPCでは表現能力の限界があって、想像力で補っている部分が多かったのです。線画(に色が付けられただけ)のダンジョンに、ドット絵で書かれたモンスター、モンスターに出会った!!と文字で表示されるだけ・・そんな程度だったのです。それを(想像力によって)脳内で、リアルな冒険へと変換していたわけです。ゲームブックや、これらのシナリオなどのリアルな描写や設定は、これらの想像力を膨らませるのにとても有効だったように思います。当時は、それほど西洋のファンタジーの知識もありませんので、余計に新鮮だったのでしょう。
余談ですが、このダンジョン最深部には司令室があり、パーティの一団が踏み込むと、グレムリンの一群が大慌てで水晶を抱えて我先に逃げ出す描写があります。製作者サイドでは、(飛行機に悪戯をする)伝承上の小鬼がギャアギャア騒ぎながら逃げる姿を想定していたのだと思いますが、(映画『グレムリン』が公開された後でしたので)あのもこもこした“ギズモ”が逃げ回っている、かわいい絵しか浮かばなかった覚えがあります。当時ファンタジーで連想するものって、この程度のものだったのですね。それにしてもこれはゲームブックなどに比べると、けっこう敷居が高かったと思うのですが、現在でも古本屋で非常によく見かけますのでかなり売れたのでしょう。こんなとこからも、当時のRPG熱(ブーム)の一端が垣間見えるような気がします。
◆ モンスター誕生
ゲームブック・モンスター誕生・社会思想社
2007-09-17 23:26:23 | ゲームブック
『モンスター誕生』は、日本では社会思想社より1988年に発表されたソーサリーシリーズの第24番目の作品にあたります。著者はS・ジャクソンで、(現時点では)彼のファイティング・ファンタジー最後の作品となると共に、『ソーサリー』と並んで最高傑作と呼ばれています。これまでにも様々な趣向や、新しいルールに挑戦してきたS・ジャクソンらしく、非常に凝った(変わった)作品になっています。また、最初に物語の背景が語られるのですが、舞台となるアランシアの3悪人“ザゴール”(火吹き山)、“バルサス・ダイア”(バルサスの要塞)と、本作の敵である“ザラダン・マー”の関係にもふれられており、シリーズ世界をリンクさせ物語世界をより深めるという役割も果たしています。
物語の背景は、アランシアを支配しようと企む妖術師『ザラダン・マー』が、それを可能とするエルフの魔法を盗み出そうとしているところより始まります。彼は、ドリーの魔女達の手により育てられ、“ザゴール”、“バルサス・ダイア”とともに、高名な魔術師“ダークストーム”に師事して黒魔術を学びます。それと同時に魔女達より伝わった、マランハと呼ばれる異形の合成生物をつくりだす魔術にも精通しています。ある時、森エルフの村に特殊な力を持つ“煙”が存在することを知り、その秘密を追うこととなります。ただし森エルフの村は巧妙に隠されており、地上からの探索では見つけることができません。彼は、探索のためにガレーキープと呼ばれる飛行艇を乗っ取り、空よりの探索を行っていきます・・・。このような感じで、まず冒頭に長い背景の解説があります。この中で、ザラダンの部下である魔術師や、ゾンビの軍隊指揮官のことなども詳細に語られるのですが、実は物語の主人公であるプレイヤーには、それらはそれほど意味を持ちません。なぜなら主人公は、暗い地下通路の袋小路で、頭痛と体の痛みとともに目覚めるのですが、自分が何者で、いったい何をすればよいのかを一切知りません。それどころか、知性を持たない(鋭い鉤爪と緑色の鱗を持つ)怪物になっていますので、プレイヤーの意思(選んだ選択肢)すら、無視して行動を始めることになります。傷付いたドワーフを助けようとして、(体は意図に反して)食べるために襲い掛かかってしまいます。本能による肉体の行動に意図は大した影響を与えることができず、右左どちらに行くかをサイコロで決めるなど、(ゲームブックとしては)かなり異色の展開になっています。
この後、アイテムの力を借りて理性を取り戻し、言葉を理解し文字を判読できるようになっていきます。徐々に自分が何処にいるのか、何をすべきなのかを分かってくるようになっています。このように失われた記憶(アイデンティティ)を取り戻す物語なのですが、そのための仕掛けも非常に巧妙です。この作品は、文字だけでなく出合った相手の言葉すら意味の無い文字列で書かれていますので、初めはプレイヤーにもそれが理解できません。しかし冒険の途中で言語の能力を手に入れると、文字列(暗号になってる)の謎が解けてそれらの意味がわかるようになります。この当時『レリクス』(86)という、記憶を持たない意識体として、失われた記憶と自分の本当の体を探索するゲームがありましたが、雰囲気はそれにもちょっと似ていますね。またプレイヤーが、敵であるワードナーに扮して蘇り失われた記憶と力を取りもどす、『Wiz4』とも共通する部分があるように感じます(FF7も本当の記憶を取りもどす物語でした)。このような展開のためか物語性も高く(単なるゲームブックの添え物ではなく)、怪奇・ファンタジー小説としても十分楽しめるものになっています。前半は『ザラダン・マー』の地下研究施設、後半は地上でガレーキープを探す旅になっています。暗く湿った地下から外へ、そうしてガレーキープ船上での展開になっていますので、記憶が戻ってくる過程にあわせて開放感が感じられ、最後に天空のもとで自分が何者なのかを取り戻すクライマックスでは、けっこうな爽快感を味わえると思います。また理性を取り戻し、謎が解明されてゆくにつれ冒頭の物語背景ともリンクするようになっており、数々の伏線も生かされています。ただし、S・ジャクソンにとってのシリーズ最終作(集大成)であるためか、難易度も半端でなく高く、パラグラフの使い方(トリック)も凝りに凝ったものになっていて難しいです。
ゲームブックをネタとして取り上げる場合、プレイしたのは20年以上前のことですから記憶が曖昧で、もう一度読み直したりネットで調べたりするのですが、この作品は現在読んでみても楽しめました。ストーリーが、(ゲームブックにありがちな)単なる冒険のためのものに終わっておらず、また仕掛けも非常に凝っているなど完成度の高さをあらためて感じました(また、そのため非常に時間がかかりました)。この作品はゲームブック中期ものにあたると思いますが、(ある程度ヒットしたためか)この時期のものとしては意外に見つけやすい気がします。もし100円コーナーで見かけられたら、ぜひ手にとってみられることをお勧めしたいと思います。
◆ モンスター事典
ゲームブック・タイタン?ファイティング・ファンタジーの世界/モンスター事典・社会教養社
2007-09-02 20:19:13 | ゲームブック
これは、ファイティング・ファンタジーシリーズの副読本(資料集)として1986年に発表されたモンスター事典と、タイタン?ファイティング・ファンタジーの世界(日本では90年発表)です。著者は、I・リビングストン&S・ジャクソン監修、M・ガスコイン編となっています。ゲームブックの大ヒットを受けて、1986年に社会思想社よりゲームブック専門誌ウォーロックが創刊されます。1984年には“ファイティング・ファンタジー”シリーズの世界観に基づいたTRPGとしてファイティング・ファンタジー(日本では東京創元社が出版)が発表、続けて1989年には、2番目のTRPGアドバンスト・ファイティング・ファンタジーが発表されています。そのような世界的なゲームブック人気の高まりを受けて、より詳細にその世界観を確立しようという意味合いで、これら2冊は登場してきたのだろうと思います。
ゲームブックより派生したTRPGファイティングファンタジー。なぜか社会思想社ではなく、東京創元社より出てました。こちらは、2番目のTRPGアドバンスト・ファイティング・ファンタジー。D&Dを意識したっぽいイラストがかっこいいです。
ファイティングファンタジーTRPGシナリオ、謎かけ盗賊。ゲームブックではないので、一人では遊べません。
まず86年に最初に登場したモンスター事典ですが、ファイティング・ファンタジーに登場した200以上のモンスター・データと生態が解説されています。この86年という年(ドラクエが発表された年)は、RPG熱が高まってきていた頃で、PC誌などでも(日本人に不慣れな)ファンタジー世界のモンスターを解説した記事が盛んに書かれていました。(有名なところでは、Beep誌に連載されていて書籍化された『RPG幻想事典』など)。それらと少し異なる点として、(“ファイティング・ファンタジー”シリーズに登場してきたモンスターの事典ですから)技術点・体力点・などが記されています。また、オークやトロール、ゴブリン、スケルトン等といった一般的なモンスターに混じって、赤目、肥喰らい(スライムイーター)、ゴンチョン(トカゲ王の寄生生物)、ガンジー(バルサスの要塞にいた難敵)など、この世界独特の生物も多数登場します。それでも、一つ一つにイラストの付いた200以上のモンスターの解説は圧巻の一言で、例えばエルフの項目では、黒エルフ・森エルフ・山エルフ・闇エルフ、トロールの項目では、海トロール・丘トロール・洞窟トロール・本トロールなどと、細かく分類された上に詳細な解説がついており、RPGやファンタジー世界を知るための読み物として非常に楽しいものでした。当時は、これを読みながら世界観を膨らませて、ゲームを楽しんでいたような記憶があります。
タイタンには、舞台となるタイタンの地図が付属。
このような小物が、雰囲気を盛り上げてくれます。
続いて(日本では)90年に出版されたタイタン?ファイティング・ファンタジーの世界ですが、こちらはファイティング・ファンタジーの舞台となる異世界“タイタン”についての解説書となります。タイタンは、物語の主要な舞台であるアランシア大陸、ソーサリーの舞台となった旧世界、混沌の地クールの3つの世界からなっています。まずはそれぞれの世界の神話と伝説から始まって、善の勢力、中立の勢力、悪の勢力と住人たちの解説、暦、祝日・祝祭、通貨や経済・流通、ポート・ブラックサンドを例に取っての冒険者の町での生活風景などが、事細かに解説されています。善の勢力には、ドワーフ、エルフ、ノームなどの種族が紹介され、ドワーフの使用するルーン文字までが規定されています。またニカデマス(盗賊都市)、ヤズトロモ(運命の森)などのお馴染みの善の魔法使いたちが、その関係や経緯など詳細に解説されています。悪の勢力としては、オークやゴブリンたちの生態が(オークの部族や軍隊の組織図まで)図解入りで事細かに述べられています。また代表的な悪の勢力として名高い3悪人、ザゴール(火吹き山)、バルサス(バルサスの要塞)、ザラダン・マー(モンスター誕生)の生い立ちやお互いの関係までが、ここで初めて明かされています。TRPGのルールブックなどには、その背景世界の法律や通貨、職業などといったことが、決め細やかに規定されていることが多いのですが、それらにも劣らないほどの膨大な情報が詰め込まれています。ゲーム世界の補完という意味合いを離れて、一つの仮想空間を作り出そうというゲームデザイナーの情熱のようなものを感じてしまいます。
何度か書いたことがあるのですが、日本製のRPGはイベントや感動的な物語で繋いでみせるエンターティメント型のものが多く、海外のものは徹底的に世界観を作りこんで、その中を自由に冒険させるタイプのものが多いような気がします。ただ海外製のものは、自由度が高い反面、突然世界に放り出されて何をすればよいのか分かり難かったりして、日本ではあまり歓迎はされないようです。どちらが優れているかという問題ではなく、単に文化の違いといったものだとは思いますが、こういう徹底的に作りこまれた仮想世界というのは、役割を演じ自分の行動が冒険(物語)を作るRPGの原点のようにも思えてきますね。これらの書籍に書かれている情報は、今となってはあんまり意味を持ちませんが、ファイティング・ファンタジーの世界をより深く楽しむためには必須のものだと思います。それほど見かけるものではありませんので、100円コーナーでもし見かけられたら確保されることをお勧めしておきたいと思います。
◆ カザンの闘技場
T&Tソロアドベンチャー・カザンの闘技場・社会思想社
2007-08-16 13:58:53 | ゲームブック
『カザンの闘技場』は、T&Tのソロアドベンチャーシナリオの第二弾として、社会思想社より1988年に出版されました。今作は、表題にもなっている戦闘オンリーの『カザンの闘技場』と、低レベル魔法使い向けの『ソーサラー・ソリテア』の2本が収録されています。どちらも通常のシナリオからするとちょっと異質な作品になっており、特に『カザンの闘技場』は、闘技場にてひたすらバトルを繰り返すというかなり特殊なシナリオです。またこの作品は、ゲームブック(TRPG)ブームの全盛期に発売されたためか、そこそこ売れたようで、今でも古本屋でよく見つけることができます。
『ソーサラー・ソリテア』は、T&Tソロシナリオの中でも珍しい低レベルの魔術師専用となっています。直接戦うという選択枝があまりないため、魔術師以外のキャラクターでは生き抜くことができません(そもそも迷宮の入り口自体が、魔法でないと開きませんが)。前作の『傭兵剣士』が、どちらかというと低レベルの戦士向けのシナリオでしたので、プレイヤーに魔術師の冒険を体験させる(魔術師のキャラを育てさせる)、という意味合いで用意されたものなのでしょう。舞台設定は、深夜の巨大な大邸宅となっているのですが、蝙蝠や幽霊などの大邸宅(幽霊屋敷)らしいものだけでなく、魔女やトロール、ドラゴン、囚われの王女、サーベルタイガー、暗闇の悪魔、果てはSFっぽい実験室から暴走をはじめる“大喰らい”など、(ホラー、ファンタジー、SFと)世界観がごちゃまぜになっています。それ以外にも指示されていない番号を読むと、いきなりDM(ダンジョンマスター、この場合は作者)に怒られたり、倒せる筈のない悪魔(MRが2000以上ある、他のMRは10~30程度)を倒した場合、DMにシナリオ外に摘み出されるなどのジョークっぽいノリもあります。このように変わったシナリオですが、結構面白く一度遊んだら印象に残る作品になっています。
『カザンの闘技場』は、闘技場での戦闘のみに特化したかなり異色のシナリオで、プレイヤーは死の都市としてしられるカザンの闘技場で戦うことになります。基本的にストーリーなどはなく、カザンの謎を解き明かすとか、カザンの支配者レロトラーを倒すなどの展開にはなりません。プレイヤーは腕自慢の自由人として、或いは奴隷としてひたすら戦闘のみを行なうことになります。基本的にどんな職業、どんなレベルのキャラでも参加できるように作られており、また何度でも戦いを繰り返すことができるなど、(矛盾が生じないよう)非常に緻密に組み立てられたシナリオになっています。グレムリン、ドワーフ、オークなどの小型の相手から、大猿、象、巨人、果てはマンティコア、ユニコーン、バルログなど空想上の強力なモンスターまでが相手になります。戦うことによって冒険点がもらえたり、強力な魔法の武器(自動小銃のようなものまである!)が手に入るなど、自分のキャラクターを強力に育てるためのシナリオとしても機能するようになっています。また他のシナリオにて奴隷船に囚われた後で、ここに送られるというシナリオを横断する展開もあって、より世界観を拡げるような役割も果たしていました。
パソコン版トンネルズ&トロールズ カザンの戦士たち。カザンの謎を解き明かし、レロトラーを倒すという、カザンの闘技場の拡張型のようなシナリオになっています。ただし、解き終えることが困難というとんでもなく難しい作品のため、ここでもレロトラーは結局倒せそうもない。
国産初のCRPG“ザ・ブラックオニキス”にはアリーナという施設があって、シリーズ第4弾として闘技場でひたすらバトルをする作品が予定されていたそうです(実際には2作目までしか発売されていない)。またドラゴンクエストでも、モンスター同士を戦わせる闘技場が用意されていました。これら闘技場という設定は、ある意味ではRPGにはお約束でもあり、世界観をより深める意味も担っていましたね。もちろんT&Tの場合、戦闘の計算は手動で自分で行なう必要がありますので、ひたすら戦闘を繰り返すこのシナリオを楽しめるかどうかは、今となっては微妙ですが。まあ良く見かける作品ですので、世界観を楽しむというような意味でしたら、手に入れてみられてもよいと思います。
◆ 雪の魔女の洞窟
ゲームブック・雪の魔女の洞窟・社会思想社
2007-07-15 16:34:06 | ゲームブック
これは、ファイティングファンタジー第9作目『雪の魔女の洞窟』(Caverns of the Snow Witch)です。著者はI・リビングストンで、彼の作品らしくタイタン世界(中世風の剣と魔法の世界)を舞台とした、オーソドックスなルールのものになっています。この作品の特徴としては、もともと『ウォーロック(WarLock)』誌(社会思想社)に掲載された短編に後半部分を加筆して、出版されたものだということです。そのため前半部分は『雪の魔女』の洞窟に潜入して魔女を倒す戦い、後半部分は魔女にかけられた呪いを解くための旅となっています。
物語は、氷指山脈の水晶の洞窟の奥に潜む『雪の魔女』が、世界を支配すべくこの世に氷河期をもたらそうと企んでいる。隊商の護衛であった君は、前哨砦を襲った怪物を退治した時に、怪物の手にかかった猟師よりこの事実を告げられる。美しくも邪悪な魔女を倒すために君は洞窟に向かうことになる・・。おなじみの剣と魔法のタイタン世界が舞台とはいっても、雪の山岳地帯が舞台となるため、これまでの作品にはない雰囲気をもっています。登場してくる怪物も、雪狼、マンモス、雪男(yeti)、霜の巨人(Frost Giant)、結晶戦士(Crystal Warrior)、とそれらしいです。この『雪の魔女』は、アンデルセンの童話『雪の女王』(The Snow Queen)から着想を得ていると思いますが、そのためか一面が雪と静寂に覆われた、どこか清潔で、どこかロマンチックな世界観になっています。ちなみに『雪の魔王』で検索すると、マイクロキャビンのAVG『は~りぃふぉっくす・雪の魔王編』が多くヒットします。
雪の魔女を倒すのがこの冒険の目的ではあるのですが、短編に後半部分を加筆して成立したという経緯を持つため、後半部分は魔女の洞窟を出て魔女にかけられた“死の呪文”を打ち破る展開へと変わります。冒険の途中で魔女の奴隷だった、エルフの(赤速)とドワーフの(スタブ)が仲間になります。このドワーフはストーンブリッジの住人であり、一行がストーンブリッジに到着するとドワーフ達の“伝説的なハンマー”が奪われる事件(運命の森)に遭遇することになります。それ以外にも“迷宮探険競技”の行なわれる『ファング』という街の話が出てきたり(死の罠の地下迷宮)、呪いを解く癒し手は『ニコデマス』という魔法使い(盗賊都市)の呪いを解いたために、自分が疫病に罹ってしまったという設定になっています。そして主人公が最終的に呪いを解く場所は、あの『火吹山』です(火吹き山の魔法使い)。このようにファイティングファンタジーのこれまでの舞台が登場して、それらが一つの世界として結び付けられています。この後に『モンスター事典』、『タイタン』といった、タイタン世界の設定集が発売されていますが、ゲームブックの世界的な好評を受けてゲームブック誌(ウォーロック)が創刊されたこともあり、この辺りからだんだんと一つの物語世界が構築され始めたことがわかります。
このように書いてくると結構面白そうですが、個人的には印象が薄い作品となっています。確かに遊んだ記憶はあるのですが、前回の『地獄の館』を鮮明に覚えていたのとは対照的に、内容はほどんど残っていませんでした。初期の『火吹き山』、『バルサス』などに感じた衝撃がこの頃になると薄れてきていて、新鮮味を感じなかったのかもしれません。この後、世紀末バイオレンス『フリーウェイの戦士』、日本風の世界が舞台の『サムライの剣』、アメコミヒーロー路線『サイボーグを倒せ』といった多彩な設定の作品が登場してきますので、そちらの方に目がいっていたのかもしれませんね。
◆ 地獄の館
ゲームブック・地獄の館・社会思想社
2007-07-10 22:17:20 | ゲームブック
これは、ファイティングファンタジーの第10作目『地獄の館』(House of Hell)です。著者はS・ジャクソンで、単独作品としては、『バルサスの要塞』、『さまよえる宇宙船』に続く第3作目にあたります。日本では社会思想社より1986年に発表されました。これまでのタイタン世界(中世風ファンタジー世界)を舞台にしたものとは異なり、現代(80年代)を舞台にしたホラー作品になっています。ホラーRPG『クトゥルフの叫び声』の影響を濃く受けており、ある意味斬新な世界観や、新しいルール作りにこだわったS・ジャクソンらしい作品だといえるでしょう。
物語は、暗い嵐の夜に主人公の乗った車が、山道で事故に遭って動かなくなったところより始まります。土砂降りで稲妻の光る中、遠くに洋館の窓灯りが浮かび、救助の電話を借りるためにそこへ向かうこととなります。しかしそこは夜な夜な怪しげな儀式が執り行われる、悪名高い呪われた『地獄の館』だった・・・。この作品で最も特徴的なのは、基本ルールに“恐怖点”という新しいパラメーターが加えられていることです。これは恐怖を感じた場合に加算されてゆき、恐怖の限界を超えてしまうとショック死してしまうというルールです。このため通常のRPGのようにあちらこちらを探索するために、不用意に扉などを開けられないようになっており、より緊迫度が増しています。もう一つの特徴として、情報を得た場合や鍵などのアイテムを手に入れた場合、番号○○へ飛べとか、現在の番号より××を差し引いた番号へゆけなど、(実際に)情報を知らなければ行き詰まるようになっており、ズルが出来ないようになっています。恐怖点は情報を得るためには避けられず、情報がないと先へ進めないようになっていますのでジレンマが生じ、結果的に非常に難易度の高い作品になっています。
屋敷の中は、2階が客室になっており、ここではゾンビや亡霊などと相対しながら脱出の情報を収集することになります。地下は牢獄や拷問部屋、儀式の間になっていて、こちらでは拷問吏や邪教集団などの人間が相手になります。ゴブリンやコボルトではなく、人間相手の方が(より狡猾でより残酷なため)非常にリアルで、より恐怖感を感じるような気がします。また主人公は、冒険者ではなく一般人ですから、武器などを持っておらず技術点より3点差し引いた状態でプレイしなければなりません。そのため戦うことよりも、逃げることや隠れることを、まず優先しなければなりません(そもそもプレイヤーの目標は、ラスボスを倒すことではなく屋敷より逃げ延びること)。屋敷の主は伯爵ケルナー卿で、彼を倒すためにはある“特殊な武器”と、ある“決まった場所”で戦うことが必要になります。これらは幾つもの情報を得て“合言葉”や“鍵”を見つけなければ到達できませんので、そう簡単には解けないようになっています。このように恐怖感(臨場感)も、難易度もFF最高の水準であり、S・ジャクソン作品としても特に評価の高い作品になっています。
影響を受けたと思われるホラーRPGクトゥルフの叫び声。特徴的な点としてSAN値というパラメーターがあり、これを元に恐怖点が考えられたと思われる。
地獄の館のあとがきでも安田均氏がクトゥルフの叫び声について言及し、同時期の他のテーブルトークRPGについても解説をしている。
文章で説明するだけでは、知らない方にはいまいち伝わりづらいかと思いますが、雰囲気的には同時期の『スプラッターハウス』(88/ナムコ)、少し後の『バイオハザード』(96/カプコン)を連想してもらえば、ある程度は想像できるかも知れません。嵐の中を洋館に逃げ込み、屋敷内のゾンビや死霊などに脅かされながら、地下で行なわれている実験(儀式)の謎を解き明かす・・・。当時これらのゲームをプレイしながら、この作品の影響(や影)を感じたりもしました。(時期的に考えて、実際に多少は影響を与えているかもしれません)。また訳者の安田均氏は、同時期にラプラスの魔という、これもクトゥルフの叫び声に影響を受けたRPGをコンピュータゲームとして発表していました。こちらはゲームブックであることを置いておいても、かなり良く出来た作品だと思います。もし100円コーナーなどで見かけられたら、手にとってみることをお勧めします。※実際に臨場感を味わいたい方には、こちらに素晴らしいリプレイがあります(リンクフリーのようなので無断リンク)
◆ 影の伝説/チャレンジャー
ゲームブック・影の伝説/チャレンジャー・勁文社
2007-07-03 22:22:07 | ゲームブック
これは勁文社(ケイブンシャ)より発行されていたゲームブック、アドベンチャーヒーローブックスの『影の伝説』と『チャレンジャー』です。発行日は、どちらも1986年(昭和61年)となっています。どちらもFCの人気ゲームをゲームブック化したもので、このケイブンシャ以外には、双葉社より文庫本の形で『ファミコン冒険ゲームブック』というシリーズもありました(このシリーズ80冊以上出ていたそうで、今でもブックオフなどでよく見かけます)。
こちらは、ギャグ漫画っぽくアレンジ。
こちらは、劇画調。こちらのケイブンシャのシリーズも46冊+αほど発行されているようで、ご記憶にある方も多いのではないかと思います。こちらもFC~PC-エンジンあたりのゲームが中心ですが、それだけに留まらずガンダム、Zガンダム、ボトムズなどのアニメ、宇宙刑事シャイダー、仮面ライダーブラックなど特撮もの、ナイトライダーなどの洋画等、多彩なテーマを取り上げていたようです。ほとんどの方が、勁文社(ケイブンシャ)という名前をどこかで聞いたことがあると思いますが、子供向けの豆本『大百科シリーズ』を発行していた出版社です。FCブーム以降には、『ファミリーコンピュータ・ゲーム必勝法シリーズ』も発行していました。ということで、このある意味脈絡の無いゲームブックのラインナップも、なんとなくわかるような気がしますね。また今でも豆本は見かけますので、気付きにくいですが、勁文社(ケイブンシャ)自体は2002年に倒産してしまっているそうです。
チャレンジャー(ハドソン)
影の伝説(タイトー)
このシリーズは、幼児から小学校低学年向けに書かれていますので、私は当時遊んだことはありませんでした。ファミコン発売時(83)から、スーパーマリオ(85)やドラクエ(86)の大ブームになる頃までは、発売されるFCソフトの本数自体もそれほど多くなく、中古店も個人でやっているところがほとんどでしたので、FCソフトはそう簡単に買える物ではありませんでした。80年代後半になって『ブルート』等の大手チェーンができてから、やっと中古品が普通に買える(流通する)ようになりましたが、それまでは1本1本のソフトがけっこう大きかった様に記憶しています。この頃のゲームで遊びたいという(子供の強い)気持ちを、少しでも満たすためにこのようなシリーズが発売されていたのでしょう。新品ソフトは1本5,000円~ほどしましたので、500円~くらいの子供のこづかいで買えるゲームブックは、当時それなりに意味を持ち、それなりに大切な存在でもあったのだろうと思います。
この頃にファミコンの洗礼を受けた子供たちというのは、(ゲームに関して言えば)幸運だったような気がします。今でも熱中するようなゲームや、目をみはるようなゲームというのは登場しますが、あの頃のような“わくわく感”をゲームより感じることは、もはやないように思えます。表紙から当時の子供のわくわく感が、なんとなく伝わってくるような気がしますね。
◆ トカゲ王の島
ゲームブック・トカゲ王の島・社会思想社
2007-05-13 14:05:46 | ゲームブック
『トカゲ王の島』は、1985年に社会思想社より発売された、ファイティングファンタジー7番目の作品です。著者はI.リビングストン。彼の作品らしく、舞台となるタイタン世界の描写など、物語背景にこだわったオーソドックスな作品となっています。RPGシナリオのジャンルとしては、野外での冒険が中心のフィールド・アドベンチャー型になります。
物語は、アランシア西方の漁村・オイスターベイを、主人公が訪れたところより始まります。オイスターベイの若者たちは、トカゲ王に統治された火山島に奴隷として連れ去られています。プレイヤーは、旧友より若者達を解放することを依頼され、アランシア遥か南方の湿地地帯に住むトカゲ兵達の前線基地である、この火山島に乗り込むことになります。舞台となるのは火山島ということで、砂浜→ジャングル→沼地→鉱山→山岳地帯と野外での冒険となり、巻末の解説では『インディ・ジョーンズ』ばりの冒険活劇とされています。確かに鉱山に囚われた若者達を救い出し、ブードゥ魔術を駆使するトカゲ王と対決をするくだりは『魔球の伝説』を連想させます。また砂浜に登場するお約束の巨大ガニや、首狩り族、洞窟にひそむケーブ・ウーマン、恐竜ステゴザウルスに乗った騎竜兵など、レイ・ハリーハウゼン(Ray Harryhausen)のストップモーション作品を、連想させる展開もあります。著者I.リビングストンの世代的なものもあるのか、懐かしい冒険ものといった感じになっています。またトカゲ王の頭には、ワキワキと動く寄生生物が取り付いており(表紙のトカゲ王の頭にあるのは角でも冠でもなく甲殻類みたいな足)、これを倒すための情報を山岳地帯の呪術師より手に入れる必要があります。ここいらあたりの設定には、『遊星からの物体X』や、『エイリアン』的なテイストも入っています。このように書くとかなり面白そうな作品という感じがしますが、当時遊んだ記憶はあるものの、今となってはほとんど覚えてませんでした。野外をあちこち移動する展開になっており、詰め込みすぎで少し散漫になった部分もあるかと思います。またFFシリーズも7作目となり、少々マンネリ化していたところもあったかも。ただこの後FFシリーズは、ホラー『地獄の館』、近未来バイオレンス『フリーウェイの戦士』、侍・忍者もの『サムライの剣』とテーマを広げてゆき、2人以外の様々な著者の手による作品も増えて、再び活気付くこととなります。初期の印象深い作品と、中期以降の多彩な作品郡に挟まれて、多少印象の薄い作品になってしまった感があるのは否めないですね。
というわけでFFシリーズとしては、少し印象の薄い作品となっていますが、ここまで書いたように様々なSF冒険映画へのオマージュがちりばめられています。そういう意味では、今となっては非常に懐かしい感じがする作品だとも言えますね。またリザードマンの軍隊や武装したリザード兵が登場しますが、それらの描写やイラストなどが非常にかっこいいです。当時のRPGでリザードマンは花形のモンスターでしたので、彼らにスポットをあてた作品という意味では貴重かもしれません。
◆ 傭兵剣士
T&Tソロアドベンチャー・傭兵剣士・社会思想社
2007-05-05 18:08:31 | ゲームブック
『傭兵剣士 T&Tソロ・アドベンチャー』は、『T&T』(トンネルズ&トロールズ)を一人でも楽しめるようにした、一人遊び用のシナリオです。オリジナルの発売元は、米・フライングバッファロー社で、日本では1989年に社会思想社より発売されました。ゲームブック・ブームの頃に、ファイティング・ファンタジーと同じような装丁で出版されましたので、同じ感覚で遊ぶことができました。『T&T』は本格的なTRPGですから詳細なルールブックが必要なのですが、これには簡易ルールが付いており、気軽に遊べるように工夫されています。ソロ・シナリオ『傭兵剣士』と、『青蛙亭ふたたび』が収録されています。
『傭兵剣士』は、低いレベルの戦士向けのシナリオです。パラメーター数は160弱ほどしかない、ごく短い冒険のシナリオです。とはいっても本格的なTRPGシナリオですから、ゲームブックよりやってきた読者は、このシナリオに入る前に、キャラ作成とルールの把握に一苦労することになります。CRPG(コンピュータRPG)と同じく、サイコロをふり体力、知力、魅力、器用度などを決め、種族、職業(役割)を決定します。後は、所持金と相談しながら、武器・装備を選べば終わりです。ゲームブックと異なり、一度作ったキャラは(死なない限り)次の冒険へ持ち越せ、経験点に応じてレベルUPも果たします。冒険で手に入れた魔法の武器・アイテム等も、そのまま持ち越せますので、キャラに対する愛着が強くなるわけです。せっかく育ったキャラも死ねば終わりですから、400ほどパラメーター数のあるゲームブックと比べても、かなり濃い冒険となるわけです。
『傭兵剣士』は、魔術師モンゴーが最近買った塔の地下の見取り図を、彼の雇われ剣士となって作成するというシナリオです。『シックス・パック』(六本入りビール箱)という名前の岩悪魔が、パートナーとなって助けてくれます。160弱ほどのパラメーター数ですから、迷路や罠は大したことはないのですが、ゲームブックと違って死んだらせっかく作成したキャラがパーになってしまいますので、かなり緊張感を感じることになります。“ほうき拳”や“赤いローブの僧侶団”などといった敵と戦いながら、はしけを使い地下水路を抜け、無事に出口までたどりつくことができれば、迷宮内で手に入れた金貨と魔法のアイテム、経験点などがキャラのものになり、次の冒険へと旅立つことができます。このように普通のCRPGと同じく、キャラを成長させてゆく楽しみがあるわけです。このことによって、ゲームブックと比べてもかなり面白いものになっています。
『青蛙亭ふたたび』は、『傭兵剣士』より少し複雑になった低レベルのキャラ向けのシナリオです。『青蛙亭』の主人の依頼を受けて、“赤いローブの僧侶団”に盗まれたアイテムを取り戻すために、地下寺院を探索することになります。こちらにも岩悪魔が再び登場して、パートナーとして一緒に行動してくれます。こちらで面白いのは、モンスターにつかまって奴隷となり『カザンの闘技場』(別シナリオ)で戦う運命になったり、テレポート装置を作動させてしまい『デストラップ』(別シナリオ)に飛ばされてしまったりと、外部のシナリオへと繋がっているところです。こういう部分もシナリオとキャラが、別々の独立した関係にあることを実感させてくれます。(RPGですから当たり前ですが、ゲームブックの場合には、シナリオとキャラが不可分な関係のため新鮮に感じるわけです)。シナリオ外にも、広い世界が広がっているということを感じさせて、想像力を刺激してくれるのですね。
ということで、はまれば下手なコンピュータRPGには負けないほど、結構面白いです。ゲームブック・ブームも去った90年代始め頃には、古本屋にいけばこの手のものがごろごろ転がっていましたから、(100円でできる)お手軽な暇つぶしとして楽しみました。80年代のように、きちんとサイコロ振って遊ぶというより、読み流してその世界を気軽に楽しむといった感じでしたが。ということで、自分にとってのゲームブックのマイブームは、80年代と90年代と2回あったわけです。
◆ ドラゴンブック
ゲームブック・ドラゴンブック・富士見書房
2007-05-01 21:53:19 | ゲームブック
これは、富士見書房の『ドラゴンブック』というレーベルから、80年代に出ていたゲームブックです。ドラゴンブックは、富士見書房の主にファンタジーやRPG関連を扱うレーベルとして、85年に創刊されたようです。80年代のゲームブックブームの頃には、社会思想社のファイティング・ファンタジーや、東京創元社のスーパーアドベンチャーシリーズと並んでよく見かけましたので、ご記憶にある方も多いのでは。ちなみに現在まで続いている、息の長いレーベルでもあるようです。
割となじみがあると思われるパックス砦の囚人。
なんとなくロードオブザリングを思わせるクオーラス城からの脱出。
ドラゴンランスアドベンチャーの中のひとつ、奪われた竜の卵。
魔法の王国2、魔術師の王冠。
ちょっと毛色の変わったドラキュラもの、暗黒城の領主。
こちらはスカイフォールシリーズ、魔人の沼と黒いピラミッドの謎
日本人作家もの魔境遊撃隊、栗本薫氏の原作。
ブラッドソードと呼ばれるTRPGのゲームルール+シナリオセット。このレーベル、80年代には海外もののゲームブックを熱心に発売していました。もっとも有名なものとしては、TRPG『アドバンスド・ダンジョンズ&ドラゴンズ』のルールやシナリオを使った『AD&Dシリーズ』があげられるでしょう。キラキラ光る竜のホノグラムが印象的でした。それ以外にも、『スカイフォール・シリーズ』、『ブラッドソードシリーズ』、『D&Dエンドレスクエストゲームブック』(新書)、『ダーティペア』、『戦えイクサー1』、『魔境遊撃隊』などの日本人作家による『アドベンチャーゲームブック』などが出版されていました。また、安田均氏らによる『モンスター・コレクション』、『アイテム・コレクション』、『スペル・コレクション』、『トラップ・コレクション』などのRPG用の解説・資料集や、月刊コンプティーク誌に連載されていた、黒田幸弘氏による『クロちゃんのRPG千夜一夜 1~4』、『クロちゃんのRPG見聞録』などのRPGに関するコラム集などもありました。古本屋のライトノベルコーナーには、必ずといってよいほど置いてありましたので、目にされたことのある方も多いと思います。また姉妹レーベルとして、ファンタジー小説専門のドラゴンノベルズというものもありました。ビックリマンもびっくりのホログラム。
この当時、このD&Dの文字に憧れました。このシリーズは当時から、『ダンジョン&ドラゴンズ』のネームバリューと、いかにも洋物バリバリの濃いイラスト(但し生頼範義氏の手によるものが多い)、キラキラと光るホノグラムで非常に目に付きましたね。なんだか重みがあるというか、権威があるというか、ありがたみがあるというか・・。しかし当時私は、これを遊んだことはありませんでした。FFが400パラメーターだったのに対して、こちらは300パラメーター程度と少なかったんですね。今にして思えば、D&Dの凝ったルールを使用しているため、少ないからといって必ずしも内容が薄いわけではなかったのですが、なにしろ当時は、お金がありませんので、少しでも長く遊べそうなものを選んで買っていたのです。私は日本製のアニメ調の絵柄のものは苦手で、バリバリに濃い洋物のテイスト満載の作品が好きなのですが、結局このシリーズは、気になりつつも手に取ることがないまま終わってしまいました。今改めて見ても、このシリーズのイラストは、渋くて味があってよいと思います。
これは紙質があまりよくないのか、FFに比べても状態の良いものが残ってないです。古本屋で見つけた場合には、たいがいが変色してボロボロの状態です。また以前は結構見かけていたのですが、最近はほんとうに見かけなくなりました。安田氏や黒田氏の解説本も、ちょっと前までは100円コーナーに嫌というほどあったのですが、こちらも見なくなりましたね。20年以上経過しているのですから、当たり前なのですが、普通の古本と違って、これらは懐かしいと感じる人が多いということなのかもしれません(それでもプレ値が付くというほどではありませんが)。
◆ さまよえる宇宙船
ゲームブック・さまよえる宇宙船・社会思想社
2007-03-03 22:08:12 | ゲームブック
『さまよえる宇宙船』(85)は、ファイティングファンタジーの4作目であり、S.ジャクソン作品です。第1弾の『火吹き山の魔法使い』から始まって、『バルサスの要塞』、『運命の森』とファンタジーを舞台にした作品が続いてきましたが、シリーズ初のSF作品であり、常に新しい設定やルールを生み出す、S.ジャクソンらしい異色作となりました。
プレイヤーは、セルツィア空間(ブラックホール)に吸い込まれてしまった、宇宙船トラベラー号の船長となり、様々な星を廻ってそこから抜け出すための座標を探す事になります。今作で採用された特殊なルールとして、プレイヤーの分身(船長)だけでなく、科学官、医務官、技官、保安官、警備員2名の計7名のキャラを作成し、指示を出す必要があります。また戦闘も通常の戦いのほかに、宇宙船同士の戦い、フェザー銃を使った戦い(ショックか致死を与える集団戦)とルールが異なっています。基本的には、宇宙空間を移動して、惑星に到着したら誰を連れてゆくかを選択してビーム着陸を行い、調査をするというのがゲームの流れになります。巻末の安田氏の解説によれば、TV映画『スタートレック』的な世界をゲームブックとして展開したもののようです。もともとTRPGには『トラベラー』という古典的なSF作品があり、スペースオペラというのも主なジャンルとして定着しているようです。この作品は、そこらあたりを狙った作品だと言う事になります。ファイティングファンタジーシリーズは、シリーズが進んでゆくにつれて物語世界が構築され、タイタンという架空の世界を舞台にしたものが主流になるのですが、もう一方で『宇宙の暗殺者』、『宇宙の連邦捜査官』、『サイボーグを倒せ』、『ロボットコマンドゥ』などのSF作品も作られてゆきます。またホラー作品『地獄の館』、マッドマックス風『フリーウェイの戦士』、東洋風の世界観をもつ『サムライの剣』などの異色作も続々作られてゆきます。この辺りの、世界観が一挙に多様化した頃が、ゲームブックが一番面白かった絶頂期に当たるのではないかと思います。この『さまよえる宇宙船』は、S.ジャクソンの世代的なものもあるのでしょうが、SF作品としては、設定がちょっと古めです。50年代、60年代の『禁断の惑星』だとか、『宇宙家族ロビンソン』だとか、ああいうレトロ調のSFといった感じです。迷宮の通路の代わりに宇宙空間を進み、部屋のかわりに惑星探査を行なうといった感じで、大きな流れは通常のゲームブックと代わりません。雰囲気は良いのですが難点として、パラメーター数が340しかないこと(普通は400前後)、惑星や住人の文明描写に多くページを割く必要があることなどから、わりとあっさりと終わってしまう(世界が狭い)という印象がありました。ゲーム自体を楽しむというよりも、古典的なスペースオペラ世界を体験するための作品というのが、正しい捉え方なのかもしれません。
ハヤカワのSF作品などに慣れ親しんだ人ならば、より楽しめる作品かもしれません。私は『スターウォーズ』に衝撃を受けてSFに目覚めた方なので、残念ながらスタートレックはあまりわかりません。スタートレックがわかる人ならば、元ネタも理解できてより細部まで味わえるかも。ただ、懐かしい古典的なSFの雰囲気は、なかなか味があってよい感じです。
◆ 運命の森
ゲームブック・運命の森・社会思想社
2007-02-24 21:23:37 | ゲームブック
『運命の森』は、イアン・リビングストンの手による作品で、ファイティング・ファンタジーシリーズの第3弾です。1982年の『火吹き山の魔法使い』の好評を受ける形で、2作目『バルサスの要塞』(S・ジャクソン)に続いて、同じ83年に発表されました。日本では、社会思想社より85年に出版されています。
第1作目の『火吹き山』が、RPGの基本に忠実な、ダンジョンを舞台にしたものであるのに対して、第2作目『バルサス』は、要塞を舞台としたキャッスル・アドベンチャー、第3作目の今作は、舞台を野外の森に移してのフィールド・アドベンチャーになります。また、第4作目の『さまよえる宇宙船』ではSFを、5作目『盗賊都市』では、町を舞台としたシティ・アドベンチャーと、RPGの基本を一通り体験できるようになっています。このあたりのバランス感覚のよさが、ファイティング・ファンタジーシリーズが、常にゲームブックブームの中心にあった理由の1つであるような気もします。今作でプレイヤーは、ダークウッドの森を探索して、ドワーフの村より盗まれた『戦いのハンマー』を探し出し、森を抜けた所にあるドワーフたちの領地・ストーン・ブリッジへと届ける事になります。森の入り口には、高レベルの魔法使い『ヤズトロモ』の塔が立っており、ここで彼よりマジックアイテムを購入する事になります。第2作目『バルサス』にも似た設定ですが、これは金貨2枚とか3枚などの値段の付いた完全なアイテム扱いとなっており、プレイヤーは魔法の使えない戦士(あるいはレンジャー?)という事になります。またここで、いたずら心を出してヤズトロモに襲い掛かると、お約束ともいえる仕打ちが待っており、高レベルの魔法使い(彼には勝てない)という設定に、より深みを持たせるようになっています。ゲーム自体は、実はシリーズ中でもかなり簡単な部類に入ります。閉鎖的な迷宮と異なり、オープン・フィールドということもあって、どこか牧歌的でハイキングのような雰囲気ももっています。森の入り口には、お約束とも言える左右の分岐看板とカラスがとまっており、彼にどちらに行ったらよいかアドバイスを貰うところから冒険が始まります。設定では、昼なお暗く木々が鬱蒼と茂る迷いの森なのですが、迷路の構造がシンプルなので(2~3本くらいしか分岐がない)、迷うはずもなく実にあっさり風味です。登場する敵も、ホブゴブリン、オーガー、半魚人、猿人、盗賊などと、基本に忠実な感じです。またダークウッドの森を抜けた後、森を迂回してヤズトロモの塔に戻れる迂回路があるという設定のため、(生命力が残っていれば)何度でも挑戦できるシステムになってますので、それがより難易度を下げています。
私は、ゲームブックに関する思い出というと、寒い冬の夜に勉強するフリをして熱中した思い出だとか、土曜日の帰り道などにデパート内の書店によってどれを買おうかと迷ったりした事だとか、楽しげなイメージがくっ付いています。書籍という印象よりも、もっと楽しげなゲームソフト的なイメージです。そのため今でも、この手の本を見つけるとけっこう楽しげな気分になります。実際買っても、遊んだりはほとんどしないのですが、そのほんわかとした気分を感じるために、手に取っているのかもしれません。
◆ スーパーブラックオニキス
ゲームブック・スーパーブラックオニキス・東京創元社
2007-02-11 13:50:34 | ゲームブック
『スーパーブラックオニキス』は、1987年に東京創元社より発行されたゲームブックです。作者は、ドルアーガ3部作の鈴木直人氏。PCで人気だったCRPG『The Black Onyx』の世界をゲームブックで再現したものです。また同時期に、FC版でもスーパーブラックオニキスが発表されていました。
オリジナルの『The Black Onyx』は、CRPG出始めの作品ということもあって、純粋に戦闘を繰り返してキャラの成長を楽しむ、ほとんどイベントらしいイベントも無いWIZタイプのゲームでした。このゲームブック版では、物語性をもたせるためにオリジナルキャラの追加など、幾つかのオリジナル要素を加えてあります。その上でパーティを組んで街と迷路を行き来することができるなど、ゲームブックでは不可能だと思われるようなCRPGの再現も試みられています。写真は、MSX版『The Black Onyx』
物語は、呪われた町ウツロに赤毛の若者がたどり着いたところから始まります。ここには富と永遠の若さをもたらす秘宝Black Onyxが隠されており、町は司法官マサイヤによって管理されています。主人公は秘宝を求める探索を続けるうちに、町を覆う事件に巻き込まれてゆくことになります。オリジナル版のウツロの町には、領主や管理者らしき者は存在しませんでしたので、司法官マサイヤはゲームブック版の独自キャラになります。表紙にでかでかと登場する坊主頭の人物がそうなのですが、独自キャラのクセになかなか強烈な人物です。この人物がゲームの鍵を握り、ラスボス的な役割を果たす事となります。またオリジナル版では職業の概念がなく、全員が戦士のパーティで冒険をするようになっていました。今作では、盗賊、魔術師、僧侶からなるパーティを組むことになります。驚くべきことに、それぞれの職業ごとに性格の異なる3種類ずつのキャラが準備され、選んだキャラによってイベントが変化するなど、非常に凝っています。またダンジョンには何度でも入ることが可能で、前作ドルアーガ3部作でも使われた双方向の移動ができるようになっています。町と迷宮を往復して装備を強化したり、アイテム収集をするなどの、CRPGの要素をゲームブック上でできるだけ再現しようとしているわけです。
この凝ったシステムをどのようにして再現しているかというと、キャラクターシートにチェック表が備えられており(実に70箇所にも及ぶ)、どこかで何かを行ってフラグがたった場合に、チェックするようになっています。また同時に時間制限もあり、ウツロの町に入って20日間が経過してしまうと、マサイヤの野望が完了してしまうためゲームオーバーになってしまいます。そのためチェックシートにも、日にちを管理するカレンダーが付いています。前作ドルアーガでみせたゲームブックの限界に挑戦する試みが、さらに突き詰められた形で行われているわけです。そのため作者本人も、上級者むけだとわざわざことわっているほどです。日本製ゲームブックとしては、最も良く出来たもののうちの1つだと言えるでしょう。
作中の雰囲気も、オリジナル版とは異なった独特な世界観になっていますが、神秘性は失われておらず、なかなかいい感じです。これはオリジナルキャラ、司法官マサイヤが成功している事もあるのでしょう。現在遊ぶ場合ですが、当時ものをブックオフなどで手に入れることはなかなか難しいと思います。創土社より復刻が予定されていますので、そちらを待って入手されるほうが確実だと思います。
◆ バルサスの要塞
ゲームブック・バルサスの要塞・社会思想社
2007-02-10 22:08:59 | ゲームブック
ファイティングファンタジー第2段『バルサスの要塞』は、1983年(日本では85年)に発表されたスティーブ・ジャクソンの作品です。前作『火吹き山の魔法使い』の好評を受けるかたちで執筆され、要塞を攻略するキャッスルアドベンチャーと呼ばれる形式のシナリオとなっています。また新要素として魔法の概念が加えられています。
主人公(読者)は、魔法使いの若き弟子となって、ぎざ岩高地にある塔に住む邪悪な妖術使いバルサス・ダイアの要塞に侵入し、彼を倒す事が目的となります。今作の売りのひとつでもある魔法は、魔法点に応じてあらかじめ何種類かを選んでおくシステムとなっています。攻撃用の魔法の他、千里眼、浮遊、怪力など、どれが冒険に有効で必要なのか悩みつつ、持ってゆく魔法を選択することとなります。感覚としては、魔法のアイテムや御札、スクロールを選んで持ってゆくような感じです。舞台は敵の要塞で、主人公の目的は敵に悟られる事なくそこに侵入することですから、嘘をついて門番を上手くかわすなど、なるべく争いを上手に避けて進む必要があります。要塞の中庭を横切って(ここでも敵を欺く必要がある)、今度は要塞の中に入るために衛兵に合言葉を言わなくてはなりません。途中で敵にやられても、必ずそこで終わりというわけでもなく、牢屋に捕まってそこから脱出する展開になったりと、要塞という設定が上手く生かされています。また要塞内の図書館で調べ物をしたり、バルサス夫人の寝室に飛び込んだりと、要塞内での敵の生活を感じさせる描写もなかなか見事です。それ以外にも堀の真ん中においてある宝箱や、生きている干し肉などの罠も印象的で、こういう細かい世界観にこだわる設定というのは、海外作品ならではの部分だったと思います。
シティアドベンチャーの傑作『盗賊都市』(リビングストン著)や、この『バルサスの要塞』などで得た着想の集大成が、のちに『ソーサリー』として結実しているような感じをうけます。ソーサリー4巻『王たちの冠』は、最終ボスの要塞を攻略する話ですが、その原型をこの『バルサス』に見ることができます。余談なのですが、王達の冠では要塞内に傭兵たちの便所の描写まであって(ご丁寧に汚いイラスト付き)、そこは病気になったり気分が悪くなるトラップになっているのですが、そりゃ傭兵が居ればそういう設備は必ず必要だよな、と妙に納得してしまった覚えがあります。こういう本編とは直接関係のない、細かな描写が作品内世界にリアリティを与え、登場する生物にも実存感を与えたりするのでしょう。当時遊ばれた方には、お馴染みのヒドラやガンジーを倒すと、バルサス・ダイアとの対決となります。当時遊ばれた方のほとんどが、同じことを感じたと思うのですが、実はバルサス・ダイアは怪物ではありません。若々しく輝く、鍛え抜かれた肉体をもったモヒカンの妖術師なのです。表紙に大きく登場している彼は、実はバルサスではありません。雑魚敵としても登場せず、彼が一体何者なのかは作品中でも語られないまま終わってしまいます。このあたりの不思議な感覚も、海外作品独特のような気がします。
現在遊ぶ場合には、扶桑社より復刻版が発売されています。またFF初期作品で、かなり売れたためかブックオフなどでも入手しやすいと思います。日暮れとともに要塞に侵入して、夜明けとともにバルサスを倒す展開で、実はたった一晩の冒険の話です。そのため非常にコンパクトに纏まっていて、FFシリーズの中でも良く出来た作品の1つだと思います。
◆ ソーサリー
ゲームブック・ソーサリー・東京創元社
2007-01-28 13:31:18 | ゲームブック
『ソーサリー』は、1983年~85年にかけて発表された4部構成のゲームブックです。ゲームブック第1人者スティーブ・ジャクソンの作品であり、彼の代表作というだけではなくゲームブックの最高傑作と言われる事もあります。日本では、東京創元社により85年に出版されました。また最近になって創土社より復刻版も発売されています。
85年といえば『スーパーマリオ』の大ブームにより、一般的にもファミコンやゲームが認知され始めた年でした。前年84年にゲームブック第1弾の『火吹き山の魔法使い』も出版されて、ゲームブック的にも盛り上がっていた頃だったと思います。『火吹き山の魔法使い』は、S・ジャクソンと、I・リビングストンという2人のゲームデザイナーによる共同作品だったのですが、それ以降の単独作品では、ストーリーや世界観に凝るリビングストンと、新しいルールや仕掛け・ゲーム性に凝るジャクソンという、2人の個性の違いがよく現れていました。例えばジャクソンは、FFシリーズ第2作『バルサスの要塞』で魔法を使うシステムを導入したり、『モンスター誕生』では主人公を自分の意思で操れない怪物にしたりといった具合です。もう一方のリビングストンは『盗賊都市』や『死の罠の地下迷宮』など、世界観を表現する事に重きをおいた作風でした。
冒険の始まり魔法使いの丘、割とオーソドックスな作り。
盗賊都市と並ぶインパクトを誇る城塞都市カーレ。
急展開をみせる七匹の大蛇。
パラグラフ800項を誇るクライマックス王たちの冠。
本作はジャクソンの最高傑作と呼ばれる事もあり、物語もシステム的にも凝りに凝ったものとなっています。まず1つには、4つのシナリオを横断してゆくキャンペーンと呼ばれる形式をとっています。主人公は第1巻『魔法使いの丘』で旅立ち、『城塞都市カーレ』を抜けて、途中で敵の諜報員である『七匹の大蛇』を阻止して、『王たちの冠』で敵の要塞に乗り込む事となります。これらひとつひとつが、一冊のゲームブックに匹敵するボリュームを持っていて、それぞれフィールドアドベンチャー(1巻)、シティアドベンチャー(2巻)、スパイである7匹の大蛇を何匹倒せたかを競う追跡もの(3巻)、キャッスルアドベンチャー(4巻)と異なった形式のシナリオになっています。FFシリーズの標準的なパラグラフ数は400前後ですが、この『ソーサリー』は1巻(456)、2巻(511)、3巻(498)、4巻にいたっては(800)となっていますので、そのスケールの大きさが伺えます。
ある意味一番のインパクトを放つ、カーレの下水道に潜むスライムイーター。また本作の一番の特徴といえるのは、3文字のアルファベットを組み合わせた個性的な魔法のシステムでしょう。プレイヤーは、冒険前に戦士か魔法使いかの職業を選択します。魔法使いを選んだ場合には、冒険に出る前に魔法の書に目を通して魔法を覚える必要があります。この魔法は、ZAPとかGOB、WALなどの3文字の組み合わせからなっており、冒険に出た後では、魔法の書を見ることはできません。(秘密が漏れるのを防ぐため持ち歩けない) 意味のわかりやすい組み合わせならよいのですが、ほとんどは意味のわからない3文字の記号になっていますから、プレイヤーの理解度がそのまま主人公の魔法熟練度になるという、かなり画期的なシステムだったと思います。意地悪な事に、効果のない実在しない組み合わせも選択肢中に登場しますので、デタラメではなかなか通用しないようになっています。
これは、当時累計120万部のベストセラーとなったそうで、書店や古本屋などでも良く見かけました。個人的には、古本屋で入手してズルをしながら読み進める感じで、楽しんだ記憶があります。まともに遊んだら、4巻を通しての難易度は半端じゃなくありますので、当時悪戦苦闘された記憶のある方も多いのではないでしょうか。ネタばれになりますので詳しくは書きませんが、4巻ラストのトリックは目から鱗が落ちるような出来で、ゲームブックという枠を超えていたように思います。現在でも創土社より復刻版が発売されていて、携帯版やソーサリーリプレイを題材にしたブログなどもあるようです。古本屋でも結構見かけますので、もし見つけたら手にとって当時を思い出してみるのも良いのではないでしょうか。
◆ ドルアーガの塔
ゲームブック・ドルアーガの塔・鈴木直人/東京創元社
2006-12-17 16:49:54 | ゲームブック
これは、東京創元社より1986年に出版された、ゲームブック版の『ドルアーガの塔』3部作 (1悪魔に魅せられし者・2魔宮の勇者達・3魔界の滅亡)です。これはナムコの『The Tower of Druaga』(1984)を原作としたGB(ゲームブック)で、日本人GB作家の第一人者、鈴木直人氏によって書かれたものです。鈴木直人氏の最高傑作、あるいは国産GBの代表的な作品とも言われています。
原作の『The Tower of Druaga』は、ゲーム作家/遠藤雅伸氏の作品で、60階ものフロアーを持つドルアーガの塔を、各階の謎を解きながら攻略をしてゆくゲームでした。各階それぞれに隠された宝箱を見つけて、装備品を身に着けることにより主人公(ギル)が強化されて強くなってゆく、日本でのRPGの走りとなった作品です。基本的にゲーム内に謎のヒントは無く、プレイヤーは自力で謎を解いて、60ものフロアーをクリアする必要があります。
スライムなどが登場して割と原作に忠実な、悪魔に魅せられし者。
オリジナルキャラなども登場して、物語が加速を始める魔宮の勇者たち。
ある意味原作を超えた展開をみせる魔界の滅亡。このように原作は、壮大なスケールを持った難解な作品なのですが、このゲームブック版の凄まじいところは、GB内に(双方向に行き来できる)マッピング可能な60ものフロアーを再現してしまったというところでしょうか。(もちろんGBオリジナルのマップですが)。ギルを強化する為の各種アイテムも、原作のイメージを踏襲して再現され、(カイやイシターなど)原作のキャラもきちんと登場してきます。またGBという媒体のためか、主人公に絡むオリジナルの登場人物も設定されています。そのためオリジナルの謎かけがあったり、登場人物達と交渉をする必要などもあります。
私は、これをゲームブックブームが過ぎてしまった90年代前半頃に、古本屋で手に入れて遊んだ覚えがあります。(90年代中頃までは、ゲームブックは入手しやすかった)。さすがにサイコロを振りつつ遊んだのではなく、暇な時間に読み進めるといった感じでしたが、(それでもマップを書く必要はあったので)マップを書きながら驚いた記憶があります。とにかく、細かい所まで良く出来ているといった感想でした。GBオリジナルの物語部分も良く出来ていて、最後の方は結構惹き込まれてしまいました。読書百遍 ここのゲームブックのコーナーに詳細な解説とマップがあります。
ナムコゲームよりの移植ものゼビウス。ドラゴンバスターとワルキューレの冒険。カイの冒険もありました。今遊ぶ場合には、創土社より復刊の予定ですから、それを入手するのが良いでしよう。売れた作品なので古本屋でも結構見つかりますが、3冊同時に入手するのはなかなか難しいでしょう。(あっても有名な作品のため、直ぐなくなってしまうことが多いです)。また 勁文社より『ドルアーガの塔・外伝』というのも発売されていました。ゲームブックは80年代を感じさせる、ある意味必須アイテムですが、その中でも特にこれは、それっぽい空気をかもし出しています。
◆ アドベンチャーノベルス
アドベンチャーノベルス・JICC出版局(宝島社)
2006-11-30 04:05:10 | ゲームブック
これは80年代の中頃~後半にかけて、JICC出版局(現宝島社)より発行されていたゲームブックで、アドベンチャーノベルスシリーズです。題材にウルティマ(1~4)やゾーク(1~3)・アステカ・ウィル・夢幻の心臓Ⅱ・ザ・スクリーマーなどのPCゲームもの、エイリアン2・ゴーストハンターズなど映画原作もの、手天童子・バカボンなどの漫画原作ものなどを使ったゲームブックのシリーズです。シリーズオリジナル作品と思わしきものも含めて、30巻ほど出ていたようです。
ファイティングファンタージーを初めとする海外製のゲームブックは、もともとTRPGのソロシナリオをヒントに開発された為か、RPG色が強い本格的なものでした。国産のゲームブックは、そのようなバックボーンを持たない為か、どちらかと言うとアドベンチャーゲーム色(冒険小説色)の方が強かったような気がします。ゲームブックのブームに便乗して次々と作品が出版されましたから、小説家志望の作家さんが駆りだされるような事が多かったのかもしれませんね。これもRPG的な側面よりも、物語を読ませるという部分が強いシリーズでした。
ウルティマはともかく、ゾーク・ウィル・アステカ(太陽の神殿)・カーマイン・夢幻の心臓Ⅱ・スクリマー・帝王の涙(アビス2)というラインナップは、一般の方にはピンとこないかもしれません。これらは、当時の8ビットPCなどで発売されてたRPGやAVGをGB化したものなのです。当時の8ビットPCは、今のようにネットがあるわけでも、(たいして)仕事に使えるわけでもありませんので、おのずからホビー用途(ゲームですね)が主でした。それでいて20万~ほどするわけですから、一般の人がそうおいそれと買えるようなものでもなかったんですね。ですからこれらのゲームは、ある意味憧れの遊び(ホビー)でもあったわけで、その世界を間接的にでも体験できるこのシリーズというのは、当時はそれなりに意味があったのです。当時PC-88を持っている友達のところで遊ばせてもらっていましたから、そこそこ体験はしているのですが、やはり他人の家で長時間かかるRPGを解くわけにもいきません。ログインや山下章氏のチャレアベ等を見て、PCゲームの世界を少しでも体験したいという希望を、これらのもので補ったりしていたのですね。ちょっと今からでは想像もつきませんが、PCゲームというものが、それほど新しい遊びで輝いていた時期もあったのです。
このアドベンチャーノベルシリーズは、現在でも古本屋で新書(戦記物とかミステリーもの)の中に紛れて結構見つかります。(まずほとんど100円だと思います)。おやじ向きだからと、つい新書のコーナーはスルーしてしまいがちなのですが、注意して見てみると意外な拾い物があるかもしれません。
◆ トンネルズ&トロールズ
トンネルズ&トロールズ・社会思想社
2006-11-26 21:38:53 | ゲームブック
トンネルズ&トロールズは、1975年に米フライング・バッファロー社により発表され、日本では1987年に社会思想社より発売されたTRPG(テーブルトークRPG)です。ゲームブックと同じような装丁で発売されたので、同じシリーズにも思われがちですが、こちらはD&Dなどと同じく、本格的なテーブルトークRPG用のルールブックです。
これの一番の特徴としては、キャラ作成や戦闘ルールなどがかなり簡素化されていて、初心者でも遊びやすくなっている点でしょうか。(ゲームブックより、多少複雑な程度)。D&DなどTRPGは、基本セットでも5,000円~位しますので、結構高価な遊びなのですが、これは文庫本という形式で発売されていて、その意味でも入門用に向いていました。そのほかには、一人でも遊べるソロシナリオが多かった事でも同様ですね。また独特な日本語訳がついていて、魔法名の『これでもくらえ』、『まぬけ』、『猫目』など、こういった部分も(日本版)T&Tの特徴だったと言えるでしょう。
T&TのRPGシナリオベア・ダンジョン
追加ルールを収めたT&TのRPGシナリオ、モンスター!モンスター!
T&TのRPGシナリオ魔術師の島
ソロ・アドベンチャー傭兵剣士
ソロ・アドベンチャーカザンの闘技場
ソロ・アドベンチャーデストラップ
ソロ・アドベンチャー鏡の国ダンジョン
当時周りにTRPGをするような人がいなかったため、私は本格的には遊んだ事はなかったのですが、ソロシナリオをゲームブック的な感じで少しだけ遊びました。ゲームブックからの流れで、ブーム末期には上級者がこのようなTRPGに流れたようです。『ハイパートンネルズ&トロールズ』という拡張ルールが、日本で開発されて独自の進化を遂げたり、リプレイ集なども数多く出版されていますから、根強い人気があったのでしょう。
日本で作られたガイドブックT&Tがよくわかる本。こちらも日本で作られたハイパーT&Tのルールブック。また90年前後には、古本屋の100円コーナーにごろごろ転がっているような感じでしたので、一般的にも結構売れたのではないかと思います。(ほんとに良く見かけました)。90年前後は(今からは想像もできませんが)デパートのホビーショップでも、D&Dのルールブックやメタルフィギュアを見かけましたので、今と比べてもRPGに対する関心が高かったのだろうと思います。(アオシマ社からも、末弥ウィーザードリィのフィギュア等が出ていましたね)。
今でもわりとブックオフなどの100円コーナーで見かけますから、現在でも入手はそれほど難しくはないと思います。(シリーズを揃えようなどすると、大変ですが)。ただゲームブック等と同じく懐かしいと感じる人も多いのか、最近はあってもすぐなくなってしまうことも多いようです。
◆ 盗賊都市
ゲームブック・盗賊都市・社会思想社
2006-10-24 21:45:51 | ゲームブック
盗賊都市はイアン・リビングストンの作で、ファイティングファンタジーシリーズの5番目の作品にあたります。この作品はダンジョンでの冒険ではなく、都市を探索してゆくシティアドベンチャーと呼ばれる形式のシナリオになってます。
物語はシルバーストーン市にある盗賊都市ポート・ブラックサンドに潜入して、街に隠れ住む魔術師ニコデマスと面会を果たし、闇の魔術師サンバーボーンを倒す為に必要な情報を得て彼を倒すというものです。とは言ってもサンバーボーンとの対決はおまけ程度の扱いで、ページのほとんどが盗賊都市の喧騒を描き出すことに費やされています。タイトルどおり『都市』がこの本の中心であり、主題になっています。(直接主人公と対面する事のない)街の領主アズール卿の方が、街の住人の噂話などによってサンバーボーンよりも存在感(恐怖感)があるほどです。ダンジョンの通路が都市の街路に、部屋が住居に置き換わっただけで、基本的な形は変らないのですが、都市を舞台にすることによりそこに住む住人達の息遣いや生活臭のようなものが表現される事となり、迷宮物とはまた違った冒険を楽しむことが出来ます。中世ヨーロッパの古い都市を散策するかのような、史跡観光気分が味わえるんですね。そのためか、リビングストン作品の中でも人気が高く傑作と言われています。
例を1つ挙げて見ますと、物語を読み進めていくと気付くのですが、この街の周りは超える事のできない高い城壁で囲まれています。主人公は町に入るために門番をかわさなくてはなりませんし、衛兵から逃げる為に城壁によじ登ったりしなくてはなりません。ヨーロッパでも中国でも領主のいるような大都市には、城壁があって外部より遮断されているのが、ごく自然で普通なのだそうです。他民族などからの襲撃や侵略を経験してきた大陸ではそれが当たり前で、城壁というものが発達しなかった日本の都市は、(あちらの常識では)貝がムキ身のままさらされているような状態とも言えるのだそうです。(それだけ日本が安全だったという事ですが)。あちらの人が作ったRPGでは、ブラックオニキスでもウィザードリィでも都市は壁に囲まれていましたから、そんなところからも歴史や文化の違いに触れることができて興味深い気がします。(マイト&マジック、バーズテール、みな都市が登場するものはそうですね)それ以外にも街の広場でカーニバルが行なわれていたり、桟橋に奴隷船が停泊していたりと、中世ヨーロッパの世界観の中に引き込まれる仕掛けがたくさんしてあります。ファイティングファンタジーの中でも簡単だといわれる作品の1つですから、もし機会があれば(サイコロを使わずに)読むだけでも面白いかもしれません
80年代Cafe
https://blog.goo.ne.jp/80-cafe/c/abf28a57f9989a0d29d2774d39724b12
https://blog.goo.ne.jp/80-cafe/c/bef9ae444a8ee34f7c026d13a6cf58da
https://blog.goo.ne.jp/80-cafe/c/bef9ae444a8ee34f7c026d13a6cf58da/1
https://blog.goo.ne.jp/80-cafe/c/ef779eb1a9cb81f398380f983c0f3d6a/1
雑居空間
https://tawa-tower.seesaa.net/
https://blog.goo.ne.jp/tawa_tower/e/418f176cda4955bca1adb18636041714
腕の差はキャラでカバー(改)by楓
https://blog.goo.ne.jp/sddkaede/e/29428a9f783c25e7edc7dca052ac2abe
https://blog.goo.ne.jp/sddkaede/c/f3eb045ebf4910786b84d44fe1e42ec7
薙空間
https://blog.goo.ne.jp/nagi3374/c/ee39b80ee96f014ebc34757a1b3f78fe
https://blog.goo.ne.jp/nagi3374/c/d8a680089544193910d1447c9e9bb1b7







