ネットスケープ7・基礎講座
今では、ウェブページを見るための「インターネット閲覧ソフト(ブラウザ)」には、
マイクロソフト社の「インターネット エクスプローラ(Internet Explorer)」(以下 IE)
を使っている、という人がほとんどだと思います。
パソコンを買えば、すぐに使えるようになっており、大変便利です。
けれども、昔は違いました。
ほんの5~6年ほど前までは、ブラウザといえば、
ネットスケープ コミュニケーションズ社の「ネットスケープ ナビゲータ(Netscape Navigator)」(以下 NN)
を使う人が大半でした。
IEがシェアを伸ばし始めたのは1995年以降、マイクロソフトがインターネットへの対応を強化し始めてからでした。
IEはバージョンアップと共に機能を強化し、またマイクロソフトの強引とも取れる努力の甲斐もあって、しだいに使う人は増えていきました。
ネットスケープは、ソフト業界の巨人、マイクロソフトに対抗するために、世界中のソフト開発者を味方に付けようとしました。
つまり、それまでは極秘事項だった自社ソフト(つまり、NN)のソースコードを一般に公開し、ソフトの開発をネットスケープ社内だけでなく世界中のソフト開発者にもボランティアで参加してもらおう、というものでした。
それが、『モジラ プロジェクト(Mozilla Project)』と呼ばれる計画です。
しかし、この計画は遅々として進みませんでした。
開発者が思うように集まらず、スケジュールはどんどん先延ばしされました。
また、ネットスケープ社自身がアメリカ オンライン(AOL, 現在は AOL Time Warner)に買収されたりもしました。
そのため、一部では
「モジラ プロジェクトは失敗した」
という評価も出てくるようになりました。
こうした雌伏の間も、モジラ・プロジェクトは着々と進められました。
そして、2000年3月にはネットスケープ6が発表され、同年11月にリリースされました。
けれども、せっかくリリースされたネットスケープ6の評判は、散々なものでした。
モジラのかなり古いコードに基づいたネットスケープ6は、動作が遅い、機能が未完成、など酷評され、
6が出たばかりだというのに「ネットスケープ7の予定は?」と聞かれる始末でした。
ネットスケープは、数ヶ月後には大幅に性能アップしたネットスケープ6.1 をリリースしましたが時すでに遅し、
ネットスケープ6はダメ!
という一般の評価は固まってしまっていたのでした。
モジラ プロジェクトは、しかし、着々と開発を進めていました。
そして、2002年6月にはようやく開発の一応の目標である"Mozilla 1.0" のリリースにこぎ着けたのです。
開発元がバージョン1.0 の大台に乗ったことと、これまでのバージョン6に付きまとった悪いイメージを払拭する意味もこめてか、
ネットスケープは新しいソフトのバージョンをを7にしました。
これが「ネットスケープ7」です。
8/30 に、ようやく正式版(ver.7.0)が公開されました。
このネットスケープ7の特徴については、以下で述べたいと思います。
(2)なぜ、ネットスケープ7?
IEの方は始めからパソコンに入っています。このIEを使わず、あえてネットスケープ7をインストールして使うメリットはどこにあるのでしょうか?
ここでいくつかを挙げてみたいと思います。
1.IE には、危険が伴う。
IE はバージョン4以降、ウインドウズとの融合がすすめられました。
その結果、IE はウインドウズのシステム深くに入り込むようになりました。
これは、便利なことは便利なのでしょうが、同時に大変な危険も伴うことになります。
よく、ウインドウズが不安定になるから、IE はバージョンアップさせずに、古いままのを使っているという人がいます。
ですがこれは大変危険ですので、直ちに最新版にすることをお勧めします。
これに対して、ネットスケープでは、バージョンアップさせたからといって、システム全体が不安定になるようなことはありません。
システムに深く入り込まず、それ自体で完結しているからです。
ただ、ネットスケープにもセキュリティ ホールが無いというわけではありません。
IE を使っていないからといって、ウイルスやセキュリティ ホール等の危険性がゼロになるわけではありませんので、注意してください。
また、ウインドウズからIE を削除することは出来ないのだから、ネットスケープを使うことに意味はない、と言う人もいますが、
そんなことはありません。IE を利用する機会を減らすことはIE に感染するウイルスの脅威をそれだけ減らすことが出来るのです。
2.統一された操作性
インターネットは、ウェブページを見るだけではありません。
メールをやり取りしたり、インスタント メッセンジャー(IM)を使ったり、ウェブページを書くこともあるでしょう。
ネットスケープ7では、一つでこれらすべてを扱うことができるのです。
マイクロソフト社のソフトでも、これらを扱うことは可能ですが、
それぞれ別のソフトで構成されているので、インストールから別々にしなければなりません。
対応ソフト
Microsoft
Web ブラウザ:Internet Explorer
メーラー:Outlook Express
インスタント メッセンジャー:MSN Messenger / Windows Messenger
ページ作成:Frontpage Express
Netscape
Web ブラウザ:Netscape 7
メーラー:Navigator,Mail & Newsgroups
インスタント メッセンジャー:Instant Messenger (AIM, ICQ 互換)
ページ作成:Composer
また、ネットスケープ7なら、マッキントッシュ(OS 9, OS X)やリナックスでも、全く同じ見た目と機能で使用することができます。
IEは、ウインドウズ版とマッキントッシュ版とでは、見た目も機能も全く違います。
さらにリナックス版に至っては、そもそも存在しないのです。ネットスケープこそは、真にクロス プラットフォームなソフトウェアなのです。
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http://www.geocities.co.jp/SiliconValley/3809/basic.html
(3)ネットスケープ7の凄いところ
ネットスケープ7の最大のポイントは、多くの最新の標準技術に対応していることでしょう。
これまではブラウザの種類やバージョンによって見え方や挙動が異なるので、ブラウザごと、バージョンごとにそれぞれ書き分けなければいけなかったのです。けれども、ブラウザが標準技術にきちんと従えば、ウェブページの作者は一度標準に則った記述をすれば、全てのブラウザで意図したとおりに、ページを再現(表示)できるようになるのです。
ネットスケープの対応する標準技術について、表にまとめてみました。
これらの膨大な標準技術を含め、その他の様々な最新技術にも対応しているネットスケープ7は、基本的なブラウズ機能やその他の便利機能を比べても、ネットスケープのこれまでの製品はおろか、多くの部分で既にIE をも凌駕していると言っても過言ではないでしょう。
また、ネットスケープ(含モジラ)を最も特徴づける機能に"XUL"(ズール)と呼ばれる機能があります。これは、XML を基にして作られた、画面表示(UI) を規定する言語です。ネットスケープはこの仕組みによって、ウインドウズやマッキントッシュ、リナックスなどの特定のOS に出来るだけ依存しない、真にクロス プラットフォームな環境を提供できるようになりました。
この仕組みを最もわかりやすく体験してもらうためには、ネットスケープ(6以降)で、"chrome://navigator/content/navigator.xul" へアクセスしてみて下さい。どうなるかは、やってみてのお楽しみ。
ネットスケープ7には、このほかにもさまざまな新機能が追加されましたが、具体的には以下の導入&活用編で、実際に順を追って説明したいと思います。
また、ネットスケープとその開発元モジラの関係についてより詳しく知りたい方は、ネットスケープ7・中級講座へ進んでください。
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ネットスケープの対応する標準技術(モジラ1.0スタンダード リストより)
◆HTML
HTML 4.01
◆CSS
Lv.1, Lv.2 (大部分), Lv.3 (セレクタの多く)
CSS によるXML へのスタイル付け
◆Script
ECMA-262 Edition 3 (JavaScript 1.5)
◆DOM
DOM 1 & 2 (Core & HTML)
DOM 2 Style, Range, Events (大部分)
DOM 3 Load & Save (document.load()) -将来的に対応
◆XHTML
XHTML 1.0 (XML MIME type 付き)
◆XML
XML 1.0
◆XML名前空間
XML Namespaces 1.0
◆XSLT
XSLT 1.0,
XSLT によるXML 文書の変換
◆Xpath
JS APIを通じてXpath 1.0
◆SOAP
SOAP クライアント API
◆RDF
RDF 1.0 (ブラウザ資源の記述、使用の為)
◆その他
XMLHttpRequest によるXML データ交換
MathML(完了?)
SVG (将来的に対応)
P3P 1.0 等
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