2025年7月12日土曜日

[レビュー][アニメ]『カリオストロの城』解説〜岡田斗司夫ゼミ




 

[レビュー][アニメ]『カリオストロの城』解説〜岡田斗司夫ゼミ
岡田斗司夫: 『カリオストロの城』解説
YouTube『 岡田斗司夫チャンネル』
2025.7.1     
今週の金曜ロードショーで『ルパン三世〜カリオストロの城』が放送されるということで,今週の岡田ゼミは『カリオストロの城』祭りなんですよ。で,前回に引き続き今日の動画も『カリオストロの城』の解説動画を有料の部分まで含めて公開しちゃう限定解除やります。こんばんは岡田斗司夫です。この動画は2018年3月18日に配信した岡田ゼミ第222回の限定まで含めた限定解除動画です。それでは7月3日までの1週間だけになりますけれども楽しんでください。 
■ オープニングのボツシーン
…君も前からずっと4分このままだっていうの。これだけで教えてるんですよね。 だからその踏切で車が止まっててその向こう。電車が通り過ぎるっていうシーンを。 本当はこれがあの列車が通過するだけで,20分も30分見てなきゃいけないっていうのやつに普通。例えばロバーをちゃんと正面から書かなきゃいけないとか,あとリンゴを投げる女の人に投げキッスするルパンていう風です。作画的にちょっと手間かかるんですけど,だからもちろん描かない。それ以外にも何故この2カットがボツになったかというと,理由がありまして,それは何故かっていうと,ルパンと次元の孤独感がなくなっちゃうんですね。 今の残ってるオープニングっていうのは「ルパンと次元が,まっとうな人の世界からはぐれてしまった迷子のような存在,泥棒という生き方を選んだんだけども,それは別に本当は楽しいものじゃなくて,実は孤独でなんか寂しいものかもしれないよ」っていう作者のメッセージが伝わらないんですね。こんななんか道中でリンゴを投げてもらって投げキッスをしてしまうルパンとか,もしくは車がエンコしてロバで引っ張ってもらって,ロバに乗ってる子供と話してるルパンていうのを描いちゃうと孤独感が出ないんですね。 そうじゃなくてルパンにふさわしいのは,なんか真っ白な服を着て歩いてる女の子を,気付かれないようにそっと避けていくぐらいのルパンの方が,今回の世界観にはあってるんですね。 なので地元の人との触れ合いみたいなシーンは全部カットすると同時に,手間がかかるシーンはやめちゃって,あくまで手間がかからない作画で統一したっていうのが,宮崎駿の判断なんですけども。まァね,それがあったとしても,その他にもなんかすっごい深い草原があって,そこでフィアットがスタックしてしまって,次元とルパンがフィアット押してる絵とかがあるんですけど,これも単純に作画が大変だからボツになったんだと思いますけども,ギリギリまで作画を省略して,その分構図と色味で見せる。これもねやっぱりボツになった理由は色味がごちゃごちゃしてるんですよ。で,結局採用になったカットというのは1カット1カットの明るい/暗い,夜/昼。あとなんだろうな…はっきりした色味で見てる人を退屈させないという構図が全部できてるカットばっかりなんですね。画面の抜けがいいのか,もしくは圧縮されてるのか。ただ,このなんかやっぱり大塚さんが「宮崎さんのすごさっていうのは迷いや失敗をアニメーターに許さない」って言ってるんですよね。すごい言い方ですよ。「宮崎駿のコンテの何がすごいかって言ったら,迷いや失敗をアニメーターに許さない。そのスキを与えない。 コンテを見たらどのような演技が必要されてるのか,どこを省略すればいいのかも,どんなアニメーターでもわかる。この伝達力っていうのが宮崎駿のコンテのすごいところだ」って大塚さん言ってるんですけども,確かにそうなんですよ。さっき言った背景を2段に引くとか,あと,この部分だけを動かすという指示っていうのは宮崎駿特有のもんで,背景の2段引きに対して左のフィアットを動かしてやったら,別にそのリンゴを投げてもらって,ルパンのフィアットが去っていって,その去っていくフィアットに対して,女の子はりんごをわざわざ投げてくれて,ルパンがギリギリで受け取って投げキスを返すって演技って,もう間違いようがない。 多分このコンテ見たらどんなアニメーターもやりたいことが分かっちゃうと,この辺がすごさだと思います。 でも,まあまあまあボツにせざるを得ないのは分かるんですけど,この風景見たかった。動かしたくなります。 
■ 『カリオストロの城』マップ
じゃあ,このまま最後の章ですね。 ブラゼルダではなくてブラカリオストロの城ですねえ。このままオープニングが終わったらどうなるのか?オープニングが終わったら,カリオストロの城に到着します。カリオストロ公国の入口です。手前がカリオストロ公国の旗で,その奥にあるこの黒の十字の旗は,ひょっとしたら伯爵家の旗かもわかんない。まァ国の旗と,貴族の旗の2種類なんでしょうね。よく言われる通りリヒテンシュタインの国旗に似てるので,リヒテンシュタインがモデルなんでしょう。でこのカットの次がいきなり国境のシーンになって,はためく旗のところで色々車が流れて,この橋を渡ったところがカリオストロ公国になるわけですね。 いわゆるここが国境の関所です。 で,これがどこなのかなんですけど,宮崎駿のカリオストロ全体地図っていうのは何種類もあるんです。 今あんまり出てこないんですけども,最も初期に書かれたものがこれです。この頃はだいぶ違う。例えば湖が龍の尾という風に呼ばれたり,あと2つの城があるんですけど,下カリオストロの城の時計台の下に5段階の水車っていうのがあった上でローマ水道で上カリオストロの城に向かって水が流れてる。で,この5段階の水車ってのは何のためにあるのか?っていうと,今はもうこの水車なくなってるんですよ。 
最後に本編で使われている地図ですね。この地図は航空写真で,ルパンが作戦を指示する時の航空写真で,その上がよく設定資料として出てくる白の全体地図です。で,これを見るともうあの5段の水車はなくなってるんですね。 で,何故なくなったのかっていうと,設定が変わったから。実は『カリオストロの城』には,幻のDパートというのがあった。『カリオストロの城』はABCDの4つのパートでできてるんですね。 このDパートっていうのが,最終のクライマックスパートってので,宮崎駿がもう涙をのむ思いで,あのカットしたパート。 『カリオストロの城』って自分としては合格点いわゆる90点を出せるはずの作品だったのが,結果的に60点を出せないような作品になっちゃったのは何故かっていうと,このABCDのDパートっていうのがもう大幅にアクションシーンとかカットしなきゃいけなくなった。宮崎自身「妥協した部分がいっぱいある」って言ってるんですけども。 
『カリオストロの城』は
上カリオストロの城
下カリオストロの城
城下町
の3箇所で展開します。上下のカリオストロの城は河を挟んであって,上下の城を繋ぐ水路にある5段階の水車っていうのもこのクライマックスの一部なんですね。もちろん作画的に大変だということもあるんですけども,実は『カリオストロの城』はその水車がやろうとしていた事,結果的に残ったのはローマ水道の水を止めていて,それが抜けたらローマの遺跡そのものが見つかったっていう流れだけど,実はそうじゃない。 もっとすごいクライマックス,5段階の水車が必要な動力が必要な大クライマックスがあったんじゃないのか?っていうのが僕が来週語る予定の『カリオストロの城』の幻のクライマックスを復元するって話ですね。 ピラミッド復元みたいな話なんですけど。
✔下カリオストロの城
これ空想物件っていうシリーズの模型であるんですけど,カリオストロがオートジャイロで階上に着陸した後,広間を 服を脱ぎながら移動して,でここに小さいエレベーター付いてますね。このエレベーターで上がっていって歩いてくと。 そうすると渡り廊下が伸びていってクラリスの部屋に通づる構造になっています。で今コメントで「何故王様が城に住んでないのか?」という風に言ってたんですけども,元々さっきの初期設定の地図を見ると「上カリオストロ」「下カリオストロ」という風に呼んでるんですね。 で,この城は実は下カリオストロの城で,上カリオストロの城は太閤が住んでいたお屋敷の部分なんです。 お屋敷の部分が光のカリオストロ/カリオストロの社交場としてあって,この下カリオストロの城っていうのは,あくまで外敵を防衛する城門であり,同時に秘密の場所でもあった。で,下カリオストロの城のクラリス部屋なんですけども,奥にベッドがあってっていう構造になってますね。 ここに幽閉されたクラリスを救うのがストーリーの大筋になってます。で,最初に銭形警部がいたのが,下カリオストロの城の下に降りて,塀の内側の広場をうろうろしていたらレーザー光線があるという風に気がついた。 下に向かって撃つための大砲が並んでいたり,水路があったりします。 この広場っていうのが,実は伯爵とクラリスが結婚するための礼拝堂です。奥の方にちゃんと十字架があって礼拝堂になってますね。 この礼拝堂の下に秘密の印刷所があって,この印刷所のさらに下にはルパンたちが落とされた迷路があるっていう風な構造になってます。
何故模型で再現してるのかっていうと,これぐらい設定がちゃんとしているんですね。 なんか普通だったら,模型なんて作れないんですよ。 でも宮崎駿はこういう位置関係っていうのを把握して,多分この模型が作られる以前,この位置関係がはっきり本人の頭の中にあった。
✔水路
上下カリオストロの城を繋ぐ水路。
ローマ時代に作られたローマ水道,ローマ人が何10kmも遠くの水源から町へ水を運ぶためにやってくる橋…橋じゃないんですけど,この中に中空のパイプが通っていて水が流れる水道なんですね。 
✔上カリオストロの城
で,上カリオストロの城には太閤殿下が住んでいます。で,ルパンと次元が太閤殿下のところまで行って「もう焼け落ちてるな」と言って森の間を歩いていって,小さい階段をトントントンとステップで歩いていって,プールの畔まで来る。でここの階段でルパンがしらばっくれてると次元に「お前知ってたんだな」っていう風にコブラツイストをかけられて,でその後,夜にルパンと次元が忍び込むのがプールの給水口ですね。で,この給水口からプールに潜っていって,この中を通って,ルパンだけがプールから水路をずーっと行って,下カリオストロの城に入って,最後バケツに乗って下カリオストロの城の上まで汲み上げられていって,クラリスの間に入るていう風になっています。で,ラストで時計台が破壊された後,一気にプールの水位が下がって,プールの中にあったローマ遺跡…本当のお宝が見えて,でさっきルパンたちが忍び込んだプールの畔の下に,もっと大きい給水設備があって,これがローマ時代,本当に使われてたやつなんでしょうけど,こっから最後,クラリスがルパンに抱かれて一緒に上がってきたのがプールの中に沈んでいた遺跡の道ですね。 で,この後この遺跡の階段を登っていって,下カリオストロの城を見ると。だから途中で本編の中で次元と五衛門が基本的に潜んでいたのが,この太閤の家なんですね。 で,この太閤の家から覗くと,ちょうど下カリオストロの城は正面構図から見えるということにになっています。これが『カリオストロの城』の全体の位置構造です。
✔城下町
これだけでは,さっき言ったこの3つの場所が分かりにくいんで,さらに追加で模型を作ってみました。 この下カリオストロの城の後ろの裏側ですね。 この裏側がどうなってるのか?多分これ正確だと思うんですけど,カリオストロの城下町があって,ローマ法王様が来た道がある。 ローマ時代の石畳の道がずっと続いていて街になってると。 ただ,この門の奥の方が街で,この門が何のためにあるかというと,中世の城下町っていうのは大体夕方の5時とか6時に教会の鐘が鳴ると,この門は閉鎖されるんです。 閉鎖されて入れなくなる。でこの中で人が住んで商売してて,本当は夕方になると外は人が誰もいなくなるんですね。 では,何故門の外側に家があるのか? 当時からやっぱ遅刻するヤツっているんですよね。 夜遅くなってきたり,隣町に行って戻って門締まってたり,どっか別のところに行って遊んで帰ってきたら帰れないヤツのために大体門の外には簡易的なホテルができる。 宿泊施設とか賭博場とかができる。何故かというと門の中は城下町で市なわけです。 ここの中は市民税がかかるわけ。ところが門外は市民税を免除されてる。法的にも一応別区画で,売春婦とかこういうとこにいるんです。 売春宿があったり,賭博場があったり。 あと,街の中では禁止されてるようなものが門外にあった。だからパリにしてもヨーロッパ中の町ってのは基本的に壁があって,壁の外側にも家があってどんどん範囲が広がっていく。 基本的に中心部に行くほど規律が保たれていて,外側に行くほど,どんどんどんどん治外法権になって,実は門外の辺りが一番楽しかったですね。新宿とか渋谷とか,今,東京のいわゆる繁華街の全ては,こういう門外の町が発展していった部分です。 で,門の中は下カリオストロの城と跳ね橋で繋がっている。いつでも封鎖できるんですね。
で城下町の中に目を通してみると,最初にルパンと次元がスパゲティを食べてた店は多分門のすぐ内側。初期の案では,イメージボードがあるんですけども。次元はマスタードが好きだとか,そういうトリビアも書いてるんですけど,こっちの方の絵を見てください。こちらの方の絵で下カリオストロの城を見張っているルパンと次元がいる。バルコニーみたいなとこで見張ってるルパンのイメージっていうのがあるんですね。 だから最初の宮崎さんのアイデアではルパンをこの辺に宿泊させようとしてたんですけども,ちょっとややこしくなったんで,やめておそらくルパンが宿泊してたのは門内の外れの宿の2階か3階です。 何故かというと,こっから低い屋根が続いて,影の軍団に襲われた時に,ルパンと次元は屋根をいくつか乗り越えてから路上のフィアットに飛び乗るんですね。  で,ルパンたちは壁から飛び出して屋根をいくつか乗り越えた後,フィアットに乗り込んで,城下町の広い通りを抜けてから,めちゃくちゃ細い路地で影の軍団を壁に押し付けて,ガーっと引き上がって,城下町の大通りをぐるぐるぐる走ってカーチェイスやるんですけども。 本当にすごいのは調べてみると,地図を作ったり模型を作ったりすると,宮崎駿の頭の中ではこれ全部が3 Dでできてるって事。
■ 地理考証
『カリオストロの城』のモデルになった場所っていうのはリヒテンシュタイン公国だという風に言われてます。僕もそう思います。カリオストロの城というのは人口3500人とされていて,リヒテンシュタイン公国の人口は3万 人で10倍ぐらいあるんですけども,国連に加盟していて,最も古いヨーロッパの貴族の血を持っていて,切手印刷っていう精巧な印刷技術でなんとか生き残ってるとこもそっくりなんですよ。 
これルパンと次元のオープニングのカット。 細い橋で湖を走破したルートですね。地中海沿岸のモナコから北上して,スイスの外れに向かう。多分冒頭の方で走ってる海岸線はモナコ付近で,ちゃんと地中海の海岸線が右側に見えてます。そこから,海岸線から陸地に入っていって北イタリアに入る。ジェノバの手前あたりで北上して,大体今の車だったらGoogleマップ上で6時間で走れるんですけども,フィアットで山もろくに登れないから1週間くらいはかかるだろうと。国際警察に追われてるから脇道行ったんだろうし。オープニングで湖を橋でひたすら渡るシーン。皆さん憶えてますかね? ここだけは分かったんですよ。 これ,ちょうど地中海沿岸とリヒテンシュタインの中間点の…僕ここにマークしてるんですけども,ヴィッソーネってあたりなんですね。でヴィッソーネにはルガノ湖っていう湖があって,ルガノ湖にはものすごく細い橋があるんですよ。 今はもう太くなっちゃってるんですけど『カリオストロの城』の当時はここにめちゃ細い橋があった。車1台がなんとか通れる片側一車線の橋。これ橋というか堤防なんですね。 この上と下の水位差っていうのを作る堤防なんですけど,ここにすっごい細い橋がかかって,このスイスの外れのルガノ湖あたりが,オープニングのカットなので,皆さんも余裕があればモナコからリヒテンシュタインまでドライブしてルパンの道をたどってみてください。 
■ 時代考証
カリオストロ公国の場所は,リヒテンシュタインだろうという人もいればスイスだろうという人もいると。であの辺りの湖とか山の地形って,ものすごい複雑なので,どこにカリオストロの城があってもおかしくない。たださっきのミニチュアでも説明した通り,宮崎駿の頭の中では,極めて論理的に3 Dでカリオストロの全体の構造イメージができてる。 城の中もそうですし,城下町と部屋の中の配置もできている。 ただ,唯一おかしいのが時系列です。こっから最後の話に入ります。すいません。あと15分かな? 10分ぐらいで終わると思います。 後ろのCパートのラストですね。 部屋で何もかも諦めているルパンがいて,不二子が部屋の外側から新聞の記事をルパンにポイと投げる。ルパンはその新聞記事を見て,クラリスとカリオストロのルモンド紙の結婚記事を見てびっくりします。 この中で扱われてる珍しい唯一の日時がわかるヤツなんですね。ルモンド紙の設定は1968年9月12日って書いてある。 つまり,1968年9月12日。オープニングでコスモスが咲いてたので9月と分かるんですけど,なので皆様のブログで色々調べてください。 「ルパン三世カリオストロの城の時代は1968年9月12日だ」とどのブログも特定してるんですね。ところがこれ変なんです。 矛盾してるんです。 もう1回繰り返しますけど,宮崎駿はこういう論理的な目に見える矛盾っていうのがほぼないんですよ。一切ないと言ってもいいぐらいですけど,僕にも目の届かないものがありますから,ほぼないと思います。 ないんですよ。 で,何より変なのが,当たり前ですけども次元も銭形警部もカップうどん食べてるんですよね。 カリオストロ伯爵がご飯食べてる時に,それ見張ってる時の次元たちが食べてるのがカップうどんなんですね。 カップうどん/カップラーメンていうのは,カップヌードルの発売が1971年,カップうどんは,それよりさらに遅れて1975年なんですね。 マルちゃんのカップうどん「赤いきつね」というのが歴史上初めてのカップうどんになって,これが「赤いきつね」になっていくんですけども,1971年,1975年のものをこんなに不用意に出すはずがないんですね。 なのでよくルパンのトリビアとかを見ると,「これは宮崎駿の記憶違い。 ついついカップうどんが出しちゃったけども,実際『カリオストロの城』ってのは1968年なんだ」という風にどこにでも書いてあります。 でも僕これ変だと思うんですよ。 そんなことするよりは大体,カップ麺のシーンが不自然なんですよ。 っていうのはルパン三世シリーズの中で日時が書いてあるものなんて,これ以外には宮崎駿自身が手がけた『さらば愛しきルパンよ』の冒頭の1981年って出てなってくるんですけども,それぐらいしかないんですね。変なんです。 こんな後々で論理矛盾を起こすようなカットをわざわざ観客に見せる必要がないんですね。 何かを見せたかったんですね。何を見せたかったのか? これは宮崎駿監督から観客への謎かけメッセージなんです。「ほとんどの人には伝わんないんだろうけど,これ伝わって欲しいな,何故1968年って書いたのか,みんなに分かって欲しいな」と思って,だからわざわざ1968年っていう日付を入れた。だって映画の公開が1978年ですよ。 だから10年前の話にする必要は一切ないんです。何故そんなことをしたのかですね。
ここで最初のクエスチョンに戻るんですよ。何故ルパンはゴート札を捨てたのか?偽札を捨てたのか?国営カジノで通用してるんだから,そのまま持っていけばいい。50億って言ってます。もし日本円だとしても大して金額ですし,米ドルだとしたら6000億円だから,もう泥棒なんか引退できるような,一緒に遊べるような額なんですけど。 『ルパン三世』に関して宮崎さんはいろんなところで後に語ってます。宮崎駿の出発点,折り返し点とか,いろんなインタビューがとかあるんですけども,その中で『カリオストロの城』を引き受けた時の気持ちが書いてあります。 
ールパンの劇場版をやらないかと言われた時,何故今更?って僕は思ったんです。 率直に言って,つまり僕の思いとしては『ルパン』ていうのは60年代から70年代にかけて生きていたキャラクターで,今更出てくるには古すぎると思いました。自分なりのルパン像を作らなければならないはめになった時,「1960年代末〜1970年代初頭だけ一番生き生きしてた男が今生き恥をさらしをさらして,なんとか生きてる」という風に構えるしか手がなかったんですー
っていう風に言ってます。『ルパン三世』の成り立ちていうのを思い出せば,これもう1時間半ぐらい前に話したんですけども,元々モンキーパンチが1967年から69年に描いた漫画は宮崎駿は好きだって言ってるんですね。好きだったって言って,しかしアニメ化に関わった1971年の第1シリーズの時にもう宮崎駿は「もうこのルパンは古い,これじゃない,もうこんな泥棒貴族じゃなくて貧乏なイタリアの若者にしなければ」っていう風に71年の段階で言ってるんですね。
このクラリスの新聞記事が出ていた1968年とは何かというと実は『コクリコ坂から』なんです。『コクリコ坂から』の舞台となった, 神田カルチェラタン闘争ってのがありました。カルチャラタンって,フランスのカルチェラタン区っていう区があるんですけど,そこで自由のために戦った人たちがいた。 フランスでおきた学生闘争。権力との介入とベトナム戦争の反対。 そして日本でも,ベトナム戦争に反対するために,御茶ノ水から神田までの間に防衛戦線を張って闘った。それが1968年。で,この神田カルチェラタン闘争に学生は負けたんですね。 『太陽の王子ホルス』が公開失敗したのが1968年で,それと同時に日本で管理社会が始まって,ルパンたちの居場所がなくなったのが1968年って特定の時代だったんです。 だから宮崎駿は「1968年のあの時代の話」っていう風にメッセージを送りたいわけです。あの1968年っていうのは,管理社会がまだ成立する前,こっから先カルチェラタン闘争に破れて管理社会が始まってしまうんですけど,その直前っていうのは,貴族の末裔の泥棒っていう設定が信じられた時代なんですね。自由と権力が対等に戦ってたように見えた,歴史上の奇跡的な一瞬だったんです。 そんな時代にルパンは生きていた。でその設定を時代遅れに71年の段階で宮崎駿は感じたからこそ,貧乏なイタリア人という設定に切り替えた。『カリオストロの城』っていうのは,それよりさらに10年近く後の1978年。10年以上も長く生き過ぎたルパン。 もっと早くに決着して,ルパンがまだ生き恥をさらしてると時代を宮崎駿は描こうとしてるんですね。 宮崎駿のコメントですね。 
ー現実の世界に取り残されたルパンに一体何ができるだろう?せいぜい少女の心を盗むぐらいしか残されていない…
というですね,宮崎駿が『カリオストロの城』を公開した1年後に語った言葉ですね。ルパンには,実は『カリオストロの城』が公開された10年後の世界には,盗みたいものとか盗めるものがもうなくなっちゃってるんですね。 だからもう本気で欲しいものがない。言い方悪くすれば老いてしまった。 いい言い方すれば成長した。若い頃みたいに掃除機でなんか宝石を盗んだり,バカみたいに稼いで女はべらして酒を飲んだりとすることがバカらしくてできないんですね。 馬鹿らしくてできないから,フィアットに乗って次元と2人で貧乏旅行して,でもたまに自分の中のまだ生きてる青春みたいなものとか,そういうものを信じたいからこそ,国営カジノに忍び込んで大変危険な博打をやったわけですね。 それが偽物だと知った時のルパンの心のショックですね。 じゃあルパンは本物しか欲しくないような本物の人なのか? そうでもないんですね。ていうのは,何度もコンテの中で書いてる通り,全倒な人がいてこ,そのルパン自身が最も偽物なんですよ。 ルパン自身が全倒な社会の中の偽物だからこそ,本物が欲しいと思ってカジノに忍び込んだら,そのカジノにあるのも偽物の金だったという。 この切なさがルパン三世を動かしてるわけですね。だから偽物では我慢できない。偽物で我慢できない。 何故かって言うと,ルパン自身が偽物だから,そこで納得できないわけですね。 かつての自分,泥棒という行為に正当性とか正義とかそういう風なものが感じてた,やりがいを感じた自分っていうのに戻りたくてカリオストロの城に行くわけですね。 ルパンがカリオストロの城に行くのは,昔の自分に決着をつけるためとか,ゴート札/偽札の秘密を探るためとか色々言われてるんですけど,そうじゃなくて,もう一度青春を取り戻したいという,今でいうところの自分探しなんですよね。あの頃のように本気で泥棒ができる自分に戻りたいという風に思って相棒の次元を誘って,もう五衛門は「そんなもんに付き合えるか」って最初の段階で降りちゃってるんで,次元と2人で旅する事になっちゃうんですけども。 五衛門はそんなものに付き合ってくれないと。そうじゃなくて次元と2人であの頃10年前のように熱かった俺たちに戻らないか?っていうような気持ちで。もちろん言葉で言わないんですよ。だからカリオストロの城彼っていう,行ってもしょうがないところへ,ルパンはもう一回,自分自身が何かを本気で欲しいと思えた時代というのに戻りたくて理由も分からずに旅に立ってしまう。
だからなんか青春探しの旅であって,この『カリオストロの城』でルパンの中途半端な青春はやっと終わるんですけども。なので,ルパンが途中で病気になって思い出語る時に,熱かった時代,自分が本気になれた時代のこと語るんですけども,なんかやっぱすごいのが,そこで出会った女の子のことを思い出せなかったことなんですね。 ルパンが10年前(1960年代?)にカリオストロの城に忍び込んでやられてしまって,もうダメかな? と思った時に幼い頃のクラリスに水をもらって助けてもらった。 その幼いクラリスの手の指のところに指輪がちゃんと描いてあるんです。でこの時のルパンの回想シーンが綺麗なんですけども,セリフがすごい。
ー震える手で水を飲ませてくれた,その娘の指に指輪が光っていてさ,難しい話さ,あの指輪を見るまですっかり忘れちまって…
っていう風に語るんですよ。これ何がすごいかって,ルパンはその女の子のことを憶えてなかったんですね。 指輪しか憶えてなかった。「震える手で水を飲ませてくれた。 その子の指にあの指輪が光ってた指輪を見るまで忘れた」ってことは,自分が死にかけた時に助けてくれた女の子ではなくて,その女の子が身につけていた金目のものしか見えてなかったんです。 これが若い頃のルパン。若い頃のルパンっていうのは何かっていうと,助けてくれた女の子の指輪,金目のものしか見えてない。ルパンが戻りたかった青春時代って,自分が何か本気で欲しかった時代っていうのはそんなに安っぽい自分なんですね。 でも今自分は成長しちゃったから,なんかその優しくしてくれた思い出がやっと今見えるようになったんです。でも見えるようになった今,自分はそれを手に出す権利はないっていうのも分かってしまうていうのが,この『カリオストロの城』の中の根本にある宮崎駿が作りたいドラマ。そのクラリスのことは憶えてなくて,指輪のことだけしか憶えてなかった自分のことを情けない話だっていう風に言うためのもの,金目当てていう風に言うと安っぽいんですけど,それがルパンが欲しかった若さ。もう一回戻りたかった愚かな若さ。でもルパンはもうすでに成長してしまって,女の子に自分のことをおじ様って呼ばせてしまうぐらい,もう自分はこの世界の人間じゃない。で,一方で次元と2人で全倒な世界に生きていけないことも分かっているんですね。でもルパンはこの熱かった時代にもう一回生きようと決心するんですね。 もっと自分は愚かでなくて,もう一回やり直したいと思うからこその,この新聞記事ですね。だからこそ,この瞬間ルパンは1968年の世界に生きることを決意してるから,ルパンにだけ見える「1968年」って文字が見えた。だから,宮崎駿はもうここで,映画は論理破綻しても構わない。 ただ,ここでルパンが目指してるのは1978年の現代ではなくて,この瞬間ルパンは1968年のカルチェラタン闘争があった頃,ルパンがまだ本気で,まだ自分が盗むという行為に正義ややりがいを考えた時代に戻りたいと思ったからこそ,一瞬だけこの年代と日付を出して,その後はもう一切,それ触れずに走ると。だからこの矛盾したものってのはどうしようもないから,もう気がつく人だけ出してとかでもポンってこう出しちゃったんですね。なんせこの当時はビデオとかが発売されると思ってないんですから。 ビデオテープが後に発売されて『ルパン』を何回もリピートで観られると思ってないから,こういう風な観せ方をするんですね。だから,このルパンが見えていた風景を表現するために敢えて,1968年9月12日ってメッセージを宮崎駿は選んだんですけども,やっぱりその観てる人は本当は1968年の話なんじゃないのか?っていう風に思っちゃうんですよね。 でもそれをするんだったらカップうどんのシーンとか入れないです。 というよりも元々この日付の新聞を出す理由がどこにもない。日付なしの新聞記事でいいんですよ。日付書く必要が本当はないんですよ。でもそれを何故書いたのかっていうと,1968年の世界に生きていきたいっていう風に思ったからですね。 ルパンが最も輝いていた時代に,こっから時計を巻き戻したい。 でもその時計の針は戻らないですね。 カジノに閉じ込められたお札は偽物だったし,カリオストロの城に閉じ込められたお姫様は本物なんですよ。 本物はルパンには重すぎたんですよね。 悲しいことに。
『ルパン三世』のこの話でやっぱ何が切なくて悲しいのか?っていうと,若さを取り戻すため,青春を取り戻すためにをしてたっていうはずだったのが,この映画全体が若さを失う旅の話なんですね。 もう自分のことはおじ様と言われて,「カリオストロの城っていうのはもう今のルパンには,娘の心ぐらいしか盗むのがないのです」っていうのメッセージは,クラリスの側からみると甘くてホロ苦い恋と冒険の物語なんですけど,ルパンの側から見ると,『地獄の黙示録』なんですね。奥へ進むほど絶望が濃くなっていく。ローマの遺跡も,クラリスの「連れて行ってください」という言葉も,全てルパンには扱い兼ねるものだった。 これがラストシーンの方に集約されていくっていう,諦めの話になっていきます。『カリオストロの城』ってルパン自身の挫折と再生のストーリーだと思うんですけど,次回は『カリオストロの城』の後編をやります。
■ カリオストロ伯爵の目的
僕が『カリオストロの城』でやっぱ一番あの面白いなと思ってこだわってるのは,何故カリオストロ伯爵は結婚という道を望んだのか?っていうことなんですね。で,何故かっていうと,前回でも話した通り『カリオストロの城』におけるルパンの動機って,なんかあんまりはっきりしないんですね。あのゴート札の謎を暴くというのは不自然だし,クラリスの救出…クラリスを助けるというのならば,なんかラストで原版欲しいのもわかんないしですね。 であと,クラリスの動機もはっきりしないと。とにかく好きでもない男の妻になるのは嫌っていうんだったら,修道院時代に逃げればいいんであって,要するに城に連れてこられてから,車盗んで逃げるぐらいだったら,もっと警備も浅い修道院時代に逃げればいいんであるし,あとカリオストロ公国という国をよくしたいというんだったらば,伯爵と結婚して,伯爵の時代は無理だとしても,伯爵の子供の時代というか,自分と伯爵の間の子供ですね。絶対伯爵が先に死にますから,その時代で革命というか,やり直せばいいというのであって,実はルパンの動機も目的も,クラリスの動機も目的もはっきりしないんですよね。 で,この作品で,唯一目的がはっきりしてるのがカリオストロ伯爵なんですよ。 例えば有名なAパートですねえ。ルパンがカリオストロの城に侵入してから,カリオストロ伯爵がクラリスを締め上げるシーンです。 逃げたクラリスを締め上げて「人殺し」という風に言われた時に「俺の手が血まみれたとかいうわけでさ」「人殺し!あんた人間じゃないわ」「そうとも俺の手は血まみれだ,お前もそうだ。 我が伯爵家は代々お前たち太閤家の影として,謀略と暗殺を司り国を支えてきたのだ。それを知らんとは言わせんぞ」ていう風に語りかけるわけです。 「クラリス400年の長きに渡り光と影に別れ,2つのカリオスト家が今1つになろうとしてるんだよ」っていう風に感じで言うわけですよね。で,「この2つの指輪を1つにすれば,秘められた先祖の財宝がよみがえるのだ」という風にカリオストロ伯爵がクラリスに詰め寄るわけですね。 ここら辺でカリオストロ伯爵の動機がはっきり分かる。この台詞で分かる通り,伯爵の目的が一応カリオストロ家の統一,2つに分かれたカリオストロ家の統一と秘められた財宝であると。
でただ,なんかそれだけじゃない感じがすると。それがルパンが指摘してることなんですよね。 ルパンが最初に侵入した時に襲われた「影」と呼ばれる城の護衛。なんか手に爪出てるヤツ。 その女動も背中にメッセージをつけてたとハハっていう風に読んだのが「色と欲の伯爵の花嫁クラリスはいただきます 近日参上ルパン三世」っていう風に予告状を出すわけですね。で,これを聞いてる時の伯爵はふふンって感じですごい余裕で聞いてます。色と欲っていうのは何か? 色っていうのは性欲のことですね。で欲っていうのは権力への欲望っていうことです。つまり「色と欲」っていうのは,まあ女も欲しいし,金も欲しい,権力も欲しいっていう風に言うんですけども,伯爵の隠れた欲望というそのクラリス自身への恋慕,愛情,恋愛感情っていうのを予告状で指摘したと。でもしかし伯爵は余裕なんです。何故かって言うと伯爵にとって多分,この時点でクラリスは恋愛対象ではないと。だからこそ,結婚までクラリスを修道院に放り込んでたわけですよね。もし恋愛対象だったら結婚式まで修道院に放り込んどくはずがないわけですよ。そんなもん,適当になんかいいこと言ってりゃいいわけですからですね。適当におだてたりして,これほどの手腕がある人だったら,10歳ぐらいの娘を5年間ぐらい手名付けておけばなんとかなるものです。 10年間修道院に放り込んで全く動きをしなかったってことは,実は興味がなかった。 それまで興味がなかったという証しなんですね。でもそういうことを知ってても,ルパンは最後にクラリスを助けるシーンで,大司教に化けて結婚式に忍び込んだルパンは隙をついてクラリスを抱き寄せて,おまけに指輪まで奪います。 そん時のルパンは「おじ様ァ」って抱きつかれてムフフと大喜びに喜んで「焼かない焼かない♪ロリコン伯爵やけどすっぞ♪」って言ってコートを開けると,中に花火があって,これがクライマックスシーン繋がっていくんですけども,ここでも「焼かない焼かない♪ロリコン伯爵♪」っていう風に言って,カリオストロ伯爵のクラリスに対する恋愛感情をあおったんですね。でもそれも実はっきりしないわけです。 というわけで,この映画の中で唯一目的がはっきりしてる人物カリオストロ博爵の目的は,実は一応以上の3つに整理されると思います。 
カリオストロ家の統一/太閤家への復讐
秘められた財宝
クラリスへの恋慕
伯爵の目的と信じられてるもの。今回は一番最初これを疑うところから始まります。カリオストロ家の統一ですね。太閤家の下端にされたけど,というそういう伯爵家の復讐です。 次は秘められた財宝。伯爵も,秘められた在庫って実は正体なんかわかんないけど,すげえお宝があるに違いないと思ってるんですね。あと3つクラリスへの恋慕,恋愛感情ですね。 これは意識してないので,指摘されると切れるっていう風に一般的にはファンの間で信じられてると。これを1つずつ検証してみようと思います。 
✔カリオストロ家の統一/太閤家への復讐
まずカリオストロ家の統一ですね。復讐ってやつなんですけど,これ実は別に『カリオストロの城』だけでなくて,宮崎アニメの定番中の定番なんですね。っていうのは例えば『未来少年コナン』では,レプカという悪役が太陽エネルギーで世界を支配すると,そのためにラオ博士の娘ラナを捕まえなければならないということで,同じような構造になってると。で『天空のラピュタ』ではムスカがラピュタの力で世界を支配する。それもやっぱ俺んところはどちらかいうとマイナーなラピュタ家だった。 だから本家ラピュタ家のシタを捕まえて…っていうので,割とそっくりになってるわけですね。だからこれから考えると,いかにもいつもの宮崎アニメらしい悪役という風にも見えるんですね。でもラナはその太陽エネルギー復活に必要っていう理由があるし,シータは飛行石と遺産を持ってるっていう理由がある。それに対して何故クラリスじゃなきゃいけないのか?指輪だけあればいいじゃん?ていうですね,理由がすごく曖昧なわけです。 で,おまけにさっき話した何故カリオストロ家を統一したいのか?っていうのは,すでにカリオストロ家は,ゴート札,闇社会を支配してるわけなんですよ。これ以上何を望んでたのか? なぜ伯爵家と太閤家,光と闇を統一しなければならないのか?っていう理由がなんとなく,僕らにはよくわからないわけですね。 で,実はこの辺は,前回見せた初期設定のマップに答えが隠されたと僕は思ってます。 これが初期設定のマップですね。 ここに上カリオストロと下カリオストロって書いてある。 つまりカリオストロ家っていうのは,太閤家伯爵家って言うんではなく,上と下に分かれていた。いわゆるラピュタで言うと,ラピュタ人の中でも神官クラスの人は神の帰りを待っていたと,それに比べて下の方に住んでる人たちは,ラピュタによる地球の支配っていうのを狙ってたという風に,実は上層部と下層部で狙いが違うっていうのを宮崎さんは社会行動の差っていうのは好きでよく使うんですね。 で伯爵の説明「我が伯爵家は代々お前たち,太閤家の影として謀略と暗殺を司り国を支えてきた」という風に言ってます。これで分かる通り,実はカリオストロ伯爵の元々の仕事は,偽札作りではないんですよね。印刷にはあまりタッチせず,実は謀略と暗殺が,下カリオストロと言われる伯爵家の仕事。 
じゃあ偽札っていうのは上カリオストロ/太閤家の仕事でなかったのか?っていう風に僕は考えてるんですね。何故かって言うと,当時の通貨の説明からやります。 ルパンが銭形警部と一緒に地下牢から脱出して印刷機を見つけた後,「これは何だろう? ルパン説明してくれ」「これがゴート札の心臓部だ」と言った後に出てくる説明です。 
「中世以来,ヨーロッパの動乱の影に必ず動いていた偽札。ブルボン王朝を破滅させ,ナポレオンの資金源となり,1927年大恐慌や世界教皇の引き金にもなった歴史の裏部隊ブラックホールの主役ゴート札。それを暴こうとしたものは1人として生きて帰れなかった」。 
さて,この説明です。 お分かりでしょうか? 実はカリオストロって紙幣を作ってたのはこの100年ぐらいのことなんですね。実はヨーロッパでお金が使われたっていうのは,19世紀にイギリスでソブリン金貨っていうのが流通してた頃です。分かりますか? 『カリブ海の海賊』とかに出てくる金貨。なんかみんな金貨持ってますね。あれって大体スペイン金貨かイギリスのソブリン金貨だったんですね。で,このイギリスで19世紀にソブリン金貨っていうのが発行された時に,金貨をあまりにたくさん持つのが重いから,それと同じ金額というかの値打ちを銀行が保証するという銀行券を発行したんですね。これを兌換貨幣っていう風に言います。で,この兌換貨幣を19世紀にイギリスが発行した銀行権が今の僕らの持っているお札。千円札とか一万円札とかの大元のやつなんですね。なので初期のカリオストロ家っていうのは,実は金貨の偽造をやっていたんですね。 
で,次の絵です。 中世フランス革命の時のナポレオンの風刺画がですね。 これ当時の風刺画を宮崎さんが自分のタッチで描いてるんですけど,地球の形のダイナマイトを持ってるナポレオンという風に描いてます。で,地球に導火線がついてる。これどういう意味かっていうと,「ナポレオンは世界制服を目指していた。しかし,それにはタイムリミットがあった」と。導火線に火がついちゃってる。これどういう意味かっていうと,ナポレオンは一生懸命,世界政府も画策したけど,タイムリミットが近い。何故かって言うと彼の財布は破けた。 つまり破産しかけてるっていうのを描いてるわけですね。この1枚の当時の風刺画でナポレオンの財政ってのは実は極めて危いもので,これがカリオストロ公国の後押しだっていう風に宮崎さんは設定してるわけですね。 
「ブルボン王朝を破滅させ…」っていうのは,首飾り事件っていうのが昔ありました。何かっていうと,マリー・アントワネットが買ったわけじゃないんだけども,親友友達の婦人が買おうとしてた,ものすげえ高い4000億円ぐらいの値打ちがあるような首飾り,宝石の首飾りを買って,でそれの保証人みたいなのにマリーがなって。で後にそれは転成したんですけど,フランス中が大スキャンダルになって。 でマリー・アントワネットはレズビアン疑惑をかけられて裁判までやったんだけども,その絶対に悪い,マリーを引っかけようとしたヤツらが無罪放免されてしまって,パリの市民はマリー・アントワネットに対してすごい反感を持つようになったと。で,これがフランス革命の一つのきっかけになったという風に言われてるんですね。で,そんな中で実際にそのマリー・アントワネットにすごく高価な宝石を押し付けようとしたのが山師カリオストロ。これ実在の人物です。山師カリオストロっていうのが,そのカリオストロ伯爵と自分で言ってるだけなんですけど,こいつは錬金術師であってフリーメイソンのメンバーであった。これは歴史的真実だったんですけど,でこのじゃあコイツが本当に伯爵かどうか?というと,そうじゃなかったんですよね。イタリアのシチリア島の田舎者だったというのを調べた人が言ったんです。それ調べたのが誰かっていうと,ドイツで当時文豪であり政治家であって思想家であったゲーテてですけど(笑) このゲーテが「けしからん,カリオストロの正体俺が突き止めてやる」って個人でイタリア旅行して,それを『イタリア紀行』という本にまとめて出版して「ついに俺はカリオストロの正体に突き止めたぜ」っていう本を出版したんですけど,それぐらい大事件だった。 それが彼が錬金術師であってフリーメーソンだったっていうのが,その宮崎さんが今回このアニメの中でカリオストロ伯爵って名前を使う理由です。この錬金術師ってところに注目してください。
で,まあのその1つ前の絵のこいつはドイツ30年戦争。17世紀に起きたプロテスタントvsカトリックの最後で最大の宗教戦争という風に言われてるんですけども,その背景で銀行家と金貸しがお金の査定をしてる。つまり当時のイギリスのソブリン銀貨もそうだったんですけど,あらゆる金貨とかお金っていうのは,1ドルとか1ポンドという額面上の値打ちを示してないんですね。 1つ1つの硬貨ごとに重さを比重を測って,その中に金が何グラム入ってるのか?っていうのを見て値打ちを決めてた。だから上に刻印してある値打ちっていうのは一応なんか形式上のもんであって,それの交換やってるところ。 まあまあそういう時代だったんですよ。で,第二次世界大戦。墜落したイギリス空軍の倉庫から大量の偽マルク札が発見されて,それをドイツ兵が見ている。つまり第二次世界大戦で連合軍を勝利に導いたのも,やっぱカリオストロ公国なのかもしれない。 イギリスの国家ともう手を組んで偽札を作ってたというようなエピソードがここに入ってるわけですね。 
で,話を戻しますけども,これで分かる通り,印刷という形で偽金を作り出したのは,実はカリオストロ家は20世紀に入ってからなんです。16世紀から19世紀までの間のほとんどの時代,偽金貨を作っていたという風にしなければ話がおかしい。城に印刷工場がありましたね。 あれ城の印刷工場っていうのは元々カリオストロ伯爵家の得意技である謀略とか暗殺の舞台の上にその印刷工場を作ったと。つまりあくまで伯爵家の仕事として印刷始めたんですね。なので,どこで偽金貨を作ってたのかっていうのは今回の映画で書いてないんですよ。でもそれは多分いわゆる上カリオストロ家/太閤家であったというのが僕の妄想なんですけど妄想です。 でないと辻つまが合わないからですね。かつてのカリオストロ家は上下カリオストロ家で役割分担があったんですね。上カリオストロ家の役割っていうのは,偽金貨を作ることと政治を司る,つまり,婚姻関係でヨーロッパ中と結婚関係を結ぶということです。 で,伯爵家っていうのは陰謀と暗殺,これが2つの大きい流れなんですね。で実際の本物の山師・錬金術師であって,銅とか鉛などの卑しい金属から純金を作る魔法のイメージで自分たちが発行する金貨の価値っていうのをつけてたっていうのが宮崎さんがつけたおそらくカリオストロという名前と偽金作りっていうことだと思います。もしこれが最初から紙幣にしてもいいんだったら,別に19世紀からのカリオストロ家のことを書きゃいいだけであって,わざわざ1517年とか年号書いてるっていうことは,これもう金貨ですよって言ってるようなもんなんですね。 でも上カリオストロ家の金貨が通用しなくなってしまった。そこで偽金作りまで下カリオストロ伯爵家が受け持つことになってしまって,両家のパワーバランスが崩れたと。パワーバランス的には上カリオストロ家は偽金を作り,政治を司さどる。下カリオストロ家は暴略と暗殺。これで一応なんかアイドルとマネージャーみたいな役割分担はできてたんですけども,ところが上カリオストロ家の偽金が通用しなくなったおかげで,下カリオストロ家が贋金作るようになってきて,両者のパワーバランスがつかなくなると。で太閤家が偽金を作れず,我が伯爵家で偽紙幣を作るんだったら,何故伯爵家は下に甘じなければいけないのか?って。何故俺たちは太閤家の下に作らなければならないのか。彼はその伯爵の疑問というか怒りをぶちまける。本当にその通りなんですね。 で,そのせいで上カリオストロ家は不要だとして伯爵は暗殺を企らんで焼き打ちをして,なおかつカリオストロ公国の近代化に乗り出したと。これがおそらく太閤家焼き討ちの真実。実は目的はカリオストロ公国の近代化だったんですね。
では何故太閤家の偽金貨が通用しなくなったのか?これはさっきも話した通り,ソブリン金貨っていうのが19世紀に発行した時から,もう大量の金貨を持ち歩いて支払うということが事実上無意味になってしまった。おまけにその金を持ってる者だけしか通貨を発行できないんだったら国際的な経済が回らなくなってきてしまう。兌換紙幣,いつでも金とか銀に変えれるものから不換紙幣に移行して,太閤家の偽金貨作り自体が時代遅れになっちゃったんですね。 で,これが上カリオストロ家を殺しちゃったなくしちゃった理由だという風に思います。 
ではなくしちゃったんなら,もうなくしちゃったんでいいじゃないですか。 伯爵が結婚して太閤家殺しちゃったんだから,何故上下カリオストロ家をもう1回統一する必要があったのか? その理由がさっき戻りますね。 何故統一をする必要があったのか?実は秘められた財宝が上カリオストロ城にはあった。伯爵自体も正体わかんないけど,すごいお宝が上カリオストロ城にあって,このお宝をゲットするには統一しなければいけないという流れになっています。で,財宝とは何だったのか? 映画を見てお分かりの通り,伯爵自体も最後まで知らなかったんですね。 で,映画ではラストで,それはローマ遺跡だったという風に説明してます。で,ちょっと横長の画面になるんですけども上カリオストロ城の前の湖から出てきたローマ遺跡です。 これで見て,皆さんも分かると思うんですけど,何かっていうと普通のローマ遺跡とは違うんですよ。何故かっていうと,あらゆる柱のてっぺんとか見えてる部分,水面の上に浮かんでる部分が金色なんですね。黄金なんですよ。 実はこれ黄金都市なんです。最初に言っちゃうとルパンはそれに気がつかず,
「ローマ人がこの地を追われる時,水門で沈めた。あなたのご先祖様が密かに受け継いだローマ人がこの地を追われる時沈めた。アンタの旦那さんはそれを受け継いだ…まさに人類の宝ってやつさ,俺のポケットには大きすぎた」
っていう風にルパン言ってるんですよね。 で,僕らもそれをすっかり信じちゃったんですけど,これまでに実在したローマ遺跡とは明らかにした違うものが描いてあるんですよ。 このローマ遺跡の元になったものが出てくる秘密になったのが指輪ですね。クラリスがはめてる指輪の一部分をクローズアップで見ると文字が書いてあるわけですね。で,この文字をルパンがゴート文字だという風なことで読みます。
「光と影再び1つとなりて蘇らん 1517年」
年代までも特定されております。で,1517年って何があったのか? さっきのルパンの説明だったら,ご先祖様はローマ人が引き上げていった後,去っていった後にご先祖様が隠したという風に言ってるんですよ。でも変なんですよね。ていうのは1517年っていうのは実はルネッサンス世紀って言われる,ルネサンス活動が一番盛んであった時代で,つまり,時代的にはギリシャローマ時代の文化を見直そう,古代万歳と言われて再評価しようっていう時代だったんです。ご先祖様がこの時期,ローマ遺跡を隠す理由は全くないんですね。確かにこの150年前だったら隠さなきゃいけなかったかもしれないですね。蛮族に押されるかで。そいでこの50年後だったらスペイン王のカール5世っていうやつが,宗教大戦争やってローマの遺跡を壊しまくってローマン攻略っていうことをやったので,ローマの街を破壊し尽くしてローマ遺跡を壊す。 だっけどこれの50年後だったら,そんなことがあったかもしれないですけども,この1517年って,わざわざ宮崎さんが指定してる時代は,その時代はローマ遺跡っていうのは別にあればあったで,素晴らしいもんだという風に言われてた。 ルネッサンスだという風に言われてた時代なんですよね。 
で,もう一回戻りますね。 この水面の上の部分が全て金色になっています。屋根の上も柱も全て金色って,何故かって言うと,大理石の上に黄金を貼ってるからですね。この風景を僕ら見たことがあって,それは何かというと『天空の城ラピュタ』でラピュタの中に兵隊がわーっと入った時に,壁とか柱から金を剥がしてたシーンて思い出しますか?あれ,金剥がしたんですよ。つまり昔の神殿建築っていうのは金色の部分っていうのは金色の塗料を塗ってるんじゃなくて,薄い金を本当に張ってるんですね。だからラピュタの金っていうのは,あれはこうバリバリバリバリ剥がしてるって,石の上に金色の塗料塗ってたんじゃなくて,本当に金箔を張ってるんですよ。純金なんですね。で,このローマ遺跡も同じ風に書いてあって,これ,実際は本当に金が貼ってる状態なんですよ。で,このおそらくこの上カリオストロ家っていうのは,この黄金都市にあった金を自分たちの金貨に使っていたんだと思うんですね。これがかつての繁栄の正体です。しかし1517年あたりにおそらくこの金が枯活してしまったんですね。まあ,上の方に薄く張ってる金箔みたいなものは残ってるんですけども。っていうのは,『カリオストロの城』でルパンとクラリスは最後手をついで歩くところでは,このローマ遺跡って割と大理石色になってるんですよ。冒頭の方で見える上の方に見えるところだけは金色ですね。ルパンとクラリスが歩くところって結構後ろが白い普通の大理石になってるんですけど,もつまり剥がされた後なんですよ。 ということは1517年あたりでもう大体黄金都市の遺産を使い果たしてしまってで,残ってるのは屋根の上とか,柱の上などの取りにくい部分に一部だけだと。で,そこでご先祖様はこの遺跡を水没させて隠すことにしたと。なんでかというと黄金がもうなくなってるっていうのを託隠そうとしたんですね。 かつて金貨を発行していたから。で限られた王族とかカトリック法皇だけに多分この黄金都市見せたんだと思うんですけど,それの噂を根拠に「カリオストロ家には無制限に金貨を発行するだけの財力がある」または「無制限に黄金を作れるような錬金術がある」という風に思わせたと。で,それによって偽金貨の発行を始めたと。じゃ1517年までカリオストロ家っていうのは本当に黄金があったので,黄金金貨を発行していた。でもそれ以降枯渇してしまったので,偽金を作るようになっちゃった。 これがカリオストロ家が2つに分かれた理由であって,この年号の秘密だったんです。 この遺跡を見られてしまったら,もうその黄金が枯活したことがバレてしまうっていうのが,カリオスト家の最大の秘密なんです。 
以上まとめてみました。 分かりやすいように。 はい,これが岡田斗司夫史観による歴史ですね。中世からですね。 1516年ぐらいまではローマ遺跡の黄金でカリオストロ家は繁栄してました。しかし黄金が尽きてイメージダウンを防ぐため遺跡を沈めてしまいました。 で,その後19世紀までは錬金術を売りにして偽金貨を発行しています。で,19世紀から1970年あたりですね,偽金貨から偽紙幣へ事業シフト。 しかし,この事業シフトのおかげでパワーバランスが崩れてしまい,1970年あたりに上カリオストロ家は焼き討ち暗殺になってしまって,1978年,ルパン事変というのがこれ行われます。事変というのは政局が変わるほどの大事件というのを事変というんですけど,ルパン事変による上カリオストロ家の復活ですね。これがカリオストロ家っていうのだけを見た時の歴史年表ですね。 というわけで伯爵の目的,カリオストロ家の統一とは何のためだったのか? という,もうちょっと後で語りますけど,秘められた財宝ってのは何だったのか?っていうのは実は伯爵は分からないままです。で,遺跡を隠した理由っていうのは,黄金が枯活したことを隠すためだったんですけど,ところがそれから400年経っていざ出てきたら,実はそれがローマ遺跡っていう人類の宝になってしまったというのが,このアニメのすごい皮肉なところなんですよね。 
で,伯爵家は既に無用になった太閤家を滅ぼしたんですけども,しかし悲しい事に紙幣による偽札はうまくいってると言っても,最近なんか印刷がうまくやらないって言ってるんですけど,何より国際金融の波というのが訪れていて,もうアニメを作った当時ですら,紙幣よりも電子化されたデータが国際金融市場には流れるようになってしまったんですね。 で,カリオストロ家がもう偽札作ってるのも時代遅れになっていたと。かつて金貨を作っていた上カリオストロ家が時代遅れになったのと同じように,紙幣を作っている下カリオストロも徐々に徐々に時代遅れになっていたと。で,また印刷の精度が落ちて,ジョドーの部下の影たちももう中年のおっさんばかりという状態なんですね。なので実はカリオストロ公国に残ってる財産は2つしかないんです。1つはヨーロッパで一番古い貴族の血筋ですね。 つまり何故クラリスと結婚しなきゃいけなかったのかっていうと,伯爵家と太閤家が1つになると,クラリスと結婚することによって自分たちの子供をいっぱい作って,その子供をイギリスとかフランスとかスペインとかどこでもいいから,嫁がせて,でなんとかどっかの王位につかせるぐらいしか,もう打てる手は残ってないんですね。で,それと同時に伯爵がなんとかこれで起死回生かなと考えたのが秘められた祖先の財宝というやつです。この秘められた財宝っていうのと,あとクラリスと結婚することによって,ヨーロッパの一番古い血筋というのを売りにして,もう一回ヨーロッパ,貴族の間で婚姻外交というのを続けることができれば,カリオストロ公国という国をもう一回持ち直すことができるんではないか?今コメントあった通り,ハプスブルグ家の戦略と同じですね。財産のないハプスブルクだと思ってください。 貧乏になっちゃった。
では,最後のクラリスへの恋慕…恋愛感情ですね。これは正直僕わかんないんですよ。 何故かって言うとこの映画のカットの隅々まで観たんですけども,伯爵がクラリスを好きだという証拠は ないんですね。 一切描いてない,なんかそんな感じがするとこもあるんだと思うんですけども,別にカットが変わったら冷酷に殺そうとしたり見捨てようとしたりしてるんで,割と宮崎監督としては注意して恋愛感情みたいなものをわざとらしく入れないようにしてるんですね。もちろんストイックな人だから隠してるって可能性はあると思うんですけども,ここまで描かないようにするというのは宮崎さんとしたら珍しいと。じゃあ何故ルパンが伯爵を「色と欲の…」「ロリコン伯爵」とかって罵ったのかというと,これはもう僕から見れば明らかですね。カリオストロ伯爵っていうのはルパンのシャドウなんですね。 もう一人の自分であろうと。『天空の城ラピュタ』の特集で,おそらくパズーはシータと出会わなければムスカになっていたって話をしたと思うんですけども,同じくルパンとカリオストロ伯爵も一枚のコインの裏表なんですね。 前回の解説で,『カリオストロの城』のオープニングで,まっとうな人のまともな生活っていうのがあって,そういうところから除外された影の世界,裏の世界にルパンたちは生きていて,だから孤独なんだっていう話をしました。で伯爵っていうのは何かっていうと,ルパンが今いる影の世界,闇の世界…真っ当な世界から外れた世界から本当の光の世界を目指した男なんですね。実は偽札とか暗殺とか,そういう生き方に将来がないことを一番知ってるのは伯爵なんですよ。この方法ではカリオストロ公国に未来がないっていうの知ってるんですね。 なので国連にも加盟するし,インターポールにも友人作るし,自分の結婚式を世界中に生中継させようとするんですよ。で,一番古い貴族の血とか祖先の財宝っていうのもなんとかそれを作ろうとしてんのも真っ当な世界に行きたいと思ったからなんですね。 そういう古い血統とか祖先の財宝を侵したかったのは自分の手が血に染まってることを知ってるからです。
「…そうとも,俺の手は血に染まってる,しかし,お前もそうだろう」ってクラリスに言ったのは,だからあれはツンデレであって,本当に綺麗な言葉で言えば,だから二人で手と手を取り合って,本当の明るいまともな世界に行こうじゃないかっていうようなことを言おうとしてるわけですね。だから豪華な食事とか晩餐会も結婚式も全て闇のカリオストロ伯爵家に対する反発であって,自分が滅ぼした太閤家になりたい人間なんです。で,元々ルパン三世っていうのはカジノに忍び込んでルパンが盗んだ金が偽物だと知って,それを捨ててカリオストロの城に来た。ルパン自身も実は闇の世界に疲れを感じていて,本物の世界に憧れてカリオストロの城に来たんですね。 だからこそ,そこでクラリスで会ってしまうと。だからこそ,伯爵が金と名誉だけでなく,クラリスも欲しがってると思い込んじゃったんですね。ルパンとカリオストロは全く同じ人だから,2人とも闇の世界の住人で2人とも光を目指すと。 ただし,ルパンは光を目指している時に泥棒の流儀で目指し,金を取る。伯爵は自分がこれまでやっていた陰謀の流儀で光の世界を目指すと。実はそのお互いの手法を頑なに守る職人気質なんですね。両者ともに。でだからこそルパンはカリオストロ伯爵が自分と同じくクラリスを欲しがっていると思い込んじゃうんです。そんなこと一言も言ってないんですよ。クラリスが欲しがってるっていう風に言ってるのがルパンの一方的な思い込みで,僕はそういう関係のやつを知っててですね,これ,何かというとジンとバリストンの関係ですね。『HumterXHumter』に出てくるジンとバリストンというのは,両者とも実は同じ人間なんです。 「俺とお前は似た者同士,思いつくのは外の道ばかり」っていう風に言って,だからこそお互いが許せないっていう風になっちゃうわけですね(笑) ひょっとしたらルパンとカリオストロっていうのは出会いの順番が違ったら…だって次元だって五右衛門だっていい加減でクソみたいなヤツですから(笑)…

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