1990年3月3日土曜日

[ゲーム][MSX] キャッスルエクセレント

[MSX] キャッスルエクセレント
■STORY
むかし、マルガリータ姫という、それはそれは美しい姫がいた。
姫は姿だけでなくその美声も遠くの国に知れ渡っていた。
ところがある日、魔王メフィストに捕まりグロッケン城に閉じ込められた。
魔王は自分の歌人形にするつもりだ。
このことを知ったラファエル王子は、姫を助けるためにこの国にやってきた。
彼は背が低く、気も弱いが、全身の勇気をふるい起こし、魔王の城にいどむのだ。
城の中はまるで迷路。
いろんな色のトビラがあり、トビラと同じ色のカギがないと、トビラは開かない。
しかも魔王の手下達がいろんなワナをしかけてまちぶせているのだ。
負けるなラファエル! 姫を助けるのだ。
■もっと悩んで、もっと楽しい。
さて、今回はアスキーより”キャッスル エクセレント”の記事を書いてみようと思います。
ジャンルはパズルゲーム。
アクションパズルという分類になるのかな。
主人公ラファエル王子となり、捕らわれてしまったマルガリータ姫を全100部屋もある城から助け出すという流れのゲームです。
本作は前作”ザ・キャッスル”の続編というより、上位版というか高難易度版というアイテムです。
システム面の追加・変更もありませんし、物語背景も同じです。
ただ前作に比べると格段に難易度が上がっているという触れ込みです。
操作方法は、
十字キーの左右で移動、
SPACEキーでジャンプ、
F1キーで自殺、
F2キーでゲームオーバー。
F4キーでカセットにセーブ、
F3キーでカセットからロード、
Yキーがイエスで、Nキーがノー,
CTRLキーでゲームのスピードがアップし、
CTRL+GRAPHキーで更にスピードアップ
します。
・城内は迷路のようになっていて、各部屋にはさまざまな敵や仕掛けが配置されています。
・部屋のあちこちには扉が設置されていて、同じ色の鍵が無いと扉は開きません。
・鍵は一度使うと無くなってしまうので、先に進む為には多くの鍵が必要になります。
・部屋によってはエレベーター、ベルトコンベア、空飛ぶブロック、ゴンドラとコントローラー、バリア、不死身光線の設備があります。
・エレベーターで床と挟まれたり、針に突き刺さったり、空飛ぶブロックに横からぶつかったりした場合はミスになります。
・エレベーターでは、ブロック類や敵をつぶす事ができます。
・部屋を出入りすると、ブロックや敵の位置は元の位置に戻ります。
・鍵、敵、ブロック類などの数を変化させた時に、他の部屋に出入りすると、無くなった物の状態が保存されます。
基本的に倒せる敵は倒しておく事と、ルートの確保の為のブロック類の破壊は基本です。
またパズルが難しい部屋は、最終形を想定する事で大抵のパズルはクリアできます。
必要なブロック類を破壊した場合はすみやかにその場で自殺しましょう。
騎士たる者、過ちは死を以って償う必要があるのです。と、冗談はともかく、そのまま部屋を出てしまうと記録されるのでゲームが詰んでしまうから、本当に必要な処置なんですよ。逆に敵を倒した場合は、元の位置に戻れてブロック類の配置状態が変わらないのなら、すぐに部屋を出て記録しましょう(笑)
本作では水色と黄色以外の鍵は余りません。
他の4色の扉がどうしても開けられない場合は、どこかで取り逃しがあるという事です。
戻れる範囲ならいいのですが、ある程度進むと戻れない範囲も出てくるので注意しましょう。
中央画像の解法は、下から3段目の空飛ぶブロックから滑るように右の足場に着地すればいいのですけど、まだまだ序盤で始まったばかりだと言うのにコレです。完全に初心者殺しですよね(笑)
右の画像は、壷が落ちてきて間をおかずに処理を続けないとクリアできません。
無駄な動作の入る余地はほぼないでしょう。
って、この部屋の仕掛けは前作のザ・キャッスルでも見た記憶があります。

ドナドナを聴きながら






405号室
407号室
505号室
102にある普通にプレイしていたら絶対に取れないチェリーさん













804号室
1004号室
エンディング







■部屋と知恵熱とワタシ(欝)
管理人が悩んだ部屋を紹介します。一応今回通しでクリアした時の進行順に沿って画像を置いています。
画像は部屋に入ってすぐだったり、途中経過だったり、答え状態だったりとまちまちですが。一応参考にはなると思います。
部屋の表記方法はゲーム開始部屋を301号室とし、縦列+横列の順で記載します。左下の隅が101号室です。例えば1匹目の妖精の居る部屋は209号室と表記し、マルガリータ姫の居る部屋は1009号室と表記しています。
(※部屋番号の表記方法をスーパーヒントブックと同じ方法に変えました)
407号室: 1匹目の妖精を助けた後に青いエリアに入るのですが、ここがループ迷路になっていて大変でした。
中央右の大エレベーターに乗れば次のエリアに行けます。紫の鍵は2本持ってから進みましょう。
505号室: 青の鍵を取る為に、他の扉全部を開ける必要があります…。もったいないと思ったら負け(笑)
405号室: タイミングが全ての部屋です。この位置に入り込むという発想がなかなか出てこなかった…。
603号室: 壊すレンガと残すレンガ、このあたりからこの手合いの取捨選択が出てきます。
602号室: 個人的命名”フラッピー部屋”。この形を取れば、二段積みを維持しながら左まで金庫を運べます。
804号室: コントローラーがプーリーから見て最果てにあるので面倒です。何度もぐるぐると物を運ぶ羽目になります。
706号室: ゴンドラって結構力持ちです(笑)
707号室: この707号室と、同じ仕掛けのある809号室は入ったら必ずセーブを取ってバックアップをしておきましょう。
壷を小エレベーターに乗せて、それを足場にして上の扉に渡るのですが、その際必ず壷が壊れます。
即ち通り抜けられる回数が決められていると言う事です…。
808号室: フラッピー部屋その2。ブルーストーンならぬ金庫をドアの高さまで積みまくります。
806号室: フラッピー部屋その3。基本は402号室と同じだけど、今回は3列で同じ事をします。
904号室: ここもフラッピー。管理人はフラッピーの感覚が残りすぎているようです。中段のレンガや金庫を押し逃げすればOK
1004号室: 不死身光線を利用して、大エレベーターを使い天上の壁をすり抜ける…。その発想になかなか至らなかったです。

ドナドナを聴きながら
http://www.geocities.jp/galfned/castle/excellent.html








■マルガリータ姫! ラファエルが助けに参りました。
前作であるザ・キャッスルと比べると本作は難しいのか? 
と考えると、前作をクリアした記憶は確かにあるのですが、既に細かい部分を憶えていないんですよ。クリアし直さないと、この部分は語れそうに無いです…。
今回はエミュレーターのステートセーブ機能を使っているのでLifeが驚くほど有り余っているのですが、管理人は普通に実機でプレイすると序盤の106部屋の棘に全滅に近いぐらいのダメージを受ける事は確実です(笑)
1006号室は右側に4つの扉があり、一番右上がマルガリータ姫の居る1009号室の左の青扉、二番目が右側の青扉に続いていて、両方を通り抜ける必要があるのですが、右上の扉にどうしてもたどり着けず、無敵時間延長の小技を使い804号室から無理矢理無敵状態を引っ張ってきて針山を抜けました。
ここって普通にクリアできる方法があるのでしょうか? 
1004号室の魔法使いを潰しながらタイミングを取る…、というのならかなり運要素が強そうですが…。
某関西家電量販店J新電気のパソコンコーナーでの店頭デモでプレイした事がきっかけで、管理人は本作を知りました。
当時、その店に何度も通いつめプレイしましたが(店の邪魔だったでしょうねw)、結局クリアできなかったんですよね。
当サイトを開設して、ずっと本作キャッスルエクセレントの記事を書こうと少しずつ進めてきました。
本作は当時それなりに人気のあるタイトルでしたし、パズルゲームの中でも名作の誉れが高い作品だし。また当然ですが、当時クリアできなかったからクリアしたいという欲求もありましたし。
そのようなわけで、先日ようやくクリアできたので記事に着手できた次第です。
毎回忘れた頃にプレイしだして、詰まっては放置していたので、無駄にクリアに時間掛かりましたが…。
パズルは発想力勝負なので根詰めてやってもクリアできないんですよw
王子がジャンプする時の効果音が独特だったり、どこからどう見てもネコにしか見えない戦士は本作でも健在です。ずっとプレイしているとBGMに洗脳されそうになるというオマケも付いていますw
ブロック類をうっかりミスで破壊してしまい涙を流したり、迷路で延々とループさせられたり、休みの丸一日を使ってもパズルがクリアできなかったり。ネコに癒されたり…。とにかく知恵熱とうっかりミスとの戦いでした(笑)
初めてマルガリータ姫の部屋に入った時は興奮しました(※変態的な意味ではないw)。
 やっとクリアか! って喜び勇みましたが、そこからがまた大変だったのは言うまでも無いでしょう。姫への道程は果てしなく遠いのです。
エンディングで、いきなり八頭身になったラファエルさんと姫に、そんなに背伸びしなくてもいいのにと思いつつ眺めていると、何やら引っかかるメッセージが。
「魔王との対決はキャッスル2で」って、何なんでしょうね? これは?
続編への構想があったという事なのでしょうが、本作はそれなりに売れていたはずだし、どうして続編出なかったのでしょう? パズルのネタが出なかったのかな?
ネットで調べてみたところ前作のパスワードは”MOONLIGHT”だったようです。
で、今作が”STARLIGHT”。
だとすると次のキャッスル2は、きっと”SUNLIGHT”だったはず。
うん。きっとそうだろう。ファンタジーなんだし、月と星なら次は太陽でしょう。
最後に102にある普通にプレイしていたら絶対に取れないチェリーさんの事を少し。
前作ザ・キャッスルでは、全ての扉を開ける、とんでもなくゲーム性を破壊する効果のアイテムだったらしいですね。
今回のプレイ中にそれを知り、ちょっと気になったので調べてみました。
いろいろとやってみても柱の間に入る事ができなかったので、ラファエル王子のX軸のコードをサーチして無理矢理柱の間に入って取ってみたところ、今回もきっちりその凶悪的な効果は健在で、全ての扉が開いていました。
ここにチェリーを配置したのはいいけど、さすがに最序盤でパズルを放棄させるような危険物は取れなくしたのでしょうね(笑)
2012/3 第二版

ドナドナを聴きながら
http://www.geocities.jp/galfned/castle/excellent.html











1990年2月19日月曜日

[ゲーム] PC6001版「秋葉原宅急便」~雑誌『マイコンBASICMagazine』投稿ゲーム





[ゲーム] PC6001版「秋葉原宅急便」~雑誌『マイコンBASICMagazine』投稿ゲーム
マイコン BASIC Magazineより
1990年1月号
「秋葉原宅急便」作者:伊藤良哉
STAGE 1
一筆書きゲームをちょっとアレンジしたパズルゲーム。
秋葉原の宅急便の宅配員であるあなたは、カラーテレビをお客様の家に運ばなければなりません。
自分が通ったあとにはなぜかマキビシ「*」がまかれ、もどれない。 しかし、ルビー「●」を押している間はマキビシをまかないので、うまく利用しよう。
キャラクタは荷物を持つと赤くなり、配達すると白くなる。
STAGE CLEAR
全ての荷物を運べばクリア。
STAGE 2
なかなか難しい。全5面。
               
RetroPC
http://retropc.net/hashi/bm198806.html
http://retropc.net/hashi/hydlide.html
http://retropc.net/hashi/p6programs.html

コンピュータ情報







1990年2月10日土曜日

PC情報
ps/55Z
日本IBM株式会社
IBM PS/55Zモデル5530Z SX
32ビットコンピュータ
価格398000円

1990年2月3日土曜日

[ゲーム][Old Mac] Sargo Noidz(1990)~モノクロ・チェスゲーム




Sargo Noidz
by Lynda Fowler 1990
   
The Vintage Mac Museum
http://www.d4.dion.ne.jp/~motohiko/praxis.htm
http://www.d4.dion.ne.jp/~motohiko/bikaka.htm
http://www.d4.dion.ne.jp/~motohiko/maccricket.htm
http://www.d4.dion.ne.jp/~motohiko/atrain.htm


[ゲーム][Old Mac] SimEarthK(1990)~環境シュミレーション





SimEarth
MAXIS 1990
   
The Vintage Mac Museum
http://www.d4.dion.ne.jp/~motohiko/airborne.htm
http://www.d4.dion.ne.jp/~motohiko/maccricket.htm
http://www.d4.dion.ne.jp/~motohiko/atrain.htm

1990年2月1日木曜日

[ゲーム][Old Mac] Balance of Power(1990)~政治シュミレーション





Balance of Power
MINDSCAPE 1990
   
The Vintage Mac Museum
http://www.d4.dion.ne.jp/~motohiko/maccricket.htm
http://www.d4.dion.ne.jp/~motohiko/atrain.htm

1990年1月30日火曜日

[機器][pc] NEC PC-98HA(Handy98)〜不遇の国民機











[機器][pc] NEC PC-98HA(Handy98)〜不遇の国民機
不遇の国民機
今でも続いているシリーズですが、PC-9801シリーズというパソコンがあります。一時は国民機と呼ばれるまでの普及台数を誇ったのですが、現在は急速にシェアを失いつつあるようです。
そのPC-9801シリーズですが、同じ「98」であっても、微妙な違いによって名称が分けられているのはご存じでしょうか?
有名なところでは、PC-9801とPC-9821は別のシリーズです。ほかにもPC-H98シリーズなんていうのもあったりします。
そして、今回取り上げるのは、たった2機種しか発売されなかった「PC-98」シリーズです。
Handy98総合目次
■PC-98シリーズ
PC-98シリーズには、PC-98LTとPC-98HAがあります。LTはラップトップ、HAはハンディの意味です。これ以外にもXA、XL、GS、DOなどもありますが、どれも互換性が悪い機械です。ここらへん、NECが「PC-98」という名前を逃げに使っていた可能性が伺えます。LTの発売当時、まだパソコンは机の上でブラウン管に接続して使われるもので、携帯用にはポケコンが使用されていました。LTは、そんな「デスクトップ」の性能を液晶ディスプレイと組み合わせ、持ち運び可能にした意欲的な機種です。しかし、当時の技術では完全にデスクトップと互換のものを作るのは不可能だったようです。液晶は白か黒かの2値となってしまい、PC-9801シリーズとの互換性は、惜しいところで失われました。その後、このコンセプトは一般化し、ノートパソコンなどが作られるようになります。液晶技術も向上し、16階調を使うことで白黒ながらデスクトップ並の画像も扱えるようになりました。98LTはすでに過去のものです。
・・・と、そのとき。98LTの技術を復活させた商品が登場しました。98HAです。たしかにPC-9801との互換性は無いかもしれませんが、思いきって最初から2値しかない液晶を利用することで、さらなる小型化が可能だったのです。A4サイズがやっとだった当時のノートパソコンのなかにあって、98HAの大きさはさらに半分のA5サイズでした。そして、98HAはこの大きさを利用して、電子手帳の世界にまで戦いを仕掛けたのです。
■愛称は「Handy98」
良く言われるジョークで「Handy98は、まさにハンデを背負った98だ」と言うものがありました。先の話のように、98HAはLT互換機であり、PC-9801互換機ではありません。
98HA。写真からは大きさがわかりにくいですね。液晶部分の大きさが、葉書とぴったり同じサイズです。ご参考まで。今となってはもっと小さなパソコンも出ているのですが、当時としては驚異的な小ささでした。
ボディーカラーには赤と黒と白がありましたが、私は赤が好きです。外観についての詳しいことは、次回で扱う予定です。
98HAはCPUにV50を使用していました。V50は、当時広く使用されていた16bitCPU、8086のNEC互換品であるV30を、クロックアップや周辺ペリフェラルの内蔵等の形で改良を行ったものです。(ややこしいですが、ようは8086上位コンパチ)
V50にはシリアル通信回路なども組み込まれていたのですが、98HAではそれらの機能は使われず、ただ単純に高速化されたV30として使われていました。
小型化を売りとする機械で、なぜこの様な無駄な設計がなされたのでしょう?その鍵は「互換性」にありました。皮肉なことに、互換性が欠如しているとして人気のなかった98HAは、実は互換性を得るために苦労した跡がたくさんあるのです。シリアルポートもその一つで、V50内蔵の機能を使えばLSIの節約になるにもかかわらず、過去との互換性のためにわざわざ別の回路を用意しているわけです。
2018.11.26 追記
twitter で、V30 は 8086 互換品ではなく、上位互換ではないか、との指摘をいただきました。その通りです。V30 は 8086 上位互換で、いくつかの NEC 独自命令が追加されています。
PC-9801 シリーズは、発売当初は 8086 互換品を搭載し、その後より高速な V30 を搭載しています。インテルが 80286 / i386 を発売してからはそちらを使用するようになりますが、80286 / i386 には当然ながら NEC 独自命令は搭載されていません。このため、互換性を確保するために V30 も同時搭載する期間が長く続きました。
この記事が書かれた当時、PC-9801 はまだ「シェア No.1」のパソコンであり、ちょっと詳しい程度の人でも V30 が i386 などと非互換であることを知っていました。詳しい人なら知っているし、ここでの記事内容では V30 の詳細まで知る必要はない。そのため、当時はややこしいことは書かずに、「互換品」とだけ書いていたものです。しかし、記事執筆から20年以上が過ぎました。詳細を知る人が減った今となっては、今回の指摘はもっともなものです。そのため、ここに詳細を追記しておくものです。
時代の変化で、当時としては説明不要だった部分も補足が必要な場合があります。お気づきの場合はご一報いただけるとありがたいです。
互換性がない?
それでは、互換性がないというのは何のことなのでしょう?これは、先に上げたように、98HAの設計というよりは、HAの元機種であるLTが作られた時点での技術的な問題でした。当時の技術では、液晶に階調表示をさせることが困難だったのです。そこで、PC-9801では3ないし4プレーンが用意されていたグラフィック画面が、PC-9801では「青」を示すプレーンのみに削減されました。1階調だからこれで十分・・・との読みだったのでしょうが、これが非互換の悲劇の始まりです。PC-9801のグラフィック画面は、RGBを別プレーンとして、各々1bitで示す方式でした。表示する際には、これらの画面を重ね合せて8色表示となります。
 初期の機種では8色ですが、後には輝度信号Iを追加することで、16色表示も可能になりました。HAではこれをBのみに減らした・・・ということからもわかるように、この方式は色数の増減による回路・プログラムの変更が最小限ですむというメリットがあります。デメリットは、1ドットを変更するにもすべてのプレーンを操作しなくてはならない、という点です。98LTでは、さらに搭載メモリ量を減らして小型化を計るために、テキスト画面まで削除されました。PC-9801の大元であったPC-8001が、テキストモードのみのTK-80BSから進化したときに「互換性のために」テキストを残しながらグラフィックを追加して以来、NECマシンの特徴だった「テキストとグラフィックの混在」と決別し、画像をグラフィックに統合したわけです。これはこれで勇気ある決断だったのでしょうが、互換性という面から見ると最大の問題点です。グラフィックを使うソフトにはゲームが多かったので諦めるとしても、ゲームを除くとテキスト画面を使わないソフトというのはほとんどありませんでしたから。BIOSには疑似テキスト画面をサポートするコール・・・メインメモリ上にテキスト画面と同じメモリ構成を作り、呼び出し一発でグラフィック画面に反映させるコールが用意されました。これを利用すれば、最小限の改造でPC-9801用のソフトが動かせるはずで、ここでも互換性には気を使っていたのがわかります。しかし、現実にはこのBIOSコールはほとんど使われませんでした。
(とはいっても、98LTにVzやSE3などのエディタが移植されていたのは、このBIOSがあったからこそでしょう)
PC-98HA(LT)の悲劇はここまでです。画面の非互換。唯一にして致命的な非互換部分でした。これ以外には特に互換性の悪い部分はなく、内部のハードウェアを直接いじるようなプログラムも動きます。
■Handy98は何を目指したのか?
前回で98HAの問題点を数々指摘しました。しかし、けなすためにわざわざ古い機械を引っぱり出してきたのではありません。98HAには、それなりにユニークな設計思想が読み取れるのです。
98HAは、当時流行していた「電子手帳」に対する、NECからの回答でした。シャープが先陣を切り、カシオが競争に火をつけたこの流行に、NECは完全に乗り遅れた形になりました。そこで、1から新しい設計の機械を作るよりも、すでに実績のある9801を気軽に持ち運べる大きさに収めてしまえ・・・というのが98HAだったのではないでしょうか。
(PC電子手帳 PC-ETというのもありますが、あちらはNECホームエレクトロニクスだと思いました。同じNECグループですが、別会社です)
そのため、98HAは電子手帳的なスケジューラーをROMに内蔵しています。さらに、内蔵こそしなかったものの、本体に標準添付でIC-CARD版のMS-WORKSが付属していました。また、そのフォルムもそれまでの「コンピューター」のイメージをくつがえすように、微妙な曲線を多用したデザインとなっています。
未使用時、蓋(ディスプレイ)を閉めたところです。大きな曲線がアクセントとして入っているのがわかると思います。また、左右部分はすこし膨らみをもった曲線で構成されています。(カメラの樽型歪みではありません)蓋部分手前には「HANDY98」というロゴが、(写真の状態では)上下逆に刻印されています。これは、使用時に使用者以外から正常なロゴが見えるようにするためです。(ソフトカバーにも同じロゴが入っています)また、実物を見るとわかるのですが、すべての角は大きく面取りされていて、一層98HAを曲線的なものに見せています。もち歩くことがカッコいい・・・そのカッコよさは、いわゆるビジネスマンの「格好良さ」ではなく、オシャレとしてのカッコよさです。98HAの目指す到達点は、どうもそこにあったようです。しかし、このような「カッコいい」携帯機は、時期早焦でした。当時はもちろん、いまでもこのような設計のマシンはあまり見かけませんし、ユーザーも求めていないようです。この記事を書いた1997年3月時点では、「曲線」や「色」にこだわることはパソコンとして依然珍しいことでした。その後、1998年夏の iMac のブームで、各社が曲線と色をデザインに取り入れようとしています。98HAは1990年の発売ですから、10年近くも早すぎたのでしょうか。
■Handy98の内蔵ソフト
98HAの電源を入れて最初に見る画面は、MS-DOSのプロンプトではありません。電子手帳を目指したパソコンらしく、カレンダーと時刻が表示されるようになっているのです。(当然、レジューム機能を使用すれば別の画面から始められます)この画面は「Handy98メニュー」と呼ばれるもので、ここから各機能を呼び出せるようになっています。MS-DOSへもここから行くことが出来ますが、その話は後にしましょう。Handy98メニューの画面。画面右側に大きなカレンダーが、その上には時計がある。カレンダーにはスケジュールのある日を示す機能も付いている。左側にはファンクションキーで何が出来るかの表示が並ぶ。F1でスケジューラー、MS-Worksが使用できる状態ではF2でWorks起動、F3でWorksのRAMドライブへのインストールとなっている。F10はMS-DOS。Handy98メニューには「スケジューラー」機能がついています。(実際にはこの機能は別ファイルとして提供されていますが、画面デザインなどは統一されており、使用者には違和感なく使えるようになっています)
このスケジューラーは当時の電子手帳に比べれば遥かに優れたものでしたが、パソコンのスケジューラーソフトと考えるとお粗末なものでした。1日の中を時間単位でスケジュール閲覧・書き込みをする機能を中心に、週単位、月単位でもスケジュールを確認できるようになっています。が、それだけです。「とりあえずダブルブッキングしておく」とか「長期に渡る計画を、期間で指定する」ような機能はありません。ただ、携帯パソコンの特徴を活かし、時間が来ると電源を切っていてもアラームを鳴らしてくれる機能が、優れているといえるかもしれません。98HAを特徴づける内蔵ソフトは、この「メニュー」と「スケジューラー」のみです。あとは「ROMに焼かれている」という意味で内蔵なだけで、98HAならでは、というものはありません。
■Handy98のMS-DOS環境
まずROMに焼かれたソフトの中でも特殊な位置付けである、システムメニューから紹介しましょう。このプログラムは98HAのBIOSに内蔵されており、特に禁止しない限り、CTRL+GRP+HELPのキーを押すことで呼び出し可能です。その内容は、実は単なるディップスイッチ設定です。当時の9801シリーズはディップスイッチでシステムの動作を切り替えるのが普通でしたが、98HAでは小型化のためにディップスイッチをメモリにもっているため、このような方法を取っているようです。ROMドライブにはMS-DOS3.1のフルセットが焼かれています。通常のMS-DOSのセットだけでなく、N88(86)-日本語BASICまで入っています。ただし、通常のBASICではなくBASIC(LT)と、最後に余分なものがついていますが(笑)(LT互換機なのであたりまえですが、BASICも9801との互換性は高くありません)
Handy98メニューから呼び出されるのは、MS-DOSの「メニュー」プログラムです。コマンドラインで使用するためには、さらにここからコマンドラインに降りなくてはなりません。メニューには良く使う機能が登録されていますが、特に「CONFIG.SYSの変更」と「AUTOEXEC.BATの変更」は、メニューに用意されたプログラムを実行しなくてはなりません。使いなれたエディタを使えないのは歯がゆいところですが、98HAではこれらのファイルがROMに焼かれていることを考えると、書き換えられるだけでもたいしたものです。どうやら、通常状態ではROMの内容を、書き換えられたあとではRAMの内容を読みに行っているようです。詳しい仕組はわからないのですが、そのために専用のプログラムが必要なのでしょう。漢字変換は悪名高い「NEC AI漢字変換」ではなく、その1つ前のバージョンである「NECかな漢字変換」が使われています。実のところAI漢字変換よりもかな漢字変換のほうが使い勝手が良いため、これは良い選択です。辞書はROMにもっていますが、ユーザー辞書や学習効果を記録するためにSRAMも併用します。
■MS-Works
98HAには標準状態でMS-Worksが付属します。これはMicroSoftがWindows普及前に力をいれていた統合化ソフトウェアで、専用のウィンドウシステムの上で、ワープロ、表計算、グラフ作成、データベース、通信の5つの機能を使うことが出来ました。IC-CARDに収められたプログラムは98HA用にカスタマイズされたものでしたが、ソフト自体は珍しいものではないので、くわしい説明は割愛します。
- Related Link -Microsoft Office 発売日 (1989)【日記 16/08/01】Handy98
■RAMドライブとメモリマップ
98HAはフロッピードライブをもたないため、フロッピー1枚分のRAMドライブを内蔵しています。このドライブは2HDまたは2DD互換で使うことが出来ます。また、RAMドライブを使用しない場合にはメモリをEMSメモリとして使用することも可能でした。ここで、98HAのメモリ構成をさぐっておきましょう。
まず、98HAがもつDRAMは全部で2Mバイト、SRAMは256Kバイト、ROMが2Mバイトです。
このうち、DRAMの640Kはメインメモリとなり、残りの1408Kのうち1280KはRAMドライブとなります。SRAMは96Kほどを漢字変換の学習メモリにつかい、残りの160Kをスケジューラー用に割り振っていました。最後にROMですが、漢字フォントに256K、漢字辞書に768K、ROMドライブに1Mが割り振られます。ただし、ROMドライブの一部(7ページ目)はユーザーからは見えず、BIOSとして使用されています。
これらのメモリのうち、メインの640K以外は、16K(ROMドライブは64K)ずつ区切られ、1MしかないV50のメモリ空間の上位アドレスに割り振られています。一度にアクセスできるのは16K(64K)づつなため、すべてのメモリをアクセスするにはIOポートを介してバンクを切り替えなくてはなりません。
ここで気になった方もいるでしょう。DRAMの余った128Kは何処へいったのか?これはシステムメニュー(どこでも起動できるディップスイッチ設定)が画面を破壊しないように、起動時に画面を退避するメモリになっています。実際にはシステムメニューを使用することはほとんどないため、間違えてメニューを起動しないように割り込みを殺した上で、デバイスドライバを作成してこのメモリをディスクとして使っている人も多く存在しました。(ハードウェア的には、RAMライブに連続して見えます)また、その場合は普段は見えないようになっている(ディスクイジェクト状態の)スケジューラー用メモリドライブをイジェクト解除し、併用する人も多かったようです。
スケジューラーメモリはSRAMで構成されているため、通常のRAMドライブと異なり、バッテリー切れでも内容が消えないのが魅力でした。(当時128Kのメモリカードは3万円程度はしたはずですから、本体内のSRAMが使えるというのは魅力的でした)
■疑似テキストVRAM
すこし流れからそれますが、LTとHAのBIOSにだけ存在する、「疑似TEXT-VRAM」を扱うファンクションの仕組を紹介しておきます。通常の9801では、テキスト画面はアスキーコードを格納するメモリと、その属性を格納するメモリにわかれています。1つの文字はこの両方からとられた1byteづつ、合計2byteで表示されます。このうち、属性bitは以下のようになっていました。
bit7-bit5カラー( bit7:G, bit6:R, bit5:B)bit 4バーティカルラインbit 3アンダーラインbit 2リバースbit 1ブリンクbit 01:表示 0:非表示
これに対して、98HAではハードウェアの制約でブリンク表示は出来ません。カラーも当然ありません。バーティカルラインとアンダーラインも用意されていなかったようです(これはハードの問題ではなく、BIOSサポートの問題)。結局リバース表示と、表示/非表示bitだけが残ります。
98HAでは、これらのTEXT-VRAMと同じ構成のものをメインメモリ上に確保し、アクセス後にBIOSを呼び出すことで画面上に文字を表示することができました。その際に、通常の9801では常に「表示」であったbit0を利用して、無駄な描画を省いています。その仕組は、一度描画した文字については、このbitを「非表示」にするだけです。これでBIOSを呼び出されたときに「非表示」のキャラクタを無視すれば無駄な描画はなくなりますし、文字が書き換えられたときは、9801の慣習にしたがってbitは「表示」にセットされるはずです。
98HAは、決して9801と非互換であることを良しとはしていなかった。その最後の証拠がこのBIOSファンクションの存在なのです。
■長々と書きましたが・・・
断片的な情報をすべて伝えようとしたため、今回は文章量が多めとなってしまいました。私個人としては、98HAを入手してしばらく持ち歩いていたものの、あまりにもデータ信頼性が無い(バッテリー切れでデータが消えてしまう)ために、最後にはROGUE専用機となっていました。いつでもどこでもROGUEが遊べる、というわけで、友人には結構受けましたが、結局のところそれゆえに大学の部室に置きっぱなし・・・という運命。電子手帳替わりに使うのには、ちょっと厳しかったようです。
参考文献TheBASIC 100号記念号(1991年9月号)1991技術評論社
(ページ作成 1997-03-02)
(最終更新 2018-11-26)   

魔法使いの森
https://www.wizforest.com/OldGood/98HA/
https://www.wizforest.com/OldGood/98HA/98HA2.html
https://www.wizforest.com/OldGood/98HA/98HAmem.html