2018.1
21年前のワープロ「書院」で2018年にインターネットをしたら、無間地獄に突入した (1/3)
ネット機能を搭載した21年前のワープロで、2018年のネットの世界を見てみました。
[辰井裕紀,ねとらぼ]
20世紀の遺産・ワープロ(ワードプロセッサ)。
文章の入力・編集・印刷ができるためPCが登場する前は大いに普及しました。
しかしPCが普及した90年代後半からは売り上げが落ち、とうとう2003年9月に全て生産中止に。
PCに負けた要因の1つがインターネットへの親和性の低さでしたが、
実は後期には、「ネット接続機能」を備えたワープロがいろいろと登場していたことをご存じでしょうか?
本記事ではその「ネットにつながるワープロ」を手に入れて、2018年のインターネットの世界を閲覧してみることにしました。
果たしてまともに見られるのでしょうか……?
当時28万円の最新機→2000円で入手
今回手に入れたのは、シャープが1997年9月に発売した、書院「セリエ MR-2」。
12.1型のDSTNカラー液晶(当時の業界最大)
フォト印刷対応400dpiカラーインクジェットプリンタ搭載
ブック型原稿も読み取れる着脱可能A4カラーラインスキャナー搭載
……など業界初の機能を搭載した意欲作でした。ちなみに重量は約8.6キロ。
当時は28万円(税別)した高級機を、ネットオークションからわずか2000円で購入した筆者は、実家の電話回線を使い、なつかしのダイヤルアップでのインターネット接続を試みました。
往年のマシン特有の、HDDの動作音とともに立ち上がる
メニュー画面。ワープロならではの選択肢がズラリ
こちらがキーボード。
エンターキーがなく、その役割を右下の「実行」キーが担うところで最も戸惑う
接続までには一苦労……
ただ、初期設定では、既に消滅している「infoweb」というプロバイダーのアクセスポイントに接続するようになっているため、
あらかじめPCから@nifty(アット・ニフティ)のダイヤルアッププランで一番安い「@nifty基本料金(250円)」プランに加入。
そのIDとパスワードを入れた上で、今でも生きているニフティのアクセスポイントに接続しようと試みました。
しかし、一向につながる気配がありません。
そこでサポートに連絡してみたところ、このワープロに搭載されたモデムは33.6kbpsのものですが、
ニフティだと56kbpsのモデムしか対応していないことが判明。
そのため、33.6kbpsのモデムに対応しているプロバイダーのODNに変更することに。
それでもつながらず調べてみたところ、実家は通常の電話回線ではなく、IP電話の回線になっていたことも判明。
そこで筆者は純粋なアナログ電話回線が使える知人宅へお邪魔し、再度トライ。
いろいろとあがいた結果、とうとうネットにつながりました。
SNSや動画サイトはどうなる?
そうしてつないでみたTwitterやFacebook、InstagramなどのSNSですが、残念ながらどこもページは表示されず。「iPhoneから送信」ならぬ「ワープロから投稿」の夢はあっけなくついえました。
続いて、動画サイトにも挑戦。しかし当然のごとく、YouTubeのサイトには入れず、どうにか入れたニコニコ動画やGyao、Dailymotionのサイトでも、一向に動画ウィンドウが表示されません。仕方なく「書院で動画」の夢も諦めることに。良い響きなのに。
ワープロでインターネットをやってみた
こちらはニコニコ動画だが、動画ウィンドウなどが表示されず
まともに表示されるサイトを発見!
どこかに正しく表示されるサイトはないのか……。
ならば昔からあるテキストサイトはどうか?
試しに、当時人気があって今も存在する数少ないサイト「バーチャルネットアイドル・ちゆ12歳」につないでみると……。
ワープロでインターネットをやってみた
画像の読み込みに時間がかかるも……
ワープロでインターネットをやってみた
おお!なんとばっちりと表示!
画像もテキストもきれいに読めています!
やはりネット黎明期から制作されていたWebサイトとは相性が良いようです。
同じく、当時のテキストサイトの代名詞的存在でもあった「侍魂」につないでみると、こちらはTOP画像は出なかったものの、テキストはレイアウト崩れもなく、問題なく読むことができました。
ワープロでインターネットをやってみた
TOPページ。
あの「侍」の画像は出ないが、表示はできた
ワープロでインターネットをやってみた
おお、テキストも読める
読めるだけでうれしい、この気持ちはなんだ
最後に、当サイト「ねとらぼアンサー」に入ってみましょう。
ちなみにねとらぼがオープンしたのが2011年4月。
さらにアンサーができたのは2017年4月で、まだまだ新しいサイトです。
そんなサイトが、21年前のワープロで映せるのかどうか……その結果がこれです。
……!
いけた……! 文字化けもせず、きちんと画像と文字が出ました。こんな身近なところに、21年前のワープロでもしっかり表示できるサイトがあるとは。明らかにレイアウトは崩れていますが、思わず感慨がこみ上げます。
記事を読もうとすると、やはり文字も画像も大きすぎてめちゃくちゃになっていますが、ここまで散々苦労してきただけあって、読める形で表示されるだけでもうれしくなってしまいます。
画像がデカく表示されすぎる
ワープロでインターネットをやってみてのまとめ
やっぱりページの表示速度は遅い
多くのサイトは入ることすらできない
入れても、かなりの確率で文字化けする
画像が出ない場合も多い
動画サイトに入っても、動画ウィンドウが出ない
Googleの通常検索と画像検索は使える
しっかり表示できるのは、昔のテキストサイトなど、数少ないサイトのみ
一言で言うと「まともなブラウジングはできません」。
しかし「21年前のワープロ」が今のサイトをどうにか表示しようとする姿が、けなげでいじらしく感じられます。
さらに、たまにキレイに表示されたときは、妙にうれしい気持ちに浸れることも分かりました。
ワープロならではの文書作成機能が豊富だった
おまけとして、ネット機能だけでなくワープロらしい機能もいろいろと試してみました。
辞書機能や表計算ソフト、ファクス、ハガキ・チラシ作成ソフトなど、当時の最新のソフトが並びます。
中には、質問に答えていくだけで定型文で文書を自動生成してくれる「自動文書作成」という、いかにも未来的な名前の機能もありました。
コレがマジカルファクス。画面にFAXがドーンと出る、ある種究極のGUI
出た、“はがき屋太郎”と“おしゃれ太郎”
「自動文書作成」は、このような文書をすぐ作れる
その名も「面白印刷」。ロゴ画像のドット感が良い
さらに、当時はまだインターネットと並立して存在していた「パソコン通信」の機能も。
NIFTY-Serveなどいろいろな通信先に接続でき、フォーラムごとにさまざまな情報交換ができるのが魅力でした。
パソコン通信は既に2006年にサービスを終了しており使うことはできませんが、今でもデモ使用ができ、当時の雰囲気を味わえます。
「パソコン通信」への接続ページ
このようなターミナル画面が出る
「ホビー館」に入る。各フォーラムのほか、有料クイズコーナーなどもあった
ワープロの電源を入れれば、今の画一化されたPCのOSにはない、メーカー独自の世界観が広がります。
PCではない、もう1つの選択肢が確かに存在していた時代。
デジタル家電の青春期とでも言うべき時代の香りを、今回は思い切り感じ取ることができました。
ねとらぼ
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1801/27/news005.html