[通信][ケータイ] 高速モバイルの草分け「CDMA 1X WIN」2022年3月31日終了
高速モバイルの草分け「CDMA 1X WIN」終了まで4カ月、心に残る18年前の騒ぎ
高槻 芳
日経クロステック/日経コンピュータ
2021.12.09
物事には必ず終わりがある。師走も近づく2021年11月末、そのことを実感する話題が2つあった。
1つは、NTTドコモが運営していた「iモード」の公式サイトが2021年11月30日をもって終了したというニュースだ。iモードはドコモが1999年に開始した世界初の携帯電話向けネットサービスである。インターネットバンキングや着信メロディー、ゲームなど豊富なコンテンツをそろえた公式サイトが幅広い消費者の支持を得たこともあり、2010年には契約数が4900万件を突破するなど一時代を築いた。
もう1つは2021年11月29日にKDDI(au)が、主に「ガラケー」で使われる3G(第3世代移動通信システム)方式の無線通信サービス「CDMA 1X WIN」を2022年3月31日に停止すると発表したことだ。終了時期は2018年に公表済みだったが、終了後の契約や電話番号などの取り扱いを今回明示した。
最初のCDMA 1X WIN対応携帯電話機「W11H」(日立製作所製、左)と「W11K」(京セラ製、右)
KDDIがCDMA 1X WINを開始したのは2003年11月。携帯電話の商用サービスとしては初めてメガクラスの速度を実現した。具体的には携帯電話基地局から端末への下り方向で最大毎秒2.4メガビットに達し、固定回線を使うブロードバンド・サービスで当時主流だったADSLになぞらえて「モバイルADSL」などと呼ばれていた。もっとも、現在は4Gを経て5Gの時代を迎えている。一世を風靡したiモードの終焉(しゅうえん)に感慨を抱く人は多いかもしれないが、18年前に始まった3GサービスのCDMA 1X WINに思いを巡らせる人は、おそらく少数派だろう。だが筆者にとっては、携帯電話の技術や業界動向を追いかける記者としての気づきを多く与えてくれた味わい深いサービスでもある。CDMA 1X WINはどのように登場し、どんなインパクトを日本の携帯電話市場に与えたのか――。それを今回振り返ってみたい。
■「パンドラの箱を開けた」と業界大騒ぎ
CDMA 1X WINと言えばいち早くメガクラスの高速通信を実現したサービスであることは前述した通り。それにも増して筆者が驚かされたのは、携帯電話のデータ通信市場に初めて定額制を持ち込んだ点だ。それまでの携帯電話におけるデータ通信の課金方法は基本的に、パケット通信量に応じた従量制だった。これに対してKDDIはCDMA 1X WINの開始に合わせ、月額4200円(税別)でパケット通信が使い放題のメニュー「EZフラット」を投入した。携帯電話単体での用途に限定したメニューではあったが、それでも非常に画期的だった。
KDDIのこうした動きをライバルはどう受け止めたのか。当時の様子については、筆者が雑誌「日経コミュニケーション」(休刊)の2003年12月8日発行号に執筆した特集記事から紹介したい。その記事は次のような書き出しで始まる(社名や所属、肩書はいずれも当時)。
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