2021年5月20日木曜日

[広告] YouTubeですべての動画に広告が入るようになる

[広告] YouTubeですべての動画に広告が入るようになる
諌山裕
2021年05月20日 15:56
YouTuberは広告を掲載することで収益を上げてきた。
動画に広告が入ることが、YouTuberの証でもあったわけだ。
それが変わるという。
YouTubeで「収益化していない動画」でも広告が出るように 
6月1日からの規約変更で / ねとらぼ
YouTubeが利用規約を変更すると発表しました。
これにより収益化していない動画にも広告が出るようになります。日本での適用は2021年6月1日から。
YouTubeは、YouTubeパートナープログラムに参加していないチャンネル、または収益化に関する契約を締結していないチャンネルを対象として、広告の掲載を徐々に開始します。この広告によるクリエイターへの収益分配は発生しません。
これまでは広告掲載のための要件があり、それをクリアした人がYouTuberと名乗ることができた。見る方は広告がウザイと思うが、広告が入っているということは、そのチャンネルは収益を上げていると認識できた。
収益化に関係なく広告が入るようになったら、どのチャンネルがYouTuberなのかわからなくなるね。広告が入るのが、ひとつのステータスにもなっていたように思うから、YouTuberとしては残念なのではないかな?
逆に、収益化していないチャンネルは、広告が入らないことがささやかな利点と考えていたのに、それが覆されるのは不満だろうね。
しかも、広告は無理矢理入れられるのに、収益分配はなしでは理不尽な気がする。
昔はパートナープログラムの最低条件がなくて、弱小チャンネルでもクリエイターの配分はわずかながらも発生していた。
すべての動画に広告を入れるのなら、昔の条件に戻してもいいのでは?
私のブログや管理するサイトには、Google AdSenseの広告を入れているが、アクセス数は少なくても毎月のサーバー代をまかなえる程度の収益にはなっている。
数千円程度でも、バカにならないんだよね。
Google傘下のYouTubeなのだから、AdSenseと同じような扱いにして欲しいと思う。
    
BLOGOS
https://blogos.com/article/577398/
   
   
   
   
   









YouTuberバブルはいつまで続くか?
諌山裕
2020年08月05日 14:52
ユーチューバー(YouTuber)といわれる人たちは、YouTubeで稼げている人たち。
YouTubeに動画をアップするだけではYouTuberとはいわない。そこは昔とは変わったところ。
というのも、昔はチャンネル登録者数の数に関係なく、広告掲載が可能だったので、人気チャンネルでなくても、雀の涙程度の収益は出せていた。
しかし、その後、規約が変更され、広告掲載が可能となる基準が設けられた。
チャンネル登録者が 1,000 人以上、かつ過去 12 か月間において総再生時間が 4,000 時間以上必要
この最低条件を満たさないと広告は掲載されず、収益化はできない。
これからYouTubeを始めようとする無名の一般人には、かなりハードルが高い。知名度で有利な芸能人が参戦するのは、易々とこのハードルをクリアできてしまうからだ。
小学生のなりたい職業ランキング1位となったのは、「YouTuberなどのネット配信者」だそうだ。
「YouTuberになりたい」と言われたら… 動画制作、リスクも学習効果も 保護者はどうする|学習と健康・成長|朝日新聞EduA
子どもが何かを「やりたい」と言ったら、応援してあげたいのが保護者心理ですよね。でも、「YouTuberになりたい」という夢はどう応援していいか分からないし、リスクも心配になるでしょう。
だから、保護者のみなさまには、子どもと一緒にYouTuberについて学んでいただきたいです。頭ごなしに「ダメ」と言うのではなく、どんなスキルが必要で、どんなリスクが伴うのかを一度話し合ってみてください。
YouTuberって、そんなに魅力的なのかね?
ある意味、ネットの芸能人的な扱いだから、人気者になりたいという意識なのかもしれない。
収益化の最低条件を満たし、広告が掲載できるようになっても、その単価はかなり低いので、相当な再生回数にならないと、まとまった収益にはならない。その単価はどのくらいなのかというと、公式には発表されていないので、諸説あるが……
(A)1再生数につき0.05円~0.1円
(B)1再生数につき0.3円〜2円
……といった情報が出ている。
チャンネルの人気度によっても格差があるようで、2つの説を合わせて考えれば、
最低条件クリア程度では、0.05円
超人気チャンネルになると、2円
という見かたができる。
この単価に、月間の再生回数を掛ければ、毎月の収益を概算できる。
つまり、人気が出れば出るほど収益は上がるが、人気がなければたいした収益にはならないということ。
0.05円で1万回再生されても、500円にしかならないからね。この程度では稼いでいることにはならない。
現在は、YouTuberバブルともいえる状況だ。
しかし、新型コロナ問題で、広告の出稿量は激減して、その影響はYouTuberの収益にも影響していて、増収にはなっているものの微増にとどまっている。
また、広告主側から掲載するチャンネルを限定する動きもある。さらに、視聴者をイライラさせる広告の掲載方法も問題視されている。たとえば、スマホの小さな画面では、広告は掲載しないというようなこと。内容がいかがわしい広告は以前から問題になっていたが、それらの規制も厳しくなっているようだ。
広告収益モデルは、好景気のときは広告を出す企業も多くなり、収益拡大が見込めるが、景気が後退すると収益が減る。その落差が大きいため、広告だけでは安定的な収益は望めない。
そこで定額制(サブスクリプション)を導入する。一定数の会員がいれば、収益の基盤として安定収益を得られる。YouTubeも導入している。
アプリケーションを提供してきた企業も、いまではサブスクが主流。昔は1本いくらで売りきりだったアプリだが、現在では年間契約のサブスクで、継続的にお金を取れる仕組みになった。
YouTubeを見るとき、広告はスキップできるものはスキップするのが通例だろう。つまり、広告をちゃんと見る人は少ないにもかかわらず、広告主は広告料を払っているわけだ。出稿する側からすると理不尽な話。
今後の展開としては、広告をスキップできないようにするか、サブスクだけになるか、あるいは両方の方向ではないかと予想する。TVCMのように、広告はスキップできず、広告を表示させたくないならサブスクに入る……という展開。
サブスクが主流になると、YouTuberへの分配額は減ると思われる。
音楽のサブスクなんかでも、かなり激安の価格設定だから、ミュージシャンへの分配は少なくなっているという。配信サイトによって価格設定は違うものの、おおざっぱにいって1曲の1再生で、約0.1円くらいらしい。YouTubeの安い方の単価といい勝負。
0.1円だと、100万回再生で、10万円になるが、これだけでは食べていくのは辛い。
そもそも100万回再生までいく動画は数少ない。
YouTubeがサブスク主体になると、稼げないYouTuberが増えてくる。
YouTuberバブルの崩壊だ。
YouTubeが営利企業である以上、儲かる方向に行くのは当然のこと。最低条件を設定したのも、収益を分配するYouTuberの人数を減らすためだ。広告の出稿が減少していくとしたら、次はサブスクに軸足を移していくだろう。そうなると、最低条件を引き上げたり、サブスクの分配単価を下げるなどの対処をしても不思議はない。
YouTuberバブルは、あと5年くらいかな、と予想する。
いまの子供たちが大人になるころには、YouTuberは稼げる職業ではなくなっているかもよ。
    
BLOGOS
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2021年5月19日水曜日

[ウイルス] JS/Agent.OZD

[ウイルス] JS/Agent.OZD 
JS/Agent.OZD
ESET Endpoint Antivirus 6
ESET Endpoint Antivirus 6では、コンピュータのセキュリティに新しいアプローチで取り組んでいます。最新バージョンのThreatSense®検査エンジンは、ご使用のコンピュータを安全に保つために高い速度と精度を実現しています。 その結果、このシステムでは、コンピュータにとって脅威となる攻撃とマルウェアを常に警戒します。
ESET Endpoint Antivirus 6は、弊社の長期にわたる取り組みによって保護機能の最大化とシステムフットプリントの最小化を実現した完全なセキュリティソリューションです。人工知能に基づく高度な技術は、システムのパフォーマンスを低下させたり、コンピュータを中断させることなく、ウイルス、スパイウェア、トロイの木馬、ワーム、アドウェア、ルートキット、およびその他のインターネット経由の攻撃の侵入を強力に阻止します。
ESET Endpoint Antivirus 6は、主に小規模ビジネス/企業環境のワークステーションでの使用を対象に設計されています。エンタープライズ環境でESET Endpoint AntivirusをESET Remote Administratorとともに使用することにより、ネットワークに接続されたのどのコンピュータからクライアントワークステーションをいくつでも簡単に管理し、ポリシーとルールの適用、検出の監視、クライアントのリモート設定が可能になります。

ESET 

[メンタル] ゲーム障害

[メンタル] ゲーム障害
ゲーム障害は臨床的に必要な概念なのか?――病理化、スクリーニング、モラルパニック - 山根信二/ゲーム学・デジタルゲーム研究 × 井出草平/井出草平 
SYNODOS
2021年10月29日 14:42
井出 先日、国立病院機構久里浜医療センター院長の樋口進氏が、ゲーム障害(原語はgaming disorder)を推定する学術論文を発表しました(以下、樋口2021年論文)【注1】。そこでは、日本の一般人口におけるゲーム障害の推定有病率は、男性7.6%、女性2.5%、全体で5.1%であったという結果が示されています。この論文に関しては、以前にシノドスで分析を書きましたので、そちらを参照いただければと思います(「ゲームプレーヤーを精神疾患にするディストピア――久里浜医療センター「ゲーム障害の有病率5.1%」論文のからくり」)。
本日は、ゲーム学・デジタルゲーム研究がご専門の山根信二先生と、この樋口2021年論文を検討したいと思います。具体的には、これまでゲーム障害という概念を推進してきた学者の論文との整合性を、2人でチェックしていくことになります。彼らの言っていることに矛盾はないのか、樋口2021年論文は以前の論文と比較してどう解釈できるのか。科学研究である以上、以前の見解が訂正されることは正常なことです。しかし、その場合、合理的な説明がされた上で見解の変更がされているのか、が重要です。
ネット依存症やゲーム障害の論文は膨大に存在しています。論文検索サイトのPubMedで調べると916本の論文がヒットします。もちろん、すべてを読んだわけではありませんが、われわれは比較的多く読んでいる研究者だといってよいでしょう。
山根 よろしくお願いします。確認なのですが、ゲーム障害の原語はgaming disorderですが、定訳はどうなる予定なのでしょうか。
井出 日本精神神経学会によって、精神疾患の日本語名称はすでに決められていまして、「ゲーム症」と翻訳される予定です。しかし、これまでゲーム障害という名称が使われてきたため、今回はゲーム障害というという用語を使いたいと思います。
ゲーム障害という言葉は、ネット・ゲーム依存症対策条例のときに一気に有名になりました。そのため、すでに精神疾患の診断になっていると誤解されているところもあるかと思います。しかし、ゲーム障害というのは、WHOの診断基準ICDのバージョン11に新しく掲載される予定の診断基準です。発効は2022年ですから、まだ発効していません。さきほど916本の論文があるといいましたが、ICD-11の基準にもとづいた研究はまだ少数です。
山根 今回の久里浜2021年論文は、ICD-11の発効前に発表されました。他の先進国はまだ慎重なところが多いなか、ICD-11で初めて導入されたゲーム障害という区分にもとづいて大規模調査が行われました。それゆえ、従来の論争で提起された問題をどのように乗り越えたのかが、世界的にも注目されています。
井出 おっしゃるとおり、世界初の研究ですから、日本だけではなく、世界からも注目が集まっている論文だと思います。
さて、ぼくが注目した論文は、2017年に書かれたベルギーの研究者ジョエル・ブリューらのものです【注2】。この論文はゲーム障害推進派のオールスターによって書かれているもので、樋口氏は第3著者です。この論文も、以下に何度も登場しますので、「樋口2017年論文」と呼称することにしましょう。ぼくは「樋口2021年論文」と「樋口2017年論文」の間に齟齬はないのか、検証していこうと思います。
山根 わたしは日本語文献も踏まえてお話したいと思います。樋口氏が監訳したキング&デルファブロの『ゲーム障害: ゲーム依存の理解と治療・予防』は、論争に参加した若手研究者によって書かれた学術書です。共著者の一人ダニエル・キングは樋口2017年論文の第2著者でもあり、この本は推進派の論拠をよくまとめています。
井出 世界的にみても、キング&デルファブロ『ゲーム障害』は、この分野の文献をしっかりとまとめた書籍という評価で、様々なところで引用されていますね。検証したいところは多くあります。ただ、すべてやっていると長くなっていますので、重要な論点に焦点を当てましょう。
山根 ICD-11にゲーム障害が収録される際に、国際学会で討論論文が何本も出版されました。そこで論点になった点と、『ゲーム障害』のまとめも踏まえて、下記の3点に論点を整理して検証していきましょう。
1.過度の病理化
2.スクリーニングテストの落とし穴
3.モラルパニックとスティグマ
井出 いずれも重要な点だと思います。では、過度の病理化から検討していきましょう。
1.過度の病理化
山根 過度の病理化(over-pathologizing)とは、もともと疾患ではないものまで疾患に含めてしまうのではないか、疾患を治療するメリットよりも、疾患ではない人を診断するデメリットの方が大きくなるのではないか、という問題です。「ここまではゲームに夢中なだけの健康状態」で「ここからは疾患です」と診断する根拠はあまり知られていません。
井出 精神疾患の診断というのは、症状だけあっても診断には至りません。たとえば、うつ病の症状が強くあっても、会社に働きに行って、生活にも影響がないのであれば、精神疾患とはいえません。うつ病の症状が強烈に出ていて、会社に出勤できるかというと実際は難しいので、現実には起こりにくいことですが、ゲーム障害といった新しいものを正確に捉える際には、精神疾患とは何かという原点に立ち返る必要があります。
この働きに行ったり、学校に行ったり、もしくは友人と遊びに行ったりという社会生活ができていなことを、社会的機能障害、機能障害といいます。精神疾患の診断は、症状+機能障害が基本形です。
ゲーム障害も同様です。たとえば、長くゲームをやっているとか、ゲームに夢中だというケースでも、学校に普通どおり通っていれば精神疾患ではありません。ゲーム障害と診断するためには、学校に行けないとか、会社に行けないとか、社会活動ができておらず、かつ、それがゲームによって引き起こされていることが明白である場合のみです。
機能障害というのは、生活が成り立っているかということですね。
山根 その論点は、邦訳『ゲーム障害』(p.123、142)でも、「過度の病理化」を回避するための手段が必要で、そのため機能障害が「中心的な基準」で「他の全ての基準より優先する」、という説明がされています。本書のこの記述は、樋口2017年論文を再確認したものですね。
井出 樋口2017年論文を要約すると、以下のようになります。すなわち、いままでの調査で使われていたスクリーニングツールでは、機能障害を調べていない。そのために有病率が高く出ていた。おそらく、ハードコアゲーマーなんかも入っちゃってますよ、と。だから機能障害をしっかりする必要がある。その鑑別をすれば、過度の病理化が起こることもないし、有病率が高くなってしまうことはない、といった説明です。
興味深いのは、樋口2017年論文で、高い有病率の悪い例として「5%以上」という数字があげられているんです【注3】。
山根 いや、でも樋口2021年論文の有病率は5.1%でしたよね。
井出 そうなんですよ。樋口2017年論文では5%は高過ぎる、といっていたのに、樋口2021年論文では、5.1%と報告しているわけです。
山根 4年間の間に世界的に有病率が上がったということは考えにくい。
井出 考えにくいですね。
山根 日本はゲーム障害の患者がとくに多い国なのだ、という可能性も考えられますが、それについては考察されていませんね。
井出 過去に日本でゲーム障害が多いという報告はありませんね。現在までのゲーム障害の有病率を比較した研究(メタ・アナリシス)では、国の違いや東洋・西洋による違いといったものもないと報告されています【注4】。
山根 とすると過剰診断をしている可能性が高いということになりますね。
井出 そのように思います。以前のシノドスの論考で5.1%という有病率を出すからくりを説明していますので、ご興味がある方はご覧いだければと思います(「ゲームプレーヤーを精神疾患にするディストピア――久里浜医療センター「ゲーム障害の有病率5.1%」論文のからくり」)。調査設計に仕掛けをして、ゲーム障害の人が多く見せかけたというのが実態です。
2017年の論文では、有病率「5%以上」は高すぎるといっていながら、2021年の論文では5.1%の有病率を報告しているのは、滑稽ではあるのですが、笑いごとではありません。WHOの診断基準ICD-11が実際に決まる前と後で、いっていることが180度変わったわけです。決まる前は過剰診断など起こらないと言っていたのに、決まったら過剰診断をさっそく始めたわけです。ICD-11は2022年から発効なので、今回の論文はフライングですが、今後ゲーム障害がICD-11から外れることはあり得ません。今は、ICD-11基準のエビデンスをどこの研究グループが先に出すかという競争の段階に入っています。ですから、しっかりと過剰診断に舵を切ってから、2022年を迎えるという意図があったと考えています。
2.スクリーニングテストの落とし穴
井出 いままでゲーム障害の有病率だ、ネット依存症の有病率だと発表されていたものは、厳密にいえば有病率ではありません。いわゆる、スクリーニングテストというものですね。有病率の研究手順は、簡単に示すと下記のような手順で行われることが多いです。
井出 とはいえ、この構造化面接というのは、一人ひとり面接をして、何十分、場合によって何時間もかかるため、ハードルが高い方法です。ですから、その代わりに、比較的現実的な予算で実行できるスクリーニングテストが用いられるわけです。
真実を求めるためには、予算をいくらかけてもよいというわけではありませんので、この辺りの妥協は必要です。スクリーニングテストの結果は、有病率というよりも、「リスクのある群」くらいの感じで受け取っていただけるとよいのかなと思います。もちろん、スクリーニングテストが無意味だというわけでもありません。
山根 はい、スクリーニングテストにはもともと誤診断の落とし穴があり、それを意識して使う必要があります。『ゲーム障害』第5章でも、これまでのスクリーニングテストには不適切なものがあると説明されていて、自己報告形式で矛盾した回答が出ること(p.140)や、テスト作成者の根本的な誤解(p.142)が指摘されています。
たとえばYoungのInternet Addiction Testという、これまで日本国内のネット依存の調査によく用いられてきたテストも、本書では問題のあるスクリーニングテストとして非推奨になっています。新しいスクリーニングテストを考案するに際しては、こうして過去のテストの残念なところを指摘して、批判的に乗り越える態度が必要です。
井出 そうだと思います。スクリーニングテストにも、性能のよいものもあれば、悪いものもありますね。スクリーニングテストの能力をしっかり測らずに使われるケースも散見されます。厚労省の委託を受けて、中高生のネット依存症が93万人という調査を、久里浜医療センターが過去に行ったことがありました【注5】。そのときに使われたのが、さきほど山根さんがいわれたYoungが作成した尺度で、Young’s Diagnostic Questionnaireというテストでした【注6】。
そもそも、インターネット依存症という精神疾患もなければ、診断基準もありませんから、スクリーニングテストの性能云々以前の問題です。ところが、インターネット依存症という精神疾患があるかのように、新聞でも報道がされてきました。
本来であれば、日本で行われたネット依存症は、尺度の性能以前に、精神疾患ですらなく、そもそも何を計測しているのかも不明だということを押さえておくべきです。しかし、93万人が中高生ネット依存症だと新聞が書いてしまえば、それを読んだ人は「大変だ!」と思っても仕方ありません。
加えてこの調査は厚労省が委託した調査ですから、政府の公式の見解ということになっていますし、政策のなかでいまも引用されています。一応、厚労省のいい分も書いておくと、もともと厚労省は飲酒や喫煙の研究を委託したつもりであったが、「飲酒や喫煙等」なので、それ以外のことも調査には含まれていて、インターネット依存症のスクリーニングテストを久里浜医療センターが調査に入れたのだそうです【注7】。記者発表では飲酒や喫煙を中心にしたものでしたが、マスコミが興味を示したのはインターネット依存症の推定値の方で、飲酒や喫煙についてはほとんど報道されなかったという経緯だそうです。
久里浜医療センターや樋口氏は、どちらにニュース・バリューがあるか、というのはおそらく分かっていたでしょうから、飲酒や喫煙といった問題の予算で行われた調査にインターネット依存症のテストを滑り込ませて、社会問題化して、今度はインターネット依存症やゲーム障害で予算を取っていくという戦略なのだと思われます。
リテラシーのない新聞にも問題はあると思いますが、久里浜医療センターや樋口氏はマスメディアの使い方をよく知っているので、わたしたち学者が適切な調査なのか、適切な報道なのかといったことをチェックしていく必要があるように思いました。
山根 今回はオープンアクセスの論文誌に査読論文が出版され、それにもとづいて議論できるようになりました。これはオープンな議論にもとづいて政策立案を進める第一歩になるのではないかと期待しています。
井出 いままで、久里浜医療センターと樋口氏らは学術論文を重視してきませんでした。久里浜医療センターの戦略はふたつあり、それらが両輪として動いてきました。
第一に、一般向けの本を書き、テレビなどのメディアに出て、社会にアピールをすることです。非常に精力的に活動されていると思います。第二に、厚労省に久里浜の人間を人事交流というかたちで送り込み、予算が久里浜医療センターに落ちるようしてきました。また、厚労省が委託する依存症研究を独占することで、日本政府の政策を久里浜が実質コントロールしてきました。これが久里浜の戦略です。
この戦略は他の学者にとっては突っ込みどころのない鉄壁戦略でしたので、非常に困っていたのですが、学術論文を書いてくれたおかげで、議論の俎上に載せることができるようになりました。
もちろん、わたしたちも学者ですから、アカデミックな方法で、久里浜の研究を検証することも可能になったわけです。そういった意味でも、今回の樋口2021年論文は非常に歓迎すべきことだと思っています。
では、今回の論文、樋口2021年論文で提案されているGAMES-testが、スクリーニングテストとしてまともかどうか点についていかがお思いでしょうか。
山根 スクリーニングテストの落とし穴に対策ができているかというと、失敗していると思います。井出さんもいわれたようにGAMES-testは「ハードゲーマー」をも「病的ゲーマー」として判定し、精神疾患と判定する欠陥があります。キング&デルファブロ『ゲーム障害』で示された基準からしても、不適切なスクリーニングテストだといえるでしょう。監訳者としてよい仕事をされたのですから、推奨されるスクリーニングテストをさらに推し進めてほしかった。
記事
SYNODOS2021年10月29日 14:42ゲーム障害は臨床的に必要な概念なのか?――病理化、スクリーニング、モラルパニック - 山根信二/ゲーム学・デジタルゲーム研究 × 井出草平/井出草平 2/2
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3.モラルパニックとスティグマ
井出 モラルパニックはとても重要な論点です。モラルパニックというのは、社会学者のスタンリー・コーエンなどが概念化したものです。
山根 定義の説明をするより、具体的な例を出した方が分かりやすいんじゃないでしょうか。
井出 そうですね。クロスワード・パズルってありますよね。いまでは多くの人に大人気のコンテンツというよりも、一部のコアなファンがいて、あるいは暇があったらするというような位置づけでしょうか。新聞に掲載されているので、うちの母なんかもときどきやっています。安定的な人気があり、社会に定着はしていますが、大人気コンテンツではありません。
しかし、クロスワード・パズルが登場した1920年代のアメリカやイギリスでは、誰もがクロスワード・パズルにはまって、廃人のようになり、社会崩壊すると、大きな社会問題になっていました【注8】。
クロスワード・パズルが社会崩壊を招く? そんなことが本当にあったの? と思われるかもしれません。しかし、モラルパニックというのは、後からみれば「そんなことで騒いでいたのか、よくわからんな」というものばかりなのです。
しかし、現代日本でのクロスワード・パズルの位置づけと、1920年代のイギリスやアメリカの認識では相当違いました。イギリスのガーディアン紙に掲載されたアラン・コナーの記事では、当時のクロスワード・パズルは、いまでいうと、ゲームのチートツールと麻薬が一緒に箱に入っているようなものだ、とのことです。この比喩は日本人の私たちには分かりにくいですが、ヤバイものだったというのは伝わるかなと思います。
山根 ゲーム開発者の国際カンファレンス「GDC」で、モラルパニックについての講演があったのですが、イギリスでは勤労を美徳とする教えが強いことで、レジャーを罪悪視したり、日曜日のスポーツを禁止するような気風があったようです。そして、モラルパニックは新しいレジャーが流行したときだけでなく、科学の新発見や新技術が登場したときにも起こっています。
井出 なるほど。そういう背景もあったわけですね。
モラルパニックの例をもうひとつあげようと思います。おそらく誰もが知っている史実である天動説と地動説の対立ですね。地球が太陽の周りを回っているのが地動説で、太陽が地球の周りを回っているのが天動説です。地動説を唱えたガリレオ・ガリレイへの弾圧は皆さんご存知だと思います。当時のモラルは当然ながら天動説が正しいというものでした。そんな中で、地動説というとんでもないことをいい出しているやつがいると。「けしからん! 締め上げてやる!」となったわけです。
これは信じられていること、この場合は宗教的な教えですが、そういったモラルに揺るぎが生じることによって起こるパニックが、モラルパニックといわれています。
山根 井出さんが天動節と地動説の話を例にあげられましたが、両者は科学的に決着がついたわけではなく、ある時期までは科学者の間でも決着がつかないんですね。ガリレオ・ガリレイは地動説を主張していましたが、その論拠はすべて正しいわけでもなく、天動説を主張する科学者もいました。つまり科学者集団にとってはまだ実証されていない仮説の段階であっても、社会としてはパニック状態を引き起こし、弾圧になりかねない。
井出 これは非常に重要な論点ですね。現代では、科学者と一般の方では論文や研究への接する態度が違うという論点とも通じると思います。科学者は、画期的な研究が発表されても、信じないといったら語弊がありますが、必ず間違っている可能性を念頭に起きながら、論文を読みます。
しかし、一般社会では白か黒かと正解を求められがちです。科学者は「ゲームが有害かどうか結論は出ていないし、いまだ論争中である」という認識をしています。しかし、一般的には、ゲームが有害らしいとか、ゲーム障害の人がたくさんいるとか、そういう情報に飛びついてしまっているわけです。
一般の方が悪いっていっているわけではありません。科学コミュニケーションといわれるもので、科学側、もしくは科学と一般の人たちの間に入る人たちが、ちゃんと説明しなければならないのです。科学者自身もモラルパニックが起きないように注意して、自身の研究を発表していくことが求められています。
山根 ICD-11によって起こるモラルパニックの論争については、『ゲーム障害』邦訳第9章でも論述されています(pp.263-266)。デジタルゲーム研究の分野では、「ゲームで青少年が非行に走る」とか「ゲームは銃犯罪を増加させる」とか、専門家の間で何十年も統一した見解をだせない(論争が終わらない)問題が繰り返しよみがえっては、世の中を騒がせてきました。なので仮説がモラルパニックを生む可能性には非常に意識的です。
井出 この論点は、日本とアメリカではゲームの社会問題化に大きな違いがあることも押さえておく必要がありそうです。香川県の条例のときの議論を思い出してもらえば分かるように、日本でゲームが問題になっているのは、部屋に閉じこもってゲームばかりしているようなケースです。ゲームと結びついているのは、不登校やひきこもりであって、非行ではありません。
アメリカでの社会問題化は大きく違います。日本と違いアメリカでは、デジタルのゲーム(ビデオゲーム)が登場してからほぼ途切れることなく、社会問題となってきました。とくに暴力的ゲームが暴力的行為を引き起こすのではないかという点が問題になってきました。
コロンバイン高校の事件が有名ですが、アメリカの高校では銃乱射事件が定期的に起きます。そういった青少年の暴力事件や銃犯罪にゲームが影響しているのではないか、と多くの人が疑っています。ゲームタイトルでいうと、DOOMやモータルコンバットといった、向かってくる敵を銃で射殺していくゲームですね。そういったゲームの影響を受けて、実際に現実世界でも銃の乱射をしたくなったのではないか、という批判がされています。
さて、モラルパニックという点で、樋口2021年論文の評価はいかがでしょうか。
山根 わたしは7月に樋口2021年論文が出たとき、国内メディアがモラルパニックを起こすだろうと予想しました。たとえば、発表された数字には統計的な幅があるのに大きい数字だけ一人歩きするような報道が出るんじゃないか、そうなったら解説を出そうとも考えていました。しかし今回は厚労省が発表したり、メディアが大々的にとりあげることがなかったので、うれしい誤算でした。
井出 いままでのパターンだと、久里浜は学術論文を書かず、記者発表をして新聞報道し、メディアに樋口氏が積極的に出演することで存在感をアピールしてきましたよね。ぼくもこの論文の存在を知って、すぐにメディアへのアピールが始まると思っていました。すぐに発表できなかった事情があるということは伝え聞いていますが、発表の遅れによって、樋口2021年論文とGAMES-testには問題があるという認識を厚生労働省も持つようになったようです。
山根 モラルパニックが過ぎた後に何が残るか、という話に移りましょう。『ゲーム障害』第9章では、モラルパニックが招くネガティブな副反応として、誤診断とスティグマがあげられ、それぞれに対する応答をまとめています(pp.264-266)。誤診断・過剰診断の危険性は先に触れましたが、スティグマについてはどんな被害をどれくらい産むのか想像しにくいですね。
井出 スティグマというのは「烙印」であったり、「汚名を着せるもの」の理解で良いと思います。概念が社会に広まる際には、様々に意味が変化したり、誤解が生じます。ICD-11に書いてあるゲーム障害の定義が正確に広まっていくわけではなく、ゲームをすると依存症になって止められなくなるとか、ゲームは麻薬みたいなものだとか、そういった言説が生まれます。
これは、岡田尊司氏がこういった本を書かれているので、すでにそういった言説は生まれているのですが、ゲームは害悪だとされたり、ゲーム愛好者は違法薬物でもやっているかのような扱いがされてしまうわけです【注9】。ゲーム障害概念の推進に慎重な学者はこのことを心配しています。
山根 はい、たとえゲーム障害の診断基準が確立したとしても、ゲームに熱中しているだけの子どもをみた親が、「うちの子は障害を持っているんじゃないか」という恐怖に襲われることが考えられます。それはゲームやeスポーツといった人間の活動に対するスティグマ化です。
井出 ゲーム障害は精神疾患ということですから、当然、治療をしようということになると思いますし、親は子どもがゲーム障害だったら治そうとするでしょうね。
山根 そしてスティグマ化の問題は、たんなる気持ちの問題ではなく、脅迫に使われたり、社会的に悪用されることにもあります。キング&デルファブロ『ゲーム障害』でも、スティグマ化について述べたあと、「残念なことに、これらの新しい分類を都合よく個人の目論見に利用しようとする動きも一部にみられるが」と述べています。つまりICD-11分類が悪用されて、利益誘導に使われる可能性を否定していません。
井出 この危惧はひきこもりや不登校の家庭で既に起こっていることだと思います。不登校の家庭では「学校に行きなさい!」となり、ひきこもりの家庭では「働きなさい!」となって、家族関係が悪くなり、そのことによって状況がより一層、困難にしてしまい、解決への道が遠ざかっている現状があります。
ゲーム障害があるか、ないかという議論をする方がいますが、これは問題の立て方を間違えています。ゲーム障害という概念が臨床的に必要な概念なのか、というのが正しい問題の立て方です。
ゲームに没頭し過ぎるあまり、治療が必要なくらい機能障害が悪化しているケースは実際に存在します。ゲーム障害という枠組みに該当する子どもや若者は存在します。しかし、だから、ゲーム障害があるんだ、存在するんだ、というのは、違うんですよね。
現象というのは多面的なものです。たとえば、大学に進学したものの、適応できず、授業に出なくなり、下宿にこもって、ずーっとゲームをしている、というケースのことを考えてみましょう。
教育的に捉えるとこの大学生は不登校です。また、ひきこもりという捉え方もできるでしょう。診察を受けてみると、じつはうつ病であったり、人と人との付き合いに恐怖を感じる社交不安症であったり、という可能性もあります。また、精神医学的なものではない、たとえば甲状腺機能が低下していて、抑うつ症状が生じているということも考えられます。そして、ゲームという面を捉えれば、ゲーム障害になります。
ゲーム障害は「存在」ではなく、私たちの「見方」や「捉え方」なのです。
繰り返しますが、ゲーム障害と捉えられる子どもや若者が存在しているかというと、存在しています。なぜわかるかというと、ひきこもりや不登校の相談機関や児童精神科に該当するケースの相談があるからです。
一方で、ゲーム障害という捉え方が必要なのか、問うと、あまり必要ではない、という回答になると思います。なぜなら、弊害が大きすぎるからです。
第一にゲーム障害と診断できるほど状態が悪いのであれば、不登校かひきこもりですから、すでに相談機関につながっているケースが多いのです。ゲーム障害という捉え方で相談はしていないでしょうが、別の捉え方、たとえば、不登校やひきこもり、うつ病や不安症といったかたちでの相談はしているのです。
キング&デルファブロは、ゲーム障害という診断名が広がることによって、精神保健の行き届いていない人たちにサービスが届けられるメリットがある、というわけですが、日本でそんな効果は生まれないと思います。
もちろん、誰にも相談していないひきこもりの家庭は存在しています。ただ、ゲーム障害という捉え方が導入されたからといって、親がいきなり相談をする気になる、というのは現実的ではない気がします。そういう親であれば、すでにどこかに相談していますから。
第二にゲームが原因となって不登校やひきこもりになっているケースは多くはありません。学校に馴染めず、家にいるので、ゲームをずーっとしているケースの方が一般的です。ゲームは原因ではなく、結果であると考えるべきです。むしろ本人にとってみればゲームが救いになっていることが多く、それを取り上げるのは非常にまずい。
仮に、ゲーム障害という概念を知って、ひきこもりの親がどこかの機関に相談する気になったとしましょう。しかし、本人にとってゲームが唯一の救いであれば、そのゲームを取り上げることになります。それで、支援がうまく行くはずがありません。
また、ゲーム障害のことを心配した親が、子どもを病院に連れて行き、若者たちが入院や拘束をされる危険性も考えなくてはいけません。オーセット、シュービルスキーといった専門家たちはゲーム障害を正式な診断名にしたら「自分の子どもはゲーム障害かもしれない」と心配する親たちが大量に発生して、社会問題になってしまうのではないかと、危惧をしています【注10】。
ぼくもこの点はかなり心配しています。知り合いの児童精神科の先生たちに聞くと、「子どもがゲーム障害なんです。治してください」って外来に来られるそうなんですが、話を聞くと、長時間ゲームをしているだけ、というケースがあるみたいなんですね。どうも親御さんたちは、テレビに出ている樋口氏が出た番組を見たらしいんですよね。
現状(2021年時点)ではゲーム障害はまだ精神疾患ではありません。しかし、すでに現場でそれほど大きいかたちではありませんが、確実にモラルパニックは起こっています。2022年以降どうなるのか、いまから心配でなりません。
山根 ゲーム障害治療としての軍隊式ブートキャンプは日本では報告はありませんが、久里浜医療センターがセルフディスカバリーキャンプ(自己発見キャンプ)について発表しており、『ゲーム障害』邦訳でも紹介されています(p.213)。
これは10人程度の報告で政策に使えるほど強力なものではなく、もっと大規模で長期的な検証が必要です。ただし日本語訳には誤訳があり、久里浜理療センターの報告にもとづいてキャンプ療法が解毒(デトックス)に役立つ、と訳してしまいました。原文は「いわゆるデトックス説を支持しているかもしれない」という弱い表現で、まずデジタル機器との接触を絶てば健康になる、というデジタル・デトックスはまだ弱い仮説にすぎません【注11】。
井出 デトックス仮説というのは、デジタル機器から離れれば、解毒されるかのように、依存が治るという仮説ですね。最近、デジタル・デトックスというものが流行っていると思います。日々、パソコンやスマホばかり使っているので、デジタルデバイスをすべて置いて、自然の中でキャンプする、といった試みですね。好きでやるのは勝手ですし、楽しい人は積極的にすればいいと思いますが、科学的に効果が立証されているものではありませんし、ゲーム障害に効果があるというエビデンスはありません。
山根 この誤訳で、日本語圏でキャンプ療法に効果があるように広がってしまわないか、効果の検証がおろそかにならないか注意する必要があると思います。
井出 このキャンプを実施しているのは、国立青少年教育推進機構という組織です。ここの事務局と話したことがあるのですが、1年目に参加している人は、2年目にも参加している人が多いといわれていました。「治ってないんですか?」と聞いたら「そうかもしれない」といわれていました。久里浜医療センターの出しているデータは短期的な結果なのですね。こういう治療は転地療法といわれるもので、効果は短期的なことが多いんです。ですから、わたしたちは長期的な効果があるかが知りたいわけです。国立青少年教育推進機構の方に、長期的なデータは出せないのかと聞いてみると、2年続けて参加されている方のデータであれば出せるといっておられたのですが、その後、音沙汰がないですね。
山根さんのおっしゃるように、日本でゲーム障害の治療を謳った矯正施設はまだ見たことがありませんね。しかし、ゲーム以外に目を向ければ日本でも存在しています。もっとも有名なのは戸塚ヨットスクールです。日本では、不登校、ひきこもり、ニートの矯正を謳い、不適切なサービスをしている施設は各地に存在しています。中国ではこういった施設で死亡事故が多発していますが、戸塚ヨットスクールでも死亡者がでました。
日本のこういった施設は経営が苦しいところが多い。ですかから、ゲーム障害に商売を拡大する確率は非常に高いと思っています。すでに施設とスタッフはいて、看板さえ書き換えればいいので、簡単に施設はできると思います。
2022年以降は正式な診断名になるわけですから、いま以上にゲーム障害の存在は大きくなります。ただのゲーム好きの子どもたちや若者が施設に収容されるケースが今後出てくるのではないかと、非常に心配です。
あと、民間だけではなく、精神科病院がこのビジネスに手を出す可能性もあることにも注意が必要ですね。民間の精神科病院は統合失調症の人々を治療するために、全国各地に大量に作られました。昔は人口の1%くらいの人が統合失調症になっていました。
しかし、最近は新たに統合失調症になる人かなり珍しくなっています。ちゃんとした調査がされていませんが、若年だと0.3%程度とかなり少なくなってきており、また症状も軽くなっている傾向にあります。
統合失調症というのは、妊娠後期の栄養失調【注12】と寒い環境や冬生まれ【注13】が関係しているといわれています。おそらく、十分な栄養が取れるようになり、住環境が改善したことによって、発症する人がかなり減ったのだと推測されています。
現在は、民間の精神科病棟のベッドがかなり空いてしまっています。その埋め合わせにゲーム障害とラベリングされた子どもたちを入れるのではないかという危惧があります。入院させてしまえばゲームはできなくなるので、治療結果は確実に、しかも簡単に出せます。入院当初は暴れる子もいるでしょうが、閉鎖病棟であれば無駄な抵抗だと悟るのは時間の問題なので、手間がかかるのは最初だけでしょうし、非常にメリットが高いビジネスになります。
このようなアプローチは、ゲームを取り上げれば治るだろうというデジタル・デトックス仮説にもとづいたものになるでしょうから、デトックス仮説は今後とも注目していきたいトピックです。
山根 話題が広がり過ぎましたが、それだけわれわれの社会はスティグマ化による社会的な影響を受けており、様々な国の専門家が憂慮してきた背景が共有できたと思います。
井出 では、結局のところ、スティグマ化という点で、樋口2021年論文の評価はいかがでしょうか。
山根 先ほど述べたように、いわゆるデジタルデトックス(キャンプ療法)が役立つという誤訳がゲーム障害の日本語文献では訂正されていません。このため、自分の子どもは障害持ちなんじゃないか、という保護者や社会の不安に対して民間療法がはじまったら、日本は脆弱です。そうした社会的視点があって欲しかったなと思います。
4.結論
井出 さて、樋口2021年論文が三つの論点をクリアしていたかを検討してきたわけですが、すべてクリアしていないといわざるを得ないですね。これらの論点は樋口2017年論文で「大丈夫だ!心配ない!」っていっていたことでした。5%なんて高い有病率が出ているのは、機能障害をちゃんと評価していないためで、機能障害を評価すれば大丈夫だという主張を4年前にしていました。しかし、樋口2021年論文は5.1%という有病率を出してきました。
山根 樋口2017年論文は国際的なチームによって書かれていますが、どの国もまだ慎重な態度です。その中で、日本の中核的機関が先進国の中でいち早く高い有病率を出したのは、新たな国際論争のはじまりとして注目されます。その際に、これまでの議論を批判的に乗り越えなければ、われわれは同じ問題を反復しているだけになってしまいます。そして予想される社会的な悪影響まで反復することは避けなければなりません。
井出 2022年からICD-11が発効すれば正式な精神疾患となるため、日本でもゲーム障害についていま以上にメディアで多く取り上げられ、自治体などでも規制の動きが活発化していくと思われます。わたしたちが危惧している点を取り上げましたが、その一部はすでに現実のものになっています。ゲーム障害という診断が今後どのような社会問題を引き起こしていくかということに、ひきつづき注視していきたいと考えています。
【注1】Higuchi, Susumu, Yoneatsu Osaki, Aya Kinjo, Satoko Mihara, Masaki Maezono, Takashi Kitayuguchi, Takanobu Matsuzaki, Hideki Nakayama, Hans-Jurgen Rumpf, and John B. Saunders. 2021. “Development and Validation of a Nine-Item Short Screening Test for ICD-11 Gaming Disorder (GAMES Test) and Estimation of the Prevalence in the General Young Population.” Journal of Behavioral Addictions, 10(2): 285?289. https://doi.org/10.1556/2006.2021.00041 
【注2】Billieux, Joel, Daniel L. King, Susumu Higuchi, Sophia Achab, Henrietta Bowden-Jones, Wei Hao, Jiang Long, et al. 2017. “Functional Impairment Matters in the Screening and Diagnosis of Gaming Disorder: Commentary on: Scholars’ Open Debate Paper on the World Health Organization ICD-11 Gaming Disorder Proposal (Aarseth et Al.).” Journal of Behavioral Addictions 6 (3): 285?89. https://doi.org/10.1556/2006.6.2017.036
【注3】該当開所の翻訳は下記。「機能障害を考慮せずに閾値ベースの「DSM-5アプローチ」をゲーミングやその他の行動に適用すると、IGDの症状を報告しながらも機能障害を伴わないゲーマーの症例をカウントしている研究があるため、高い有病率(例えば5%以上)の一因となっている可能性がある」(Kardefelt-Winther et al., in press, van Rooij, Van Looy, & Billieux, in press)。前出Billieux et al.(2017)。
【注4】Fam, Jia Yuin. 2018. “Prevalence of Internet Gaming Disorder in Adolescents: A Meta-Analysis across Three Decades.” Scandinavian Journal of Psychology. 59(5) pp.524-531.
【注5】朝日新聞「ネット依存、中高生93万人に疑い 居眠りの原因にも」2018年8月31日https://digital.asahi.com/articles/ASL8056BGL80ULBJ00F.html
【注6】Young, Kimberly S. 1998. “Internet Addiction: The Emergence of a New Clinical Disorder.” Cyberpsychology & Behavior: The Impact of the Internet, Multimedia and Virtual Reality on Behavior and Society 1 (3): 237?44.
【注7】厚生労働省科研(飲酒や喫煙等の実態調査と生活習慣病予防のための減酒の効果的な介入方法の開発に関する研究)
【注8】Alan Connor, “Crosswords: the meow meow of the 1920s”, Guardian 15 Dec 2011.  https://www.theguardian.com/crosswords/crossword-blog/2011/dec/15/crosswords-meow-meow-1920s 日本語での解説はこちらが詳しい。井出草平「1920年代クロスワードパズルが起こしたモラルパニック」https://ides.hatenablog.com/entry/2021/08/29/092342
【注9】岡田尊司,2014,『インターネット・ゲーム依存症 ネトゲからスマホまで』文芸春秋社.
【注10】Aarseth, Espen, Anthony M. Bean, Huub Boonen, Michelle Colder Carras, Mark Coulson, Dimitri Das, Jory Deleuze, et al. 2017. “Scholars’ Open Debate Paper on the World Health Organization ICD-11 Gaming Disorder Proposal.” Journal of Behavioral Addictions. 6(3):267-270. https://doi.org/10.1556/2006.5.2016.088.
【注11】Przybylski, Andrew K., Thuy-Vy T. Nguyen, Wilbert Law, and Netta Weinstein. 2021. “Does Taking a Short Break from Social Media Have a Positive Effect on Well-Being? Evidence from Three Preregistered Field Experiments.” Journal of Technology in Behavioral Science 6 (3): 507?14.
【注12】Susser, E., R. Neugebauer, H. W. Hoek, A. S. Brown, S. Lin, D. Labovitz, and J. M. Gorman. 1996. “Schizophrenia after Prenatal Famine. Further Evidence.” Archives of General Psychiatry 53 (1): 25?31. St Clair, David, Mingqing Xu, Peng Wang, Yaqin Yu, Yourong Fang, Feng Zhang, Xiaoying Zheng, et al. 2005. “Rates of Adult Schizophrenia Following Prenatal Exposure to the Chinese Famine of 1959-1961.” JAMA: The Journal of the American Medical Association 294 (5): 557?62.
【注13】Torrey, E. F., J. Miller, R. Rawlings, and R. H. Yolken. 1997. “Seasonality of Births in Schizophrenia and Bipolar Disorder: A Review of the Literature.” Schizophrenia Research 28 (1): 1?38.
プロフィール
山根信二ゲーム学・デジタルゲーム研究
東京国際工科専門職大学デジタルエンタテインメント学科教員。ゲーム開発を通じた社会問題解決に取り組む。NPO法人IGDA日本(国際ゲーム開発者協会日本)にて理事およびアカデミック専門部会の幹事を務め、ゲーム開発の産学連携を推進する。情報処理学会、日本教育工学会、IEEE Computer Society会員。日本初のHEVGA(全米ビデオゲーム高等教育機関連合)会員。https://about.me/syamane
井出草平社会学
1980 年大阪生まれ。社会学。日本学術振興会特別研究員。大阪大学非常勤講師。大阪大学人間科学研究科課程単位取得退学。博士(人間科学)。大阪府子ども若者自立支援事業専門委員。著書に『ひきこもりの 社会学』(世界思想社)、共著に 『日本の難題をかたづけよう 経済、政治、教育、社会保障、エネルギー』(光文社)。2010年度より大阪府のひきこもり支援事業に関わる。
        
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[メンタル] ゲームプレーヤーを精神疾患にするディストピア

[メンタル] ゲームプレーヤーを精神疾患にするディストピア
ゲームプレーヤーを精神疾患にするディストピア――久里浜医療センター「ゲーム障害の有病率5.1%」論文のからくり - 井出草平 / 社会学 
SYNODOS
2021年08月30日 10:14
エグゼクティブ・サマリ
久里浜医療センターの樋口進氏らのグループが発表した論文から、ゲーム障害を過剰診断していく方針が読み取れる。この論文は厚労省・文科省の政策にも影響があると考えられ、ゲーム好きの健康な子どもや若者たちが、精神疾患とレッテルを貼られ精神科病棟に入れられる未来も現実味を帯びてきた。
先日、ゲーム障害の有病率調査が久里浜医療センターによって発表された。英語論文として発表されたため、まだ一般には知られていないが、専門家の間ではかなり話題になっている。というのも、久里浜医療センターはゲーム障害でない人を診断しようとしているのではないか、と、いわゆる過剰診断を懸念する声が湧き上がっているからである。
本稿では、久里浜医療センターの研究を紹介しつつ、自身の専門性からこの研究の問題点について解説したい。
この研究でゲーム障害の推定有病率は、男性が7.6%、女性が2.5%、全体で5.1%であったという結果が報告されている。これを受けて「世界的に実施された16件の研究のメタ分析から得られた、若者の問題のあるゲームの推定値と同程度である【注1】」と論文では主張されている。
つまりは、先行研究と同程度の結果ということだ。研究論文では先行研究と同じ結果が出ることは悪いことではない。なぜなら、結果がより強固なものとなるためである。しかし、この問題にある程度の知識を有する者からすると、非常に不可解な結果である。
他の精神疾患すべてを合わせた有病率と同程度?
まず、推定有病率の高さである。一つの精神疾患の有病率としては、まずありえない高さといってよい。
WHO(世界保健機関)が主導し世界の主要国で行われている世界精神保健調査(WMH)という精神疾患の有病率調査がある。日本もこの調査に参加しているが、日本で主だった精神疾患を持つ者は7.6%だと報告されている(対象は20?98歳)【注2】。
一方で、久里浜の論文では、男性のゲーム障害の有病率は7.6%であった。ゲーム障害単独で、他の精神疾患すべてを合わせたものと同じなのだ。この結果をどう思われるだろうか?
先行研究の有病率と同程度?
ゲーム障害という診断名は、WHOの診断基準ICDのバージョン11であるICD-11に掲載され、2022年度から使用される予定のものである。原稿を書いている現在は2021年なので、まだICD-10が使われており、ゲーム障害は掲載されていない。ゲーム障害は、2022年に初めて導入される精神疾患で、新しい概念だということを覚えておいていただきたい。
久里浜医療センターの研究が、先行研究と同程度の結果だったと書いているが、この先行研究もICD-11のゲーム障害よりも、過去の概念を使用した研究である。
精神疾患には、ICD以外に、アメリカ精神医学会によって作成されたDSMという診断基準がある。2013年に改訂されたDSM-5には「インターネットゲーム障害」という診断が正式なものではないが提案されていた。先行研究は、このDSM-5の基準で行われたものが多く、ICD-11の基準を使用した研究は含まれていない。
ICD-11はゲーム障害であり、DSM-5はインターネットゲーム障害と、DSM-5はインターネットにつながったゲームを対象にしているという違いがある。また、DSM-5の診断基準より、ICD-11の診断基準の方が厳しいと言われている。
オーストラリアの研究【注3】では、DSM-5の基準に該当した者の約半分がICD-11の基準に合致、韓国での研究【注4】では、同様にDSM-5の基準に該当した者の約5分の1がICD-11の基準に合致という結果が出ている。研究によって多少のバラツキはあるが、少なくとも、DSM-5の基準より、ICD-11の基準の方が厳しいことは専門家のあいだで常識となっている。
調査法が違っていたり、調査をした国が違っていたり、いろいろな点は考慮したとしても、DSM-5基準とICD-11基準の調査が同じ程度の有病率だというのは、きわめて怪しい結果なのである。
先行研究の2分1や5分の1といった少ない有病率が示されていなければならない。「先行研究と同程度」という結果がどのように、導かれたものかを読み解いてみたい。
有病率の調査ではない
この論文、よくよく読むと有病率の調査ではない。タイトルにも「有病率推定」と書いてあるのだ。ここに怪しい結果を出すからくりがある。別の言い方をするならば、調査設計に仕込みがされているのである。
そのことを説明するために、調査の流れを整理したい。
調査の対象は10歳から29歳以下の若者である。住民台帳からランダムサンプリングをして9000人を選び、調査依頼をしたところ5096人が回答をした。その中から、さらに766人に対面で診断をする依頼を出し、281人がそれに応じた。281人に一次面接をして18名が疑わしいとされた。その18名の症状について専門家が集まり、最終的に7名の診断を確定している。
というのが、この調査の第一段階目の流れである。
実はこの時点で「有病率」は計算が可能だ。面接をした281人が標本であり、うち7名が診断されたのだから、7÷281=2.49%が有病率である。95%信頼区間を計算すると0.669-4.313%となる【注5】。
したがって、この調査でのゲーム障害の有病率は2.49%である。
わざわざ計算をしたのは、論文中で有病率の計算がされていないためである。有病率が計算できるにもかかわらず、有病率を示さないのは何とも不思議な論文である。
9000人に依頼を出して、281人にしか面接をしていないので、バイアスはあるのではと考える人もいるだろう。しかし、精神疾患の有病率調査は、面接をして診断をする手順が必須であるため、バイアスはあったとしても、この方法が最良である。また、他の方法をとるよりもよほどバイアスは低いと考えられている。
じつはこの有病率も過大であると個人的には考えているのだが、話が逸れるため、また別稿に譲ろう。
ここで考えたいのは「有病率」の2.49%が論文で計算されず、「有病率推定」5.1%といった倍近くの数値が報告されているのはなぜか、ということである。
「有病率推定」とは何なのか?
有病率推定という数字の正体を理解するためには、もう少し調査計画を説明する必要がある。
さきほど、281人のうち7名が診断までは説明したが、この論文には続きがある。7名は統計処理をするには少なすぎるため、久里浜患者44名を足し合わせて、ゲーム障害群としている。一方で、それ以外の274名(=281-7)を対照群と設定している。
この2群、ゲーム障害群と対照群を弁別できるGAMES-testという尺度を、研究では作成している。GAMES-testは、何点以上であればゲーム障害の疑いがある、というスクリーニングテストなのである。スクリーニングテストは、診断を行うものではなく、疑いのある者をあぶり出すツールであるため、有病率推定という言い回しになるのだろう。
このGAMES-testの項目には、最初の5096人も回答している。そこで、5096人の中からGAMES-testに従ってゲーム障害群と推定がされている。この数字が男性7.6%、女性2.5%、全体で5.1%という数字の正体である。
有病率の結果を報告しているのではなく、スクリーニングツールの結果なのだ。
過大診断のからくり
からくりの正体はこのGAMES-testというスクリーニングツールの作成方法に隠されている。この種のツールを作成する場合には重要なのが、対照群の設定である。この調査では、ゲームとほぼ無関係な274人を対照群として設定している。専門用語では健常対照群と呼ばれている。
しかし、今回の対照として健常対照群との比較は不適当である。本来は「ハードゲーマー」などと呼ばれる、趣味としてゲームを比較的長時間プレイしているものの、学業や仕事には問題を生じさせていないグループを対照群に置き、「病的ゲーマー(pathological gamer)との区別をすること」が求められていたからだ。
“pathological”は「病的」と定訳が決まっているため、ここでも病的と翻訳しているが、日本語でいう病気とは意味が少し異なる。正確にいうと、学校にも行かず、会社にも行かず、仕事をやめてしまったりして、寝食を忘れてゲームをしており、致命的な問題が生じており、かつ、それがゲームによって引き起こされている、という意味である。
その理由はICD-11のゲーム障害導入が決まったプロセスを見ることでも明らかである。
ゲーム障害の診断における専門家の役割はどこへ?
2017年前後に海外の専門家のあいだで、ゲーム障害という概念をめぐって大論争が起こっていた。ゲーム障害の診断を確立しようというグループと、時期尚早であるという慎重なグループの間で、大激論がされていた。
慎重なグループが懸念したことの一つは、趣味としてゲームをしている人、とくにいわゆるハードゲーマーと、病的なゲーマーの区別がつくのかという問題である。ゲーム好きでゲームを長時間しているような人を、精神疾患にしてしまわないか? と疑念を投げかけていたのだ。
それに対して、推進派は「大丈夫だ」「ゲームをスティグマの対象にするためではない」「趣味で長時間ゲームをしているようなハードゲーマーと、病的なゲーマーを区別することが科学者と臨床家の役割だ」と宣言をしている【注6】。
このような主張を行った論文はいくつもあるが、今回の論文の第一著者である樋口進氏も、2017年の論文で同様の主張している【注7】。
つまり、GAMES-testといったスクリーニングツールを作成する際に、樋口氏が自身に課すべき課題は、2017年の論文で書いたようにハードゲーマーと病的なゲーマーを区別することだったはずなのだ。
GAMES-testのからくり
便宜的に3つのグループを仮定しよう。
1.ゲームを全くしていない人や少しゲームをしているグループ
2.ハードゲーマー
3.病的ゲーマー
ゲーム障害のスクリーニングツールとして求められているのは、2と3の区別ができることであって、久里浜医療センターの樋口進氏も2017年に自ら述べていることである。
しかし、今回の論文では、健常対照群との比較をしたため、1と3が比較されたということだ。そのため、2と3の区別はつけることができていない。
1と3を区別する項目として何が選ばれたかについては、GAMES-testの項目を直接見ると理解できる。たとえば、ゲームに熱中してついつい夜ふかしをしてしまったり、ゲームが面白過ぎて他の趣味に興味がなくなったり、今の生活でゲームが一番面白いと答えることがあげられている。
確かにこういった項目は3の人には当てはまるだろうが、1の人には当てはまりそうにない。しかし、これらの項目は2の人たちにもあてはまるのである。
GAMES-testに上げられている項目は文末に項目を掲載しているので、興味をある方はみていただきたい。ハードゲーマーの日常に近い項目が多く含まれていることが確認できるだろう。
GAMES-testで推定されるのは、2と3のグループである。久里浜医療センターと樋口氏は2と3の区別が重要だと4年前に論文に書いていたにもかかわらず、2と3をまとめてゲーム障害群と推定する論文を書いたのである。
GAMES-testは害悪をもたらす
GAMES-testが役に立たないツールだ、ということはお伝えできたかと思う。GAMES-testの作成手順の問題点は、比較対象を「ハードゲーマー」にしなかったことである。
今回の論文では、調査法、実験法、統計学に長けた人物も協力しており、比較対象を「ハードゲーマー」にせず、「健常対照群」にすれば、ゲーム障害の推定は過大になることは設計段階から予想ができていたはずである。
予想ができていたにもかかわらず、正しい方法で実施しなかったのは、過大に推定するのが目的だったのだろう。調査法や統計学の素人が見様見真似でやってみて失敗したのであれば、意図的ではなかったのだろうと思えるのだが、今回の論文では中級以上の様々な統計手法が駆使されており、このレベルの専門性のある人間が、対象群についての知識を持っていないことはあり得ない。意図的にゲーム障害が過大に推定される調査設計をしたと判断するのが妥当である。
本来この論文で書くべき有病率は2.49%ある。しかし、GAMES-test のからくりを挟み込むことで、5.1%と推定できていて、倍以上の現象に大きく見せることに成功している。
ゲーム障害の有病率を大きく見せかければ、社会に大問題だと訴えることにつながるのかもしれないが、それよりも懸念されるのは、ゲーム障害の診断確立に慎重だったグループが訴えていた過剰診断である。
この論文が起こす問題
今回の論文は、久里浜医療センターの樋口氏らのグループが書いた一つの学術論文ではすまされない面がある。
まず、この研究は厚労省の委託によって行われている点である【注8】。委託額は7769万円である。
8000万円近い税金を使い、意図的にゲーム障害が過大に推定されている研究が実施されたことになる。多額の税金が適切な科学研究に使用されなかった問題が1つ目の問題である。
2つ目の問題はこの研究が厚労省の委託研究だということだ。厚労省は政策のすべてを独自に研究する機関を持たないため、外部の専門家に委託をして、その結果を元に政策決定を行っている。
つまり、この研究は、今後の厚労省を含めた日本政府の政策が作られていく根拠として使われていくのだ。最近の行政の動きをみると、厚労省は一定程度、慎重な態度をとっているが、文科省はゲーム障害の恐ろしさを訴える啓蒙パンフレットを作成するなど、かなり積極的である【注9】。政策の中で、論文の中に隠されたからくりは無視され、ゲーム症は若者の5.1%もいる、男性に至っては7.6%だ、大変なことだ、と政策の根拠として使われる危険性がある。
久里浜医療センターと樋口氏が、調査で過大に結果を報告したのは今回が初めてではない。センターが以前に取り組んでいたギャンブル依存症の調査では、男性9.6%という数値を報告した。日本国民の男性の10人に1人が、問題のあるギャンブルを行っているという結果を報告したのだ。しかし、常識的に考えて10人に1人がギャンブル依存症とは考えづらく、方々から疑義が出され、再度調査がされた結果、直近1年で0.8%と数値を修正された過去がある。実に10倍も多く過大に見積もっていたのである。
久里浜医療センターが過去に行ってきた、アルコール、ギャンブル、インターネット依存症の例では、マスコミはファクトチェックをすることなく、大々的に結果を発表してきた。今回も同じことが起こるのではないかと危惧している。こういった盛り上がりを受けて、ゲームを締め付ける政策が打たれていくかもしれない。
ギャンブル障害のときの過大な見積りは稚拙な方法であったが、今回のゲーム障害の論文では統計の専門家が手を貸し、やり口が巧妙になっており、一見するとまともな論文にみえるように仕立て上げられている。
久里浜医療センターと樋口氏の今までの活動を知っている者にとっては「またやったのか」という感想しか出ないが、今回はその手法がより巧妙になったことに注目した方がよいだろう。巧妙になった久里浜医療センターには、今まで以上の警戒が必要になってくるだろうからだ。
ゲームプレーヤーを精神疾患にするディストピア
先日、中国の国営紙は「ゲームは精神のアヘンである」と書き、中国のゲーム規制は一層厳しく締め付けられることになった。この件が報道されると、SNSには中国政府の政策にあきれたといった声があふれた。しかし、これは対岸の火事ではなく、日本でも起こりつつあるように思えてならない。
GAMES-testは少しでもゲームに夢中になれば、精神疾患扱いをするツールであり、精神疾患ではない者を精神疾患にする危険性がある。健康な誰かを精神疾患だと見なすことは、その人の人生を狂わせる大きな問題であることを忘れてはいけない。
かつてソ連では、政治犯を精神疾患として病院に収容するという方法で言論弾圧が行われていた。当局にとって都合の悪い者を精神疾患とラベリングして、社会から隔離したのである。精神医学というのは使い方次第で、とんでもない悪行も正当化できるツールであり、他の医学分野以上に、私たちはその力の使われ方を監視していく必要がある。
ゲームへの取り締まりが世界の中でもっとも厳しく、すでに精神疾患として認定されている中国では、インターネットをしているだけ、ゲームをしているだけの子どもや若者たちが、隔離病棟や訓練施設に送り込まれる事例が後を絶たず、社会問題化している【注10】。隔離病棟で麻酔をかけない懲罰的な電気けいれん療法がおこなわれていたことが判明したり、施設での死亡事故も多発している。これらはインターネットやゲームに夢中になっている子どもや若者は精神疾患だとされたことから始まっている。
日本もその道を歩みつつあるようにみえる。久里浜医療センターはゲーム障害の治療と称して、子どもたちを病棟に入院させてきたことで有名である。このことは樋口氏の書籍などで紹介されている【注11】。
ゲームに少し夢中になった子どもに、精神疾患のレッテルが貼られ、精神科病院に隔離される。厚労省が久里浜医療センターの研究を元に政策を展開していけば、ゲーム好きの子どもたちや若者を精神科病棟に隔離することが当たり前の社会になるかもしれない。
おそらく、久里浜医療センター自体は、ゲーム障害でもかなり重症の子どもや若者の治療を実際にはしているのであろうし、懲罰的な行為をしているわけではないだろう。しかし、久里浜医療センターの劣化コピーのような施設が出てきたときに、中国やソ連のような人権侵害が起こる可能性は非常に高い。
精神科病棟だけではなく、民間施設でもこの動きは起こるだろう。戸塚ヨットスクールに代表されるように、不登校やひきこもりの矯正を謳った不適切なサービスを提供する施設は日本各地に存在している。そういった施設では、強制的な拉致、暴行、死亡事件といった事件が起こり続けてきた。新しい金儲けの事業として、これらの施設がゲーム障害に目をつけるのはおそらく間違いない。これらの施設は時代の変遷とともに、社会問題となってきた、不登校、ひきこもり、ニート、発達障害と看板を掛け変え商売を続けてきたからだ。ゲーム好きの子どもたちや若者がゲームをしているという理由だけで、施設に収容されていく未来が容易に想像できる。
4年前の論文や今までの樋口氏は、本当に困っている子どもたちや若者たちに医療を届けるのであって、ゲームを楽しんでいる人を精神疾患とラベリングするわけではないと主張してきた。少なくとも学術的にはその立場にいた人間である。
しかし、今回の論文で過剰診断を意図していることが明らかとなった。これはゲームが好きな子どもたちや若者に、根拠なく精神疾患のレッテルを貼っていく方針に、樋口氏と久里浜医療センターが公に舵を切るという宣言だと私は見ている。
しかし、まだ中国やソ連のようなディストピアになってしまったわけではない。
私たちができることはまだまだ残っている。その一つの手段は、久里浜医療センターの活動に異議申し立てをすることである。彼らの研究には重大な欠陥があることを、資金提供した厚労省や資料を利用する可能性のある文科省に伝えていくことも重要なことである。
久里浜医療センターに、ゲーム障害を過大に推定するからくりが仕組まれた調査ではなく、科学的に誠実な研究を求めていかなければならない。もし、彼らにその意思がないのであれば、正しく公平な科学的態度に基づいた研究をする学者に調査させ、関わるように働きかけるしかないだろう
資料 GAMES-testの項目
この項目は英語論文からの翻訳であるため、実際に日本語の調査で使用されたものとは言葉づかいなどが異なる可能性がある。
1.ゲームをやめようと思ってもやめられないことが多いですか?
2.ゲームを始める前に意図していたよりも長い時間、ゲームをすることがよくありましたか?
3.ゲームのために、スポーツや趣味、友人や親戚との会合などの重要な活動への興味が著しく失われたことがありますか?
4.ゲームはあなたの日常生活の中でもっとも重要なものですか?
5.学校や仕事のパフォーマンスの低下
6.昼夜逆転、または昼夜逆転の傾向(過去12ヶ月間に30日以上)
7.ゲームのために学業が危うくなったり、仕事を失うリスクがあっても、ゲームを続けたことがありますか?
8.ゲームが原因で憂鬱や不安になったり、睡眠障害などの精神的な問題を経験したにもかかわらず、ゲームを続けたことがありますか?
はい=1、いいえ=0で最高点8点。4点をカットオフ値として、4点以上の場合感度94%、特異性97%。平日の平均ゲーム時間を加え、平均ゲーム時間が2時間未満の場合は0点、2時間以上6時間未満の場合は1点、6時間以上の場合は2点とし、最高点10点とし、カットオフ値を5点にした場合には感度100%、特異度98%。
【注1】Fam, Jia Yuin. 2018. “Prevalence of Internet Gaming Disorder in Adolescents: A Meta-Analysis across Three Decades.” Scandinavian Journal of Psychology. https://doi.org/10.1111/sjop.12459.
【注2】Ishikawa, H., N. Kawakami, R. C. Kessler, and World Mental Health Japan Survey Collaborators. 2016. “Lifetime and 12-Month Prevalence, Severity and Unmet Need for Treatment of Common Mental Disorders in Japan: Results from the Final Dataset of World Mental Health Japan Survey.” Epidemiology and Psychiatric Sciences 25 (3): 217?29.
【注3】Starcevic, Vladan, Tae Young Choi, Tae Ho Kim, Seo-Koo Yoo, Sujin Bae, Byung-Sun Choi, and Doug Hyun Han. 2020. “Internet Gaming Disorder and Gaming Disorder in the Context of Seeking and Not Seeking Treatment for Video-Gaming.” Journal of Psychiatric Research 129 (October): 31?39.
【注4】Jo, Y.S.; Bhang, S.Y.; Choi, J.S.; Lee, H.K.; Lee, S.Y.; Kweon, Y.-S. Clinical Characteristics of Diagnosis for Internet Gaming Disorder: Comparison of DSM-5 IGD and ICD-11 GD Diagnosis. J. Clin. Med. 2019, 8, 945.
【注5】Wald法による計算。疫学では、年齢や性別で調整値を出すこともあるが、7名の年齢性別が分からないためこれ以上の計算はできない。
【注6】Kuss, Daria J., Mark D. Griffiths, and Halley M. Pontes. 2017. “DSM-5 Diagnosis of Internet Gaming Disorder: Some Ways Forward in Overcoming Issues and Concerns in the Gaming Studies Field.” Journal of Behavioral Addictions.
King, Daniel L., Paul H. Delfabbro, Marc N. Potenza, Zsolt Demetrovics, Joel Billieux, and Matthias Brand. 2018. “Internet Gaming Disorder Should Qualify as a Mental Disorder.” The Australian and New Zealand Journal of Psychiatry.
【注7】Billieux, Joel, Daniel L. King, Susumu Higuchi, Sophia Achab, Henrietta Bowden-Jones, Wei Hao, Jiang Long, et al. 2017. “Functional Impairment Matters in the Screening and Diagnosis of Gaming Disorder: Commentary on: Scholars’ Open Debate Paper on the World Health Organization ICD-11 Gaming Disorder Proposal (Aarseth et Al.).” Journal of Behavioral Addictions 6 (3): 285?89.
【注8】平成30 年度・令和元年度に「ゲーム(インターネット)使用・依存に関する実態調査」(平成 30 年度補助額:35,200 千円、令和元年度補助額42,489 千円)。
【注9】山田太郎議員による指摘で文科省の啓蒙パンフレットの配布は撤回された。【参議院議員】山田太郎「《Law55》粘り強い交渉成功??文科省、ゲーム依存症パンフレット取りやめました。」で事の顛末が報告されている。https://www.youtube.com/watch?v=pUzKXinPAng
【注10】Case study: Electric shock therapy in China for internet ‘addiction’ ?  Guardian, https://www.theguardian.com/world/2009/jul/14/china-internet-electric-shock-treatment
【注11】たとえば、樋口進,2018,『ネット依存・ゲーム依存がよくわかる本』講談社.
プロフィール
井出草平社会学
1980 年大阪生まれ。社会学。日本学術振興会特別研究員。大阪大学非常勤講師。大阪大学人間科学研究科課程単位取得退学。博士(人間科学)。大阪府子ども若者自立支援事業専門委員。著書に『ひきこもりの 社会学』(世界思想社)、共著に 『日本の難題をかたづけよう 経済、政治、教育、社会保障、エネルギー』(光文社)。2010年度より大阪府のひきこもり支援事業に関わる。
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2021年5月12日水曜日

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2021年5月10日月曜日

[ソフト][Mac] Aqua Zone ~熱帯魚スクリーンセーバ

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[ソフト][Mac] Aqua Zone  
伊集院光: SWITCH版で『ポケモンスナップ』が復活した
■『ポケモンスナップ』
ポケモンスナップの話。
あの『ポケモンスナップ』がNintendoSWITCHで復活しました。新しいポケモンスナップはオイラも待ちに待ってて。。。何十年振りの復活かな.....ポケモンスナップが登場したのはNintendo64時代だから,もう20年以上経っているんじゃないかな?
『ポケモンスナップ』はポケモンのゲームで,ポケモンのカワイイい写真を撮ろうっていうゲーム。当時もうこれが大好きで。どういう説明したらいいかな....ディズニーランド的な,ポケモンたちが仲睦まじく暮らしてる3Dグラフィックの島があって,その真ん中を,これまたテーマパークでいうところの「ライド」みたいな,自分で運転しない,勝手に決まったスピードで動いてる車に乗って,カメラで撮っていく。。島で遊んでるポケモン達の写真を撮ります。その撮った写真を博士みたいな人に見せて,
「珍しいポケモンが取れたね」みたいな感じで採点してくれる。その写真のフレームのど真ん中にポケモンが入ってるか,とか,そのポケモンは初めて見つけたポケモンなのか,とか,レアなポーズをしているか,とか,写真の中に何匹ぐらいのポケモンが入ってるか,とかによって点数が決まっていく。で高得点を取るとコースが変わる。今までは昼だったコースが夜のコースになったりするっていう。その基本的なゲームの構造,ラインは数十年前のNintendo64版も今回復活したSWITCH版も変わらなくて,楽しんでる。
で今回SWITCH版をプレイして思ったのは,この3Dグラフィックの島でポケモン達が仲睦まじく遊んでいるところに自分たちが入って行って,カメラを撮る,カメラのフレームに収めるっていう作業は,そもそもそんなに難しくない。なぜならばゲームの構造はシューティングゲームと同じだから。ポケモンたちのヘッドショットをしながら(笑)ピギャーとか言って(笑)。システム的には3Dスクロールしていく空間の中で敵キャラを撃ち落とすシューティングゲームと同じだから。当たった場所が良いと得点も上がるところまで同じでしょ。.....本当のマタギは,熊が襲いかかる寸前まで待って,口を開けた熊の口の中を撃つからね。少しでも熊の毛皮に傷がつかないようにっていう。そういうことですので。ピカチュウの毛皮にスコア少しでも傷がつかないようにするには,右目から左目を貫通させる事で,「無傷じゃないですか....」みたいなことをする(笑)みたいな発想ならすぐに作れるゲームを,たぶん子供も親御さんも嫌がるだろうから,それをシューティングではなく,いわゆる写真を撮ろう,っていうゲームにしたのは,俺は本当に偉いと思ってるので。
よくできてると思うのは,自分で操縦する乗り物じゃなくて,強制的に動いていく「ライド」に乗ってるわけで,トリとかツバメみたいな何も珍しくもない平凡なキャラがいて,一方でライドも右に左に曲がるから,構図が上手に組み合わせられなくて。で,ズームしたりとかもするから,今飛び立ちそうだなと思った瞬間に撮るとそういう珍しくない平凡なキャラでも,レアなポーズだからっていうんで高得点がとれる。で「やった」って思ってる,その画面の反対側で一瞬だけコイキングが湖から飛び跳ねてるけど,俺はそれは知らないから。その珍しいショットを撮りに行った,その向こうにもっと超レアな被写体があるっていうのは....計算され尽くしているなって思ったり。
.....『ポケモンスナップ』やらない人のためにうまく言うと。。。その町で面白い写真撮ろうっていう,首から一眼レフカメラなんかかけちゃってる,趣味は散歩の,俺こと「宮崎あおい」が(笑),何気ない街の風景を撮っていくんです。オリンパスの一眼レフを首から下げて,歩いてるじゃんか(笑)...で今時はあんまり見かけなくなっちゃったかな....下町の路地なんかを行きますとね,家から100mまで下着で外出できる親父っているじゃんか(爆)  言ったら「家から100mなんて俺の家みたいなもんじゃんか」っていう。あのおじさんも今はずいぶん絶滅しかけてて,郵便受けまでで止めるようになってんだけど。コンビニは駄目だけど,スーパーは..だって先代から知ってるからいいじゃねーかっていう,あのおじさんがいるじゃんか。でいつものガラパンで行くんだけれども,そのガラパンから左のキン○マ出てんじゃんか。で「宮崎あおい」こと俺はそのガラパンから出た左のキン○マ撮りたいワケ。でもおじさんも昨日の酒が残ってて右左に行くから,上手にキン○マが真ん中来ないわけよね。だから相当な望遠で狙うワケ(笑) 「あおい」怖いし(笑) ああいうおじさんて突然叫ぶから。あと急に「田中角栄の恩知らず」とか言うから。あと「そもそも日本の高度経済成長の原因は俺だから。厳密に言えば」とか言うから。で耳にレシーバ入ってるかと思って見ると入ってない。あの感じのおじさんだから。だから遠くから望遠で狙ってるじゃんか。で狙い続けてやっとイイ感じのショットが撮れて。でそのおじさんに集中して周囲が見えてないんだけど,実はその後ろに違う家おじさんがいて,もうそのキン○マがほっぺたにつくかつかないかの距離に(爆)近づいてから帰ってたことを「あおい」は知らないっていう。 『ポケモンスナップ』ってそういうゲームなの。それが計算されつくしてる。でそのキン○マ近づけてたおじさんの方はPTA会長だから。街でも紳士で評判のおじさんなんだけども,そのタイミングだけは完全に素っ裸だからね(笑) 「あおい」は前のおじさんのキン○マに集中して気付かないけど,レアなおじさんのほうがキン○マ近付けて「ヘッヘェー」とか言ってるっていう。それが任天堂の考えたエンターテインメントだから。
それが面白くて。そのNintendo64時代の『ポケモンスナップ』が時代の先を行きすぎちゃった部分。弱点ていうか。レアな写真を撮るんだけど,その撮ったものを人に見せたいっていうやり方が不便で。データセーブしたカセットをローソンに持っていくとプリクラのシールをプリントしてくれる。でも値段が高い。当時プリクラが一枚200円〜300円。でポケモンのシールは一枚200円だった。でいまいち皆使わなくて。皆,ポケモンのシールが欲しいんだけれども,金もかかるしっていうんでイマイチ流行らなかった。。
一方,SWITCH版の『ポケモンスナップ』。これは撮った画像をネットにも上げられるし,自分のSWITCHの中に画像データとして残せるから,それを人とやり取りしたりとかが出来るっていう。任天堂も,あの『ポケモンスナップ』をよく忘れないでいてくれたなって思う。当時『ポケモンスナップ』は好きだったけど,まぁそのローソンのこともあって,そこまでの大ヒットになったか?って言うと,ポケモンのソフトであってすれば,そこそこ売れてるんだけれども,まぁメインストリームに入るわけじゃなかったゲームだから。それが戻って来て。
■『ピカチュウげんきでチュウ』
でもう一個。『ピカチュウげんきでチュウ』ていうゲームもNintendo64であった。3Dのポケモンのシリーズだったけど,画面の中にいるピカチュウと,不属のマイク付ヘッドセットで話せるみたいなゲーム。それも面白くて可愛かったんだけども,なんつーのかな...ちょっと時代が早すぎたっていうゲームだった。要するに,プリセットされた単語をはっきり発音してやっと認識されるっていうレベル。当時の『ピカチュウげんきでチュウ』に「多く語られる田中角栄の功と罪だが,その功の部分は何か?」って言ってもピカチュウは「ピィーカァー」って言うだけだろうけど(笑)
俺は当時,ゲームの番組やってたから,ゲームの開発者と話したんだけど,言ってたのは,子供って例えば「ピカチュウ」って言って反応しなかったら,このゲーム応しないんだっていう判断ができない。ゲームとかいう概念がないから。大人だったら,「今の音声認識だともうちょっとゆっくり言わなきゃ」って思うところが,子供は「ピカチュウ」って言って反応しなかった時に何するかって言うと,バカでかい声を出すしかない。で喉から血が出るほど大声を出してるって,親からクレームが来たっていう。...だけど多分今の音声技術に対するレスポンスとかすごいじゃん。おそらく今のフルの技術力で『ピカチュウげんきでチュウ』作ったら面白いだろうね。
PSの『シーマン』も,あの頃の音声認識の技術で皆一生懸命やろうとしてたけど,やっぱり当時としてはイマイチどころかなかなか普及もしないままで終わった感がある。色々苦労したんだよね。。。
TAITOだかのゲームで『Breeder』っていうゲームがあった。オペレータールー厶から建物の中にいる自分の助手/女性隊員に声で指示するゲーム。これもやっぱり音声認識がうまくいってないし,ボキャブラリーの数も全然登録できてないから全部エラーが出ちゃう。こっちは「M字開脚」って指示しても,その言葉のプログラムが入ってないから全然M字開脚をしてくれない。「エロテロリストみたいなM 字開脚」って言ってんだけど,それは認識してくれないじゃん。ゲーム自体は敵の地下要塞の探索に入ってるっていう設定になってるから,その女隊員は「雑音が多くて聞こえない」「何を言ってるの?」って言われてこっちの「エロテロリストのM字開脚」に反応しない。
当時の音声認識なんて決まった音にしか反応できないんだけど,ギミックを使いながらごまかしつつ何とか成り立たせてた。でもユーザが想像するレベルまでは行ってないから結局売れなかったし,やめちゃった。
でも今の時代にこういう音声ゲームが復活したら「高度経済成長期の政治について」ぐらいはピカチュウと話せるようになっててもおかしくないと思うんだけど。
■『AQUOS ZONE』『L-Fish』
Macintoshの『AQUOS ZONE』。PCモニターの中で熱帯魚を観賞するっていうだけ,Macの中でグッピーが泳いでるだけなんだ。...説明が面倒なのは,「スクリーンセーバー」の説明が難しい。まず今の若い人はスクリーンセーバー自体を恐らく知らないから,それから説明しなきゃいけない....俺(53)はミキサーの岡部さんと同じ50代で「懐かしいなー」って言ったんだけど.....ディレクターの金子(35)は昔,小学校のパソコンにスクリーンセーバーありましたって言ってたから,それより若い人はスクリーンセーバー自体知らないんだろう。。
えっと,昔のCRTパソコンモニタは,つけっぱなしにしとくと「焼き付き」って言って,画面にずっと映りっぱなしになった文字が,画面に影になって焼き付いちゃうっていう特性があって。だから映像で動かしとかなきゃいけない。でスクリーンセーバーを常駐させておく。すると,しばらくPCに触らないでいると,しばらくするとゆっくり画面が動きだすっていう。でもともとWindows98なんかで最初から入ってるスクリーンセーバーは,なんだかよくわかんない人みたい水道管みたいなパイプがくねくねくねくねずっとを画面上に書かれていくっていう。 でMacintoshの『AQUOS ZONE』はそういうスクリーンセーバーの代わりに,熱帯魚がゆっくり動いてるって言うだけのソフトだったんだけど。で,それに対抗して『L-Fish』っていうソフトが登場した。当時としては早すぎたソフトだったと思ってるんだけど。
『L-Fish』は世界各地の海の熱帯魚それぞれが確か800位の遺伝情報を持ってる。でそれを採って,掛け合わせて卵を産ませると,2匹の熱帯魚の特徴を受け継いだ熱帯魚が出来るっていう。ゲームでもないんだけどシュミレーターって言うかよくわかんない。。そこで自分の交配させた種を,遺伝と突然変異を繰り返しなら掛け合わせていくと,限りないバリエーションが出来る。遺伝情報が揃えばパンダに見た模様もできるんだけど。でもあんまり強引なことをしたりすると,もしくは突然変異種の条件によっては,形質は次世代に継承されない。
で,自分の熱帯魚を作って,それを人のパソコンに移せる。「俺の作った熱帯魚をお前のパソコンで泳がせてくれョ」みたいな感じで。。でも俺のパソコンだと,珍しい熱帯魚が出来たって所までは2Dデータなんだ。でもそれを人にあげるときには,右や左に向いたりするから,3Dデータを生成しなくちゃならない。で小魚一匹のデータ書き終わるのに24時間以上かかるという(笑) その間 ,ずーーーーーっと計算してるってヤツなの(笑)  でも俺は未だにやりたいっていうか....またあれの延長線上があればいいのにと思うんだけど。当時のスペックではやっぱり限界があるから,その「無限には変化はできません」みたいのがあって。ストップがかかるんだけど。『L-Fish』。。知ってる人は多分50代だね。。『L-Fish』知ってる人は,ああいうのをもっかい作りたいと思うだろうし。
あと『我が竜を見よ』っていうRPGとか。。当時のスペックで果敢に挑戦して失敗したソフトを,PS5とかX-BOXの新型とか,今のスペックで作ったら面白いだろうなと思うなァ。。
ーTBSラジオ,JUNK

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