WIRED: ネットを使えない環境(スタンドアロン)でも仕事をするためのステップ
[通信] ネットを使えない環境(スタンドアロン)でも仕事をするためのステップ
ネットを使えない状況で、それでも効率よく仕事をするための3つのステップ
2022.07.05
いまや仕事に使うアプリやソフトウェアは、ほとんどがインターネットへの常時接続が前提になっている。そんな現代においても、PCの設定次第では部分的にオフラインで作業することは可能だ。そのために欠かせない3つのステップを紹介する。
ミレニアル世代の人々だって、もう若くはない。だから、忘れ去られてしまいそうな過去を振り返って共有することも、義務なのだ。例えば、かつてはインターネットに接続していなくても、ほとんどのソフトウェアがほぼ問題なく使えたといったことを──。信じがたい話だが、1990年代から2000年代初頭のPCは「オンラインになる」ことを目新しい状態として扱っていた。ところが、いまはむしろその逆だ。ほとんどのソフトウェアはユーザーが常時接続されていることが前提で、多くはオンラインでなければ動作しない。たいていはそれでも問題ない。しかし、飛行機に乗っているときや家族の農場を訪れているときなど、ネット接続がないときに仕事を片付けたい場合は、どうしてもイライラさせられる。いまの時代、オフラインではどうしてもできない作業がある。特にリアルタイムで人とやり取りする仕事に携わっている場合はそうだろう。それでも、PCでする仕事の大半をオフラインでこなせるように設定しておけば、少なくとも部分的にはオフラインで作業することは可能だ。常時接続が前提になっているこの世界において、オフラインで仕事をする方法を紹介していこう。
◆どのアプリがオフラインで使えるのかを確認する
まずやるべきことは、インターネットに依存するツールと依存しないツールを把握することだろう。大まかに言えば、ブラウザーで動作するアプリはオフラインではまず動作しない。もちろん、例外はある。例えば「Google ドライブ」は、「Chrome」の拡張機能をインストールすればオフラインでも動作する。しかし、ブラウザーで動作するアプリのほとんどはインターネットに接続した状態で動作するように設計されているので、オフラインで作業する必要がある際には当てにできない。
もうひとつ覚えておきたいのは、「Slack」など大半のコミュニケーションアプリは、オフラインではメッセージを送受信できないことだ。こうしたアプリの大半は、オフラインの際には古いメッセージを読むことすらできない。つまり、DM(ダイレクトメッセージ)のどこかに極めて重要な情報が埋もれていたとしても、アクセスできないのだ。
最後に、クラウドサービスに保存されたファイルは、PCと同期しない限りはオフラインでは開けない。「Dropbox」のようなクラウドサービスのなかには、標準設定でPCにファイルを同期するようになっているものもある。また、オフラインでもアクセスできるように、特別に印を付けたフォルダ内のファイルのみ同期する仕組みのサービスもある。普段からアクセスすることの多いファイルには、確実にオフラインで使えるように同期対象に設定しておきたい。あるツールがオフラインで動作するかどうかわからない場合は、簡単なテストがある。PCのWi-Fiをオフにするのだ。怖いという気持ちはわかる。それでも、作業にとりかかって5分もすれば、どのツールがあてにできて、どのツールは使えないのかが把握できるはずだ。
◆必要なデータをローカルに保存しておく
オフラインで動作しないアプリがわかったら、次は前もって計画を立てよう。どのプロジェクトがオフラインですべての作業をこなせるか、そのプロジェクトに取り組むために必要な情報は何か、必要な情報がすべて揃っていることを確認しておこう。特にオフラインでは動かないことがわかっているアプリに情報がある場合は、注意が必要だ。例えば、読んだり編集したりする必要のある文書があれば、そうした文書がPCのフォルダにダウンロードされていることを確認しておく。もし上司とやり取りしたDMに極めて重要な情報が潜んでいれば、その情報をローカルのどこかにコピーしておこう。個人的には、メモアプリを使うやり方が気に入っている。プロジェクトに関する重要な情報をメモアプリに集約し、専用のページやフォルダにコピーするのだ。オフラインで仕事をするには几帳面さが必要なので、「あとで検索できる」とは考えず、前もって情報を収集しておくといい。だが、時間という観点からだけでもこの方法には限界がある。情報のコピーに何時間もかけたくはないだろう。そんなとき、それほど労力を割かなくても関連情報が手元にある状態にするために、できることはある。
✔電子メールをオフラインで利用できるようにする: 最も簡単な方法は「Outlook」や「Canary」のように、すべての主要なサービスに対応したメールアプリをインストールしておくことだろう。普段はこうしたメールソフトを使っていなくても、オフラインでメールを利用できる状態にする簡単な方法だ。もし「Gmail」のほうが好みなら、オフラインで動作するようにGmailを設定してもいい。ローカルで同期するようにクラウドサービスを設定する: すでに説明したように、Dropboxは標準設定ですべてのファイルをユーザーのPCに同期する。ただし、すべてのサービスがこの方式で動作するわけではないので、仕事を進める上で必要になるフォルダーをオフラインで利用できることを確認してからWi-Fiをオフにし、実際にファイルにアクセスできるか検証してほしい。
アプリにオフラインモードがないかどうか確かめる: アプリが標準設定ではオフラインで動作しないからといって、オフラインで絶対に動かないとは限らない。Google ドライブとGmailはブラウザー上で動作するアプリだが、すでに説明したようにオフラインモードも用意されている。こうした機能があるアプリは、ほかにもある。お気に入りのアプリの使用方法を確認したり検索したりして、確認しておく価値はある。
✔音楽も同期しておく: 「Spotify」や「Apple Music」など、ほとんどのストリーミングサービスは曲をダウンロードしてオフラインで再生できるようになっている。音楽がないと仕事にならないなら、お気に入りのアルバムがダウンロードされていることを確認してほしい。少し古いやり方だが、MP3ファイルでいっぱいのフォルダもオフラインで問題なく動作することを知っておきたい。
すべては事前の計画次第だ。それさえ済ませておけばあとは簡単で、実際にオフラインで作業するだけだ。きちんと準備しておけば、問題はなにも起きないだろう。問題が起きるどころか、メールやチャットなど仕事のように感じられるが深い集中を許さないものに頻繁にじゃまされることなく、よりスムーズに仕事を進められると感じるかもしれない。
◆オフラインでは「集中する」ことに特化する
90年代には、ブラウザー以外のアプリがインターネット接続に依存することはほとんどなかった。そもそもダイアルアップ接続の時代には、インターネットに長時間にわたって接続し続けることはできなかったのである(長時間の接続をしていると、「切りなさい!」と母親から怒鳴られるはめになったものだ。「大事な電話がかかってくることになってるし、いまオンラインにしてる必要が本当にあるの? もう夜9時を過ぎているのに、こんな時間に接続してる友だちがいるの?」といった具合である)。PCはたいていオフラインだったので、ソフトウェアもオフラインで使うことを前提につくられていた。ネットにつないでオンラインでダウンロードしてから、オフラインで作業することを想定して開発されたソフトすらある。例えば電子メールソフトは、メッセージをダウンロードし、ログオフしてから返事を書き、再びログオンして送信する仕組みになっていた。しかし、2020年代になった現在、大半のソフトウエアはこのような仕組みになっていない。PCはほぼ常時オンラインになっていることを前提につくられており、インターネットに接続していないときにエラーメッセージを表示しないアプリもあるほどだ。つまり、オフラインという事態は、いまやあまりに特殊な状況なのである。アプリの開発者は、オフラインになることを問題の一般的な原因に挙げようとは思いもしない。
だが、オフラインでの作業には有益な点も多い。個人的には、裏庭や電車内で最高の記事を書けることがある。そのコツとしては、インターネット接続が必要になる作業はすべて前もって済ませておき、オフラインの時間は「集中するため」に使うことだ。ぜひ試してみてほしい。
(WIRED US/Edit by Daisuke Takimoto)
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https://wired.jp/article/how-to-work-offline/