[AI][議論] 10年後「生き残る仕事」「なくなる仕事」の境界線
10年後「生き残る仕事」「なくなる仕事」の境界線 今後においてもAIにできないことは何か?
2024/4/12(金) 14:02
「最近、スーパーのレジが無人化しているな」「問い合わせをすると自動応答で返ってくる」……。こんな機会が増えているのではないでしょうか。仕事は確実に省人化・AI化への道を突き進んでいます。研究者にもよりますが、近い将来には8割の仕事がAIにかわると予測されています。
人工知能研究トップランナーであり、経営者でもある川村秀憲氏の著書『10年後のハローワーク』より、一部引用・再編集して「これからの時代に取るべき選択は何か」を解説します。
■「AIが人類を超える日」は早まっている
唐突ですが、スーパーでお会計をする自分を思い浮かべてください。以前は、お会計は店員さんに商品を渡し、袋詰めをしてもらいながら支払いを済ませるのが当たり前の光景でした。ですがコロナ禍を経て、お会計はセルフレジで行う光景が、当たり前になってきているのではないでしょうか。
実際に、「2023年スーパーマーケット年次統計調査報告書」によると、セルフレジ設置企業の割合は全体ですでに78.2%にのぼり、いまなお増加傾向が続いています。現在一番普及しているのは、店員さんが商品のスキャンなどを行い、代金の精算をお客さんが行うセミセルフレジタイプですが、フルセルフレジの導入コストと比べると割高のため、これは将来のフルセルフレジ化に向けた過程と捉えたほうがよさそうです。私たちの生活に直結するところで、すでに省人化・AI化が浸透しはじめていることを考えれば、仕事においてはよりその波が大きくなることは間違いないでしょう。
AI研究の世界的権威であるレイ・カールワイツ博士は、2045年にAIが人類の知能と並ぶ、または超えるだろうと予想しました。これがAIを語るときによく出てくる「シンギュラリティ」という言葉の意味です。私は、この見方よりも早く到達するような気がしています。Chat GPTの登場など、近年の動きはそれを感じるに十分でした。完全に人間を超えていくかどうか、そうするべきかどうかは別として、AIの進歩のスピードが速まっていることは、おそらく間違いありません。AIの進歩と発展が、自分の職業・就職の機会を奪い、収入を減らし、生活をより「貧しく」してしまうのではないかと心配している人たちも、かなりの数いるように感じます。
これまでは、AIに何ができるのか、どこまで開発が進んでいるかなどのテーマが多かったのに対して、最近では、実際に企業でどのような取り組みが行われているか、さらにはそれによって組織や人事、採用のあり方がどう変わってきているかへと内容がシフトしてきています。確かにこうした状況のなかでは、AIがどのようなものなのか、そして今後の社会にどんなインパクトをもたらすかについて定まった考えがない方々が、強い不安感を持つことは無理もありません。なかでも、より深刻に捉えているのは、30代、40代を中心とした、いわゆる社会の中堅として活躍されている方たちだと思います。今後10年、あるいはもっと短い期間で社会が大きく変わっていくと予測し、行く末をより現実的に考えるならば、これからの自身の「食い扶持」をどうしていけばいいのかを気にしないわけにはいかないでしょう。
■10年後も生き残る仕事、なくなる仕事の境界線
では、実際に10年後の社会では、どんな仕事がなくなり、どんな仕事が生き残るのか。そして、どんな仕事が新しく生まれてくるのでしょうか。ひと言で結論を述べるなら、
仕事は「意思決定」と「作業」に分解され、このうち「作業」に関しては、相当部分がAIに取って代わられるとまとめることができます。
違う言葉で言い換えるならば、
「自分で何をするか決める仕事」は残り、「人から言われてやる仕事」はAIに取って代わられる
ともいえると思います。いまの自身の仕事、身の回りの人たちの職業と照らし合わせてみてください。同じような業界、領域でも、「自分で決めている人」もいれば「人から言われて動く人」もいます。意外なことに、それは現時点での収入や社会的地位とは相関していないこともあります。なかでももっとも影響を受けると考えられるのは、いままでは「高度な知的作業」とされてきた、なんらかのアウトプットをするポジションです。例を挙げるなら、
〇質問に答える
〇指示に従ってわかりやすい資料を作る
〇内容を要約する今後においてもAIにできないことは何か?
〇前例を調べる
このような作業は、飛躍的に効率化、あるいは「省人化」されていくはずです。私は大学生を教える立場ですが、学生のなかには将来プログラムを書きたいと考えている人もいます。私自身、小学生のころからプログラムを書き続けてきた人間ですので、そのおもしろさはよくわかっているつもりです。ですが、はたしてAIの時代になりつつあるいま、プログラマーやシステムエンジニアのような職業が今後も安定して継続し続けられるかについては、大いに疑問です。プログラムを書くという作業はAIにぴったりで、現状でも、有料版のChatGPT-4で相当部分は代替え可能です。従って、ひと月たったの20ドル(約3000円)で使える人工知能を大きく上回る仕事が、毎月何千ドルもの給料をもらってできることを証明しなければならなくなります。同じことがオフィスでデスクワークを中心とする仕事をする人、いわゆるホワイトカラーの現場でも続出すると思われます。そのなかには、社会的地位が高いと言われてきた医師や弁護士なども含まれます。
■AIはなにができて、どんなことができないのか
そんな近い将来において、人は何をすればいいのでしょうか? この問いは、「」という話と同じです。答えを述べれば、AIにはクリエイティブなことができません。より正確に言えば、意思をもって何をクリエイティブすべきかを決めることができません。膨大なデータを学習したAIは、ある指標のあとにどんな指標が続くのかを解くことに関しては、人間の能力を凌駕します。文章で言えば、ある言葉のあとに続くべき言葉をピックアップし、さらに前後の関係や結論と合わせて、何をどうすればいいのか、膨大なパラメータを調整しながら最適化していくことが可能です。しかし、AIに原稿用紙を渡し、「あなたの言いたいことを書いて」と依頼しても、何も返せないでしょう。AIを搭載した絵描きロボットに白いキャンバスを渡し、「君の好きなものを何か描いて」と指示しても、やはり何も描けません。いっぽうで、「筋肉質の男性が嵐のなかで敵をやっつけている場面を描いて」などと具体的に指示していけば、かなり要求に近いものを出してくるでしょう。いずれにしても、AI自体に書きたい、描きたいという欲求はなく、過去に学習したもののなかから「それっぽいもの」を持ってきてつなげることに長けているだけなのです。
もっとも、AIにも創造に近いことができるようになる可能性も十分にあります。なぜなら、人間が作る創造物においても、たとえばある作家が、あるストーリーと別のストーリーを組み合わせ、さらに別のストーリーの要素を加えて「いいとこ取り」した作品に対して、新しい作風として称賛が与えられることがあるからです。こうしたものまで創造と呼ぶのであれば、おそらくそれはAIにも可能なのだと思います。
■「属人化こそ勝ち組」の時代が到来
では、どんな人であれば職を失いにくいといえるのでしょうか。キーワードは
「属人化」
です。「その人」だから価値があると感じているものは、AIには入り込めない領域なのです。属人化している仕事は、思った以上にたくさんあります。アスリートやYouTuberなどの配信者はわかりやすい例ですが、そのほかでも理由はわからないけれどとてもおいしいチャーハンを作る町中華や、そこで腕を振るう親父さんの代わりは、AIにはできないでしょう。これまで善とされてきた「標準化」「マニュアル化」はAIが担い、悪とされてきた「属人化」こそが私たちが生き残っていく術となります。誰もがしている「勉強」で秀でることの価値が、相対的に減っていきます。それは知能が自動化、機械化されれば、努力の必要すらなく、しかも人がするより高いレベルで実現できてしまうからです。問題は、大企業や組織力の高い会社に入ったことで、仕組化の歯車のひとつとなって、属人化を排除する組織の文化や風土に慣れてしまった人が、
「自分は本当は何をしたいのか」
「なぜそれをしたいのか」
こういったことを明確にして、最後は自分の意思で決められるかどうかです。AI時代の到来が本当に問うているのは、「あなたならどうするのか」ということだと思います。それを考えるのは、いまがいい機会というよりも、AIの進歩スピードを考えると、ラストチャンスなのです。
川村秀憲 :人工知能研究者、北海道大学大学院情報科学研究院教授、博士(工学)
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最終更新: 4/12(金) 14:02
(C) Toyo Keizai, Inc.,
■コメント
('-')
学の有る人間がやっている職業はAIで出来ます。学の無い人間がやっている職業はAIには出来ない仕事が多い。かと言って10年じゃそこまで現在と変わらない。
('-')
AIはシェアを広げるだろうが、一方でそれに抗う人とのコミュニケーションを求める動きも同時に起きるから、どんな仕事もゼロにはならない。少し前に書籍が電子化されると紙の本はなくなると言われていたけど、そうはなっていない。レジも省力化されるだろうけど、有人レジも残るだろうし、むしろそこに価値をおく場面も出てくる。なんでも作用と反作用があって、一方だけが他方を全て食い尽くす分野は案外多くないのではないかと思う。
('-')
事務職です。
10年前にすでになくなる仕事としてあがってましたが、結局現存してます。
('-')
以前Abemaで見たのですが、タッチパネルや無人レジなど視覚障害者には大変で、外出するハードルが更に上がったと…今は健康でも何かしら身体に不自由をきたした時、人を介さないとできない事が日常にはたくさん転がっています。世の中は縮小すれど、なくてはならない仕事ばかりだと思います。
('-')
抵抗感のある年代が去っていった際にはガラッと変わりますよ。だって生まれた時から当たり前なんだから。書籍しかり、レジしかり、アナウンサーや書士業しかり。オペレーターは仕事スタイルが変わります。
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AIで産み出された富を公平に割り当てないと
強烈な格差社会→政情不安に繋がるだろうな。人間が単純労働から少しでも解放されて自由に生きられるようになったらよいが。
('-')
法や規制で守られている仕事が残ります、と言うか抵抗勢力としてAI導入をずっと妨害します。例えば薬の調剤などは何年も前から技術的には自動化可能なのにいまだに高コストをかけて人がやっています。
ダブルチェックのためにとか言い訳をしますが、それこそAIの得意分野です
('-')
医者だよね。
問診は、ほぼAIでいいかなって。顔色とか、その他の数値も測って渡した方が、大抵の医者よりもちゃんとする。医者として営業できるような法律に、最終判断時にAI判断をきちんと確認できるモチベーションを維持できる、みたいな、精神面を要件にしてほしい。
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おそらく海外のその分野の既得権益の弱い国が最初に導入し始めて成果を出して、日本に進出もしくは日本もなし崩し的に導入せざる追えなくなる流れになると思います。ただこの流れだと日本はそのシステムをお金を払って使わないといけなくなるので、日本が率先して導入して海外に売り込むくらいな方がいいと思います。遅くとも10年以内にはそうなってると思います。
('-')
高校生の時に買った山下達郎や吉田美奈子のアナログ盤を15年前まで持っていた。宅DJやっていたので、テクニクスのターンテーブルもあったけど、15年前にはMP3で繫ぐのが主流になってきたから、テクニクスは程なく生産中止になり、私も価値はなかろうと、アナログは全て棄ててしまった。萩尾望都や竹宮惠子の豪華版コミックスもあったんだけど、妹に売られてしまった。今、アナログブームや海外での山下達郎や萩尾望都人気で高値で取引されている。テクニクスのタンテも復活した。わざわざ面倒なアナログに価値を見出す流れはいつもある。
('-')
「チャーハンを作る町中華や、そこで腕を振るう親父さんの代わりは、AIにはできないでしょう。」
っという話はかなりアヤシイ。嘗ては、天ぷらやトンカツを上手にあげるのは長年の修業をした職人の名人芸が必要と考えられていた。ところが、油の温度を自動的に制御する装置が開発されたら特に修業を積んだ人でなくても見事な料理ができるようになって、「てんや」「かつや」の興隆に繋がった。 将棋や囲碁におけるプロ級の腕前も嘗ては長年の修業と特別な才能のみによってのみ可能な名人芸と考える向きもあったけど、今やそんなことを言う人は何処にもいない。属人化された名人芸とされていたものが実は人工知能が簡単に真似できるものであることが今後どんどん明らかになっていくだろう。
('-')
仰りたいことは分かりますが、町中華はAI以前に次の世代で成り手がいなくなるので無くなる気がします。高度経済期に買ってローンの払い終わった持ち家と子供が巣立って年金暮らしの夫婦が社員を雇わないで二人で回していけるのが町中華です。もちろん味も良くて多品種のメニューをお昼の混雑した時間帯でも回していけるのは人間しかいない気がします。天丼やカツ丼の特定のメニューを大量に作るのはAIでもできるかも。
('-')
AIには調味料の配合比は学習できるのかもしれないけど、熱量の追加減や寝かせの時間までを解析仕切るのは流石にはるか先の技術になるんじゃないかな。金属で言うと玉鋼を完全量産化したりダマスクス鋼を完全復元したり。
味でも、昔ナイトスクープであった感動回である突然死した主人のカオマンガイの味を再現するというものがあったが、調味料の配合はともかく、何をどのタイミングで投入し、どのような火加減で何分煮詰めるという細かい調整は人のセンス・判断によるものでした。なので、AIが普及する世になったとしても完全な物に仕上げ、判断し切るというのは必ず人の手が不可欠なのだと考える。
Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/f7f4b4259afc7f41470b87d8f3a5760904ab2e79
https://news.yahoo.co.jp/articles/919a88cd210ed214e2228501f13181e736fde047
https://news.yahoo.co.jp/articles/c6fea6d30f903aec06b798631ceadfd7f1674148&preview=auto
イラストレーターの4分の1と翻訳者の3分の1がAIによって仕事を失っていることが明らかに
27-04-2024 06:35:14
By タマいち
https://gigazine.net/news/20240426-ai-robbed-creator-job/
クリエイターの権利団体であるSociety of Authors (SoA)が、会員を含めたクリエイターを対象とした調査を2024年1月に行い、イラストレーターの4分の1以上、翻訳家の3分の1以上が生成AIによって仕事を失ったことがわかったと報告しています。
SoA survey reveals a third of translators and quarter of illustrators losing work to AI - The Society of Authors
https://www2.societyofauthors.org/2024/04/11/soa-survey-reveals-a-third-of-translators-and-quarter-of-illustrators-losing-work-to-ai/
SoAは2024年1月に、1万2500人の会員やその他の著者を対象に調査を実施し、787件の回答を得ました。調査結果によると、回答者の約22%が「仕事で生成AIを使用したことがある」と答えたとのこと。職業別で見ると、AIを使用したことがあると答えたのはイラストレーターの12%、翻訳家の37%、小説家の20%、ノンフィクション作家の約25%でした。また、イラストレーターと作家の約31%は「アイデアを出すために生成AIを使用した」と回答しています。
一方で、一部の翻訳家やイラストレーターは、出版社や発注団体から生成AIの使用を求められていることも明らかになりました。翻訳家の8%とイラストレーターの5%がクライアントの要望で仕事に生成AIを使用したと答えています。また、調査結果から、生成AIがクリエイターのキャリアに与える影響に関する懸念が浮き彫りになったとSoAは述べています。特に、生成AIの登場によって仕事を失ったり、仕事の価値が下がったりしているクリエイターのグループが報告されています。
イラストレーターの26%と翻訳家の36%以上が、生成AIによってすでに仕事を失ったと回答しました。さらに、イラストレーターの37%以上と翻訳家の43%以上が、生成AIによって仕事の収入が減少したと述べています。将来的な創作活動による収入への影響については、小説家は65%以上、ノンフィクション作家は57%以上、翻訳家は77%、イラストレーターは78%が「生成AIによって負の影響を受ける」と考えています。そして、回答者の86%以上が「自分のスタイルや声、容姿が生成AIの出力に模倣・再現されること」を懸念しているとのこと。また、同じく86%以上が「生成AIの使用が人間の創作物の価値を下げること」を懸念していたそうです。一部の回答者は、特にコピーライティングやコンテンツ制作の分野で、生成AIが人間の創作者に取って代わる可能性があると懸念を示しました。これにより、クリエイティブ業界の品質と多様性が低下することが危惧されているとSoAは指摘しています。そして、生成AIの規制の必要性、具体的には「著作権者の作品がシステムの開発に使用される前に同意を求めること」や「クレジットと補償を与えること」「生成AIシステムの出力にはそのようなラベルを付けること」などについては、ほぼ全員が賛成しました。
回答者の94%が、自分の作品が生成AIの開発や出力に使用される際には、クレジットと補償を求めています。また、95%が、そのような使用には同意が必要だと考えていることがわかりました。さらに、回答者の95%は政府に対し、同意・補償・透明性の確保のためのセーフガードと規制を導入するよう求めています。そして、オーディオ、ビデオ、表紙、イラスト、意思決定、編集、翻訳の支援に生成AIが使用された場合、出版社やその他の組織はそれを明示すべきだと答えたのは回答者の90%以上でした。また、回答者の97%が、消費者には透明性を求める権利があり、自分が読んだり見たり聞いたりしたものの全部あるいは一部をAIで生成したことを知らされるべきだと答えました。
SoAは、生成AIが一部の創作者にとって有用なツールとなる可能性がある一方で、同意や報酬、透明性の確保などに向けた緊急の行動が必要であり、クリエイターの権利を尊重すべきだと訴えています。また、AIの開発者に対しては、過去の侵害と将来の使用に対するクリエイターへの報酬モデルを構築するため、業界と協力するよう求め、人間の創造性と著作権を保護することを約束すべきだと述べています。
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タマちゃんのひまつぶし
https://1tamachan.blog.fc2.com/
AIに仕事を奪われる時代でも人間に残る、ある貴重なスキルとは(滝川徹 時短コンサルタント)
2024/4/15(月) 7:31
『細分化して片付ける30分仕事術 (滝川徹 著)』
AIに仕事を奪われる時代でも人間に残る、ある貴重なスキルとは
近年ChatGPT をはじめとしたAIの進化で、人間の仕事がどんどん楽になると話題だ。これから求められるのは、AIを使いこなすスキルであることは間違いない。AIを活用する人とそうでない人とで、仕事の生産性に大きな差が生まれるからだ。しかしもう一つ、多くの人が見落としている重要なスキルが一つある。そう語るのは時短コンサルタントの滝川徹氏。今回は、多くのスキルがAIに置き換えられる時代でも人間に残る、ある貴重なスキルについて、滝川氏の著書『細分化して片付ける30分仕事術 』より再構成してお届けします。
■AI時代に求められるスキル
ChatGPT(チャットジーピーティ)-4を使ったことがある人は想像できるかもしれないが、AIの進化がとんでもないことになっている。たとえば堀江貴文氏は著書『夢を叶える力:世界初? AI(CHATGPT)で99%書かれたビジネス書』(ホリエモン出版)をそのタイトル通り、99%をAIで書いたという。私もChatGPT-4を普段使っているのでわかるが、これは十分可能だ。試しにChatGPTで「タスク管理について、何か記事を書いてみて」と極めて曖昧な指示を出してみてほしい。それだけでそれらしい文章を書きあげてくれる。より具体的に指示をすれば、さらに良い文章ができ上がる。こうした結果を目の当たりにすれば、堀江氏が言っていることは誇張ではないことは誰にでもわかるはずだ。
もっと衝撃的な話をしよう。Google Xの元最高業務責任者であり、業界の最先端で働いてきたモー・ガウダット氏。彼によると、ChatGPT-4のIQはテスト結果で評価すると155にのぼるという。現時点で大半の人類よりも知能が高いのだ。
ちなみにアインシュタインは160だったとされる。しかも旧版のChatGPT-3・5より倍賢く、その更新はわずか数カ月。これから数か月で知能がさらに10倍になるとしたら? そのときこそ世界は大きく変わるとモー氏は指摘する。
では世界はどう変わるのか? AIの専門家たちの話を聞いていると、長いスパンで見れば楽観的に考えている人が多い。ターミネーターのような世界がこないとは言いきれない。しかしどちらかというと、AIが人間に代わり仕事をこなしてくれるようになり、人々は働かなくていい時代が来る。ユートピアが待っているというのが専門家達の見解だ。これは一見聞こえがよいかもしれない。しかし、生きがいの喪失などの深刻なリスクも想定されている。たとえば本や音楽、映画、アート全てにおいてAIが人間を凌駕し、何をやっても人間は太刀打ちできない。そのとき人類は何を生きがいにし、どう生きるのか―。我々は問われることになるというわけだ。しかし実は、そんな時代が来る前に訪れる大きな危機がある。それは過渡期にともなう大きな変化だ。AIを活用する人が、そうでない人々を置きかえる時代。多くの人が仕事を奪われ、とんでもないことになる。これが専門家の見解なのだ。しかもこの変化は2040年、50年の話ではない。むしろ2~3年以内に訪れるとされている。
たとえばChatGPT-4の10倍の知能をもつChatGPT-5がリリースされた世界を想像してみてほしい。現状でもビジネス書1冊を書き上げる知能を有するのに、そこからさらに10倍だ。AIを使いこなせるか否かで仕事の生産性にとんでもない格差が生まれる。これは想像に難くない。AIを使いこなせない人は失職する。このことも間違いなさそうだ。私でさえ、このことに恐怖を感じている。
ただひとつだけ、私が人より優れていて頼りになると考えているスキルがある。それは(タスクを)実行する力だ。
■実行力だけはAIに置きかえられない
いずれタスク管理もAIに任せられるようになるだろう。自分が抱えているタスクをAIに説明して、どの順番でどうこなしたらいいか教えてと言えば最適な順番で計画を作ってくれることはまちがいない。AIの進化により、タスク管理能力に差は生まれなくなるはずだ。一方、明確な差が生じるのがAIに提案された計画を実行する力だ。たとえばタスクAをこなせと提案されても、それを先送りしてしまえばいくら理想的な計画を提案されても意味がない。AIが先送りの衝動まで管理してくれるわけではないからだ。つまり、少なくともAIが人間の仕事の全てを置きかえる時代がやってくる前、すなわち過渡期に(AIを使いこなすスキルとは別で)必要となる重要なスキルのひとつは実行力となるはずだ。そういう観点で本書はこれからの時代を生き抜く武器になる。私はそう確信している。
【プロフィール 滝川徹・時短コンサルタント】
滝川徹 時短コンサルタント
1982年東京生まれ。Yahoo!ニュース・アゴラで執筆記事が多数掲載される現役会社員・時短コンサルタント。慶應義塾大学卒業後、内資トップの大手金融機関に勤務。長時間労働に悩んだことをきっかけにタスク管理を習得。2014年に組織の残業を削減した取り組みで全国表彰。2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。時間管理をテーマに2018年に順天堂大学で講演を行うなど、セミナー講師としても活動。受講者は延べ1,000名以上。月4時間だけ働くスタイルで4年間で500万円の収入を得る。著書に『細分化して片付ける30分仕事術(パンローリング)』『ちょっとしたスキルがお金に変わる「副業講師」で月10万円無理なく稼ぐ方法(日本実業出版社)』他。
(C) シェアーズカフェ株式会社
Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/f7f4b4259afc7f41470b87d8f3a5760904ab2e79
https://news.yahoo.co.jp/articles/919a88cd210ed214e2228501f13181e736fde047
AIによって台頭するのはデジタルに強い若者ではなく、凡庸な上司……「AIクソ上司」とはどんな上司か
2024/4/12(金) 10:17
AIが一般的なツールになると、ビジネスで幅を利かせるのはデジタルに強い若手社員。そう考えられがちだが、実は台頭するのは「凡庸な上司」という見方がある。はたしてどんな未来が待ち受けるのか? 「プレジデント」(2024年5月3日号)の特集より、記事の一部をお届けします――。
この先5年を待たずして、我々の職場に生成AIが入ってくる。そのために、仕事や組織の有り様が大きく変わる――。これはもはや疑いようがない事実です。生成AIを使って下準備をしてから仕事に取り掛かる時代が必ずやって来ます。「自分の職場にはまだ来ないだろう」というあなたの安心感は錯覚にすぎません。そう感じている人は、ITの普及によって自分のポジションが揺るがされなかったという自信があるのでしょう。しかし、それはITとAIの違いを正しく理解していません。ITは仕事ができる人の能力を上げました。それに対して、AIは普通の人の能力を押し上げます。ITを使いこなすにはある程度のスキルが必要ですが、AIは対話形式で使うのが簡単です。つまり全体の平均点を上げるのです。
ITが所得格差を広げたのに対して、AIには貧富の格差をなくす効果が期待されます。裏を返せば、みんなが平均的になっていく中で自分の価値を上げるにはどうすればいいか、ということに悩む未来が予想できるのです。生成AIの導入によって、すでに問題が生じているのはゲーム業界です。新しいキャラクターをつくる際、かつてはデザイナーがイラストを描いていましたが、いまは文章で生成AIに指示します。そこで出てきたプランの中から方向性が決まれば、さらに文章で指示を加えます。デザイナーやクリエイターの仕事は、AIのオペレーションになりつつあり、キャラクターをデザインする仕事が減っています。中国のゲーム会社では、デザイナーの給料水準が下がっているそうです。
■AIによって凡庸な上司が台頭する
これは決して対岸の火事ではなく、日本のホワイトカラーの職場でも同じ現象が始まっています。生成AIが得意とするのは、「調べること」「整理すること」「模倣すること」です。すなわち、現在のビジネスパーソンの大半が従事している業務内容で、生成AIがホワイトカラーの仕事の3割を奪うと言われる理由です。現在は、CopilotやGoogleのGeminiといった世界全般に通用するAIが一般的ですが、これから先は専門的なAIが普及していくでしょう。方向性は2つあり、ひとつは特定の業界に特化したAI。もうひとつは特定の会社の中だけで使えるAIです。後者はイントラネットの中身を学習していきます。そして報告書を書いたり提案をしたりする際、社内の独自のフォーマットに合わせたパワーポイントがたちまち完成させるのです。
実はこのことが、一般のビジネスパーソンにとって最大の脅威になります。これまでのITやDXでは、デジタルネイティブの若手社員が中高年を追い越していく現実がありました。しかしAIは誰にでも使いこなせ、あらゆる人たちの能力を底上げして平均化します。若い部下よりもITを苦手としていた凡庸な上司のほうが、成長スピードが速いかもしれないのです。またこれまでは、能力のある人が昇進して上司になるのが当たり前でした。しかし2020年代後半、社内に大量に登場し、私たちの未来を奪うラスボスとなるのは、生成AIをパワードスーツとして身につけた「AIクソ上司」です。パワードスーツとはマーベル映画のスーパーヒーローが着用する強化服のこと。そのアイテムによって常人の能力も強化されるのです。その理由を説明しましょう。社内の情報にアクセスする権限は、ポジションによって異なります。本部長のアクセス権限が一番強く、次が部長で次が課長というのが普通です。ということは上のポジションにいるほど、より広い範囲から学習したAIの知識を活用できるようになります。創業者が練り上げたノウハウも、実力ある先達が編み出した戦略も、ごく凡庸な上司が武器として使えるようになるわけです。その上司の中でも最初のアドバンテージを身につけるのに、仕事の能力は関係ありません。周りにいる同輩が新しい技術に尻込みする中で、先にAIに着手した者が力をつけていきます。X(旧・ツイッター)を当初から始めてインフルエンサーになった人たちはたくさんいますが、いまから後を追いかけるのは困難です。同じような先行優位性はAIにもあって、学習を重ねてあっという間に仕事ができるようになる上司が、導入初期には必ず現れます。こうして凡庸だった上司が、仕事への自信を強めていきます。
AIによる合理化で、企業はどうなるでしょうか。当然、生産性は上がります。しかし人間は社会的な動物で自分のポジションや役割にこだわりますから、AIの進化によって仕事がなくなる現実を受け入れられません。あたかも自分が重要な役割をしているかのごとく振る舞う状況が、必ず起こってきます。生産性が上がって職場の人数が少なくなっても、ポジションを減らさないためにブルシットジョブ(無意味でどうでもいい仕事)は増え、管理職ポストの数も変わりません。たとえばメガバンクでは、支店の統廃合によって支店長が減る代わり、法人取引を独立させた支社をつくって支社長ポストを新設したりしています。こうしたポジションに、今後は「AIクソ上司」が君臨することになるのです。
■企業はどんどん政界に似てくる⁉
管理職に必要な能力は、3つあります。「判断を下す力」「ビジネスに関係する人々(部下やステークホルダー)の能力・特徴を評価する力」「人を動かす力」です。AIは洞察や分析に長けているので、初めの2つは得意です。すると、こうした分野で力を発揮していた上司たちの実力は、AIの普及によって平均化されます。3つめの言語を駆使して人の心を動かす、いわば統率力はAIの苦手分野です。非論理的に他人の感情に訴える能力では、この先もずっと人間が上なのです。そこで勢いづくのは、文系のエグゼクティブでしょう。なぜなら、論理的・分析思考の理系能力をAIで補足できるからです。言語能力と統率力はあるけれど分析力や洞察力に欠ける上司は、AIによって強化され、非常に強力な上司になっていきます。会社の上司にもっとも求められるのは、つまるところ統率力であり、その源泉となる言語能力です。したがって、この分野を苦手とする生成AIが人間を支配することは、当面ありません。我々を支配するのはAIではなく、「AIによって強化された人間」です。上司が部下を支配する構造に変わりはないのですが、はるかに手ごわい敵になるわけです。これは、自民党の権力構造に似ています。実力者と言われる政治家をよくよく観察すると、特に舌鋒が鋭いわけでも、知性がほとばしっているわけでもありません。どんな人が上に行くのかというルールが見えないまま、何となく力を発揮して権力を握り、派閥の幹部になっています。企業においても、なぜあの人が偉いのか、腑に落ちない未来がやってきます。論理的ではない義理と人情の浪花節だったり、恫喝だったりを繰り返しながら序列が決まっていく、政界のような世界が広がっていくのです。簡単に言うと、生成AIによって武装した口先のうまい人たちが、出世する世の中になっていきます。国会答弁のうまい議員みたいな上司がビジネスの現場に溢れ、テレビの国会中継で噛み合わないやり取りを観てフラストレーションを溜めるような会社生活が、やってくる危険性があります。これからは居心地のいい職場が消えていくでしょう。昭和は生産性は低いけれども居心地はよかった。家族主義で、普通に仕事をしていれば成果も給料も上がったからです。それが転換期だった平成を経て、令和はまったく新しい時代になるのです。
■“イカれた経営者”はAIを凌駕するのか
「GAFAM(グーグル、アップル、メタ〔旧フェイスブック〕、アマゾン、マイクロソフト)」にテスラとエヌビディアを加えた先端テクノロジー企業7社を、「Magnificent7」と呼びます。こうした巨大IT企業の創業者は、いい意味で“頭のイカれた人たち”です。誰も思いつかない未来を発想し、普通の人の何倍も働いてイノベーションを実現します。凡庸な上司でさえ生成AIによって強化されるのですから、元から並外れた資質と能力を持つ人たちは、とてつもなくパワーアップされます。世界を支配するよりも世界を変えるほうに関心を持つ、いわば「イーロン・マスク軍団」の出現です。彼らこそ、「AIクソ上司」の対立軸です。この2つの陣営はどちらが勝つのでしょうか。私はどちらにも勝利の可能性があると思っています。
AIクソ上司が牛耳る世の中は、楽しくなさそうだし進化もなさそうです。未来は面白いほうがいいし、イーロン・マスク軍団には素晴らしい上司になる期待感があります。ただしイーロン・マスクやスティーブ・ジョブズの評伝を読んだ人なら、「こんなヤツの下で働きたくない」という暗い感想を抱くはずです。彼らは自分がデキるだけに容赦なくハードルの高い業務を部下に押しつけます。上司としては甚だ不適切なのです。生成AIの進化のスピードと物量を考えると、AIクソ上司軍団も相当なパワーを持つに違いありません。さらに、起業しても成功する人がごくわずかであることを考え合わせれば、勝率の低いイーロン・マスク軍団と安定した実績を上げるAIクソ上司軍団の戦いは、9勝1敗でクソ上司に軍配が上がるのではないでしょうか。
どちらにしても、明るい未来とはいえなさそうです。そんな中で一般のビジネスパーソンは、どうやって生き延びていけばいいのでしょう。生成AIは、世の中にすでに存在するものを学習します。映画『タイタニック』のシナリオを学ばせて、「プロットを現代の日本に変えて、同じような悲恋の脚本を作りなさい」と命じれば、簡単に作り出してみせます。それを検討して「前半15分から20分あたりに、ひと山持ってきたい」とコマンドを入力すれば、即座に修正してくれます。パターン化とマンネリこそが求められる『水戸黄門』のようなシナリオなら得意中の得意で、無限にシナリオを作り出せるでしょう。一方、AIに想像力はなくクリエイティブでもありません。大ヒットしたテレビドラマ『不適切にもほどがある!』のような、それまでなかった独自のコンテンツを生み出すことは不可能です。ここが、未来の大きな落とし穴になると思われます。クリエイターが新しいコンテンツを生み出せるのは、ある種の下積み時代があって学習を重ねてきた蓄積があるからです。ビジネスパーソンに置き換えれば、現在の40代や50代にはまだベンチャー精神の名残りがあるかもしれません。しかし、AIと共に育ってきた20代以降からは独創的な精神が薄れ、自分の頭で考える習慣がなくなっていくでしょう。独自に学ぶ機会さえ、失われていきます。長期的に見れば、文化の向上は2024年の段階で止まってしまうかもしれません。
■幸福な未来のためにいち早く経験を積め
現段階のAIはまだ見てきたような嘘をついたり、明らかな間違いを答えてきます。しかし嘘をつかれたかどうかの判断は、ある種の年季を積んだ人間でないと下せません。私の場合であれば、経済や経営戦略に関して生成AIが「こういう環境下では、この戦略をとったほうがいい」とアドバイスを出してきたとき、間違いかどうかを一発で見抜けます。この分野に関して、経験と知識の蓄積があるからです。本当に難しい問題や重要なテーマについて判断するのは、結局のところ人間です。前例がなかったり新しいことを、AIは苦手とするからです。生成AIのもたらす未来がユートピアではないとしても、AIを利用して幸せになる未来を描かなければいけません。ただ漫然と生きて、さまざまな経験を積まずにいると、テキストを入力してアウトプットされた回答を鵜呑みにする時代にのみこまれてしまいます。私も現代に若者として生きていたら、一日中スマホをいじっていたのではないでしょうか。そうなる前に、「ある種のスキルや知見を身につけるにはどうすればいいか」「いままでより5年早く成長するためにはどうすればいいのか」ということを真剣に考えるときが来ているのです。
こうした事情を踏まえたうえで、生成AIに仕事を奪われたくないビジネスパーソンは、どんな行動を取ればいいのか。私の答えはシンプルで、「一刻も早く生成AIを使ってみる」ことです。使わずに別の能力を上げていくことは、もう考えないほうがいい。望むと望まざるとにかかわらず、使うことが仕事の基本になるからです。生成AIには、いろいろな利用法があります。手始めとして、「新NISAはやったほうがいいですか」と質問してみてください。「この近所で美味しいラーメン屋を3つ挙げて」でもかまいません。たちまち答えてくれますし、回答の精度もこの1年ほどでかなり上がりました。年配の方が多く参加している講演会で、私は「とにかく一度、入力してみてください。どれだけ役に立つかが実感できます」と話しています。早く身につけるほど、アドバンテージがあるのですから。企業の経営者や役員など世の中を変えられる立場にいる読者の方々には、どう変えればみんなが幸せになるかを考える責任があると思っていただきたい。最後にこの点を、強調しておきたいと思います。
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鈴木 貴博(すずき・たかひろ)
経営コンサルタント
1962年生まれ、愛知県出身。東京大卒。ボストン コンサルティング グループなどを経て、2003年に百年コンサルティングを創業。著書に『日本経済 予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』『「AIクソ上司」の脅威』など。
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経営コンサルタント 鈴木 貴博 構成=石井謙一郎 イラストレーション=伊野孝行 写真=dpa/時事通信フォト
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最終更新: 4/12(金) 10:17
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宿題もリポートも生成AIが作った「正解」丸写し、教諭は嘆く「これじゃ無料の代行業者だ」
2024/4/30(火) 5:06
[生成AI考]第2部 悩める現場<1>
「これじゃ、無料の宿題代行業者が現れたようなものだ」東京都内の私立中高一貫校の英語科教諭(56)はため息をついた。昨年度の冬休み、中1の生徒に英語で日記を書く宿題を出したところ、現在完了形など教えていない英文法が使われ、ミスもない「素晴らしい英文」の日記が、何人もの生徒から提出されてきたのだ。生成AI(人工知能)が使われたことは疑いようもない。この教諭は「宿題は、英語を使う習慣を身につけ、文法の復習をしてほしいから出してきた。間違いを指摘されて学ぶことは言語習得には不可欠。生成AIが示す『正解』の丸写しから得るものはない」と嘆く。生成AIへの依存を強める生徒たちの実態を前に、この学校では春休みから英作文の宿題を廃止した。
国立情報学研究所の佐藤一郎教授(情報学)は「学習に後ろ向きな生徒は生成AIに頼り切りになり、思考力や創造力の育成が阻害される。学力格差が広がる恐れがある」と警鐘を鳴らす。
大学での影響はさらに深刻だ。龍谷大(京都)の野呂靖准教授(仏教学)は昨年7月、ある学生の発表したリポートに違和感を覚えた。日本語として誤りはないが、内容に具体性がない。挙がっていた参考文献の著者名は実在の人物だったが、書籍は存在しないものだった。学生に問いただすと、「文章にまとめるのが苦手で生成AIに書かせた」と認めた。野呂准教授は「拙くてもいいから、自分で考えて書くのが大切」と諭し、やり直させた。昨年春以降、全国の大学で、リポートなどで許可なく生成AIを使用した場合は不正行為として処分対象になりうるとの注意喚起が相次いだ。不正が発覚した学生の成績を下げたり、単位を取り消したりした例も、複数起きている。だが、露見するのは氷山の一角だ。東京都内の私立大学に通う2年生の男子学生(19)は、「興味がない必修科目のリポートは基本、生成AIに丸投げ。不必要な時間をとられたり、不完全なリポートを出して単位を落としたりしたくない」と悪びれる様子もない。
2022年11月にチャットGPTが無料公開され、急速に社会に浸透する生成AI。学校でも利用するよう求める声があがる。文部科学省は23年7月、小中高校向けのガイドライン(指針)を公表した。「一律に禁止や義務づけを行うものではない」としたことで、「学校での使用に事実上のゴーサインが出た」(都内の小学校教員)との受け止めが広がった。今年2月に開かれた文科省主催のシンポジウムでは登壇した大学教授が「AIを使える人と使えない人の格差が開く。教育の仕事は、一人でも多くAIを使えるようにすることだ」と訴えた。学校の情報教育を支援するNPO法人「みんなのコード」も「子供たちがAIに触れて、仕組みを理解することが欠かせない時代」として、学校向けの生成AIを無償提供したり、教員研修を開催したりしている。文科省は昨年度、生成AI利用の研究校に全国の小中高校52校を指定した。「生成AIに意見を求めたら、高齢者や妊婦など、生徒にはない視点が出て、生徒の話し合いが深まった」と評価する教員もいる一方で、「生成AIはすぐに正解を教えてしまうので、子供が深く考えなくなる」と戸惑う声も漏れる。
東京大の酒井邦嘉教授(言語脳科学)は「思考を深めるには、相手の意図をくみながら対話をし、自分の考えを揺さぶる必要がある。意図もなく文を合成するだけのAIで代替できるものではない。生成AIが本当に子供の思考力を育むのか学校は立ち止まって精査すべきだ」と訴えている。社会の様々な分野で生成AIの利用が急速に拡大している。利便性の向上に期待が集まる一方で、弊害も生じ、国民生活の場では戸惑いも広がっている。教育や行政、ビジネス、医療、スポーツの現場から、課題と対策を探る。
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最終更新: 4/30(火) 8:47
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■コメント
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学生の皆さんには物事の本質を考えてほしいです。教育で求められているのは「正解」ではありません。「学ぶこと、考えること」です。テストの点数やレポートの出来は後からついてくるものです。もし、正解を出すことを求められているのであれば、テストに参考書を持ち込んだっていいわけですから。
社会人になり、独り立ちすれば自ら考え、正解のない答えを出さなければならない場面がいくらでも出てきます。そのときになって「考えること」を始めても遅いです。そしてAIは正解を出すすことはしても、「考えること」は教えてくれません。ただ正解を出すよりも大事なことを学んで欲しいです。
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・生成AIは全く使わずに地頭を鍛えて判断、組み立てる人
・生成AIを補助的、精査に使用してコスト削減しつつ地頭で判断、組み立てる人
・生成Alがないと自分では組み立てができない人
この差はいずれ生涯収入にも響いてきそうだなと思う。別に便利なものを使うのは良いんよ。歩くのが面倒だから車使うし。辞書、図書館の専門資料で調べるのが面倒だからスマホで調べるし。多かれ少なかれ誰だって便利なものを使ってる。でも、できない、できなくなっても良いのかな?って思うわ。特に勉学、レポートって論理の組み立て訓練じゃん。大学で学ぶべきひとつをサボって、学校行く意味ある?自動車の教習所で、運転面倒だから自動運転の車しか乗りたくないみたいな。意味がわからんなと思う。それで社会に出たらアッという間に事故、使えない人だよね。
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技術の進化で、人類はまず単純な肉体労働から解放されてきた。その過程で人々の身体能力は衰えているが、一方で一部の肉体エリート(アスリートなど)は過去の人類では不可能だった身体能力を身につけている。一般ピープルは余暇の楽しみや健康維持のためにスポーツを行う人もいる。
これからは単純な知識労働からの解放が始まる。大多数の人々はそれにより基本的な知的能力が退化していくだろう。一方で一部の知的エリートはより高い知的能力を身につけていくのかもしれない。知的作業は少数の職業エリート層、趣味的に知的作業を楽しむ層、そしてまったく遠ざかってしまう層に分かれていくのかも。
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AIは積極的に使っていくべきかなと思います。
ただ、それを頼りにしていた子供達は、卒業後の就職先で『色々と使えない子』と、先輩達にバカにされる未来が目に浮かぶような。
『ゆとり世代』に似た、なんでもかんでもAI任せの『AI世代』でしょうか。
AIに修正させるのはいいと思うけど、文章の作成を全て任せるとなると、文章能力を得るんじゃなく、AIの使い方を理解しただけの、生徒を学ばせる目的が違うことになる。
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コメ主さんのご指摘はなるほど、と感じました。
この宿題や大学生の話にしても、「学ぶ」という意味やなぜ宿題が出されるのかということを理解できる人なら、生成AIを下手な使い方はせず、自分ですべき部分は自力でやるなどして力を付ける気もします。ただラクをしたいとか、簡単に今の価値観で特定の講義を不要と判断して手を抜くようだと、最終的な力の差になるのかもしれません。人はラクをしたい生き物なので、中高生くらいで自力で学習する意義を自覚するのはなかなか難しい気もしますし、そうなると学ぶ意義が理解できる一部の人と差がつくことはあり得る気がします。極論ですが、生成AI頼りの人だと生成AIで済み、人である必要もなくなってしまいますね。
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生成AIがあれば知識の底上げをするから格差は広がらないという意見もありますが、そのAIのアウトプットの評価をするのは知識です。
知識がないと嘘かホントか見分けがつかず、結果的にそれが格差になり得ます。
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今もそうですもの。
労働時間は制限される → 決められた時間で成果の出せる地頭の良い人が勝ち、出せない人は時間で補うことが許されない。→格差が補填されることなく拡大する一方。AIで宿題、も同じになるように思います。
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「知的作業は少数の職業エリート層、趣味的に知的作業を楽しむ層、そしてまったく遠ざかってしまう層」に分かれるのでは、近世以前の社会構成に逆戻りしているのと同じ。
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色んな意味での格差が確立されていくのが人類の未来かな、と思う。各自、底辺にはならないよう注意と努力が必要かな。。
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過去にネズミの楽園実験があったそうです。便利で不自由がない快適な生活。ネズミは全滅したそうです。現在の世界がまさにそれだと思います。そういう意味では昭和のほうがよかったかもしれない。カーナビがないから地図で調べ、ネットがないから辞書をひく。自分で調べて考えて、相談して、失敗して悩んでまた考える。疲れるし大変、手間も労力もかかる。でもそれが物凄く大切なことだと思います。
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ドラえもんの映画「ブリキの迷宮」の世界がもう近いのかもしれない。楽を続けた人間たちは衰えていき、ナポギストラー博士を筆頭としたロボット達に星を支配された。藤子・F・不二雄先生は21エモンと言う漫画でも「機械に頼り過ぎた結果、人間が原始人にまで退化した惑星」を描いていた。
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自慢じゃないけど、あちこちいろいろと歩き旅、もちろん鉄道、バスをも使うけど…動き回って土地勘とか、肌で覚えてきた身だから、最近の学生さんくらいの人たちはすぐ調べがち?、調べることは悪くはないけど、頼りすぎだと思う。口コミとか、SNS とか気にしすぎたり、…食べログとかもだよね?。こだわりっていうのが無くなったのかな?…とうとう生成AIに頼るというか?(^^;…みーんなのび太くん状態になっちゃうね。…ある意味怖いからね。…己の五感、六感?(^^;を大事に使っていかないと…ほんとにAIにとり憑かれる時代が来るかもね?…
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社会主義の世界ですね。
価値を平均化することで やる気ある人はやる気を削がれ、やる気ない人はさらにやる気を失い衰退し続ける。 AIがまさにそれ。 どうせAIにやらせた方が楽で便利だし早くできるから良いだろうと、誰も自分で考えてやる事は無駄だとやらなくなる。 そうすれば社会全体が衰退していずれ絶滅の道に進むことになる。
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いつの時代も変わらないと思います。勉強しない人間はしない。できない人間はできない。せこい人間はせこい。素晴らしい人間は素晴らしい。
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Universe25かい?
あの実験内容と結果を見ると、まさに現代人の行き着く先を暗示しておる…。ワシはあの論文を読んだ時、背筋の凍る思いじゃったわい…。
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universe25実験ですね。
ネズミの世界でも楽園の環境が与えられるとひきこもりや子作りをしないネズミが現れて最終的には全滅するという。しかも、同じ実験を25回行っても結果は同じ。残念ながら、日本人はこの実験の最終フェーズにいるのでしょう。
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私は研究者ですが、科学の業界や大学教員の間でも散々話題になっています。
ただ、皆口を揃えていうのは、今のAIは「超高度なヒトマネ」でしかなく、何も「考えて」いないため、それらしい嘘を平気でつく、という点です。
結果として本物の専門家でないと真偽が判断できず、「AIの言っていることが正しいかを判断できないとAIの回答を使えない」というのが通説になってきている気がします。
一方で、簡単な情報処理ならかなりの精度でこなしてくれるのも事実です。結果として、今の知的労働者の中でも高度なことをしていた人達はむしろ重要性が高まり、相対的に単純なことをしていた人達はAIが取ってかわられる、という二極化が進むものと思います。教育は、まさにそのAIが持っていない思考能力を育てるべきですが…ここに来て「正しい答えを書ければ良い」という日本式の教育の弱点を突きつけられているように思います。
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自分は50代です。インターネットが無い時代に学生時代を過ごし、社会人になって約10年ほど経過してから、インターネットが「使える状態」になりました。ですので、インターネットが無かった時代の情報収集の大変さは身に染みてわかっていますし、逆にインターネットの有難みもわかっています。
ただ知識や情報はネットから収集してもそれを活用するのは自分自身ですので十分にネットの利便性を享受すればいいと思うのですが、すべてをネットに任せてしまうと、思考自体を放棄することになり、気が付けば全く使い物にならない人間になっている可能性があるように思うのです。
自分の成長に繋がる使い方かどうかが問題と思います。取捨選択したうえで、一極集中して自分を育てている自覚がある人なら、こういう使い方もいいと思いますが、安易に使っているとしたら、自分の成長を放棄しているのと同じです。
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ワープロやパソコンの普及で文字を手で書かない人が増えたから、難しい漢字が書けない人は増えたと思う。携帯電話の普及で自宅の電話番号や住所ですら覚えていない人も多いのではないだろうか。それと同じようなもので、時代の変化。生成AIが社会インフラのようになっていくとすれば上手く活用できる人が生き残るし、生成AIとかの開発側に回る人は生成AIで答えを探すのではなく自分で答えを探すようになる。
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これは学校側が生成AIとの向き合い方のアップデートができてない例ですね
昔だとインターネットからのコピペが問題になってたのと同じです。
2,3年もすれば解決すると思います。
生成AIの使いこなしも今後必須なので生成AIを使ってもあまり意味がない宿題、自分で考えたり調べておかないと答えられない提出形式などのアップデートが必要です。
英語なんかは予習を宿題として板書と解説の時間を短くし、英作文や翻訳などは授業中に行うなどやり方はあると思います。
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教員ですが、生成AIの問題は校種問わずあります。私達はよほどの確信がない限り、不正をしたか尋ねることはないので、レポートなどを宿題で出すのは今後難しいと思っています。
だから書かせるなら授業内かな…と。たまに社会に出て生成AI使うことはあるから、学校でも…と言う意見も出ますが、それだと文章力が育たずAI使っても推敲できないんですよね。
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段々リアル星新一の世界になってきたね。
文明の力で楽できる所は楽をすることは否定しないし、確かに人類は楽をする、便利な生活をする為に様々道具や器具を発明開発してきた。
しかし、AI任せの回答や論文で、思考や知識を無くし、学力や学問を楽することが、人類の発展に繋がるのだろうか。
人類は楽をする為に努力や思考を重ね、新たな技術や発見をし、叡智を重ねる事でここまで文化文明を発展させてきた。
新たな技術や発明は積み重ねたその叡智の上にある。AIも人口知能などではなく、単なる膨大な過去データの統計結果でしかない。
AIによる回答や論文で楽をして、その場はやり過ごせても何の身にもならないし、その行為自体が無駄で非効率的だと気づかない思考力の無さが問題。
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