1993年3月5日金曜日
[ゲーム][TVゲーム] SEGAサターン,ウルティマオンライン
[ゲーム][TVゲーム] SEGAサターン,ウルティマオンライン
今週のクソゲー
ウルティマオンライン
3/24更新Vol.36
ジャンル: オンライン専用RPG
メーカー: エレクトロニックアーツ・スクウェア(開発元オリジン)
機種: サターン
評価※☆が多いほどクソゲー的
インパクト ☆☆
技術 ☆
企画 ☆☆
皆さんは「テーブルトークRPG」というものをご存知でしょうか?その名の通りテーブルの上で数人のプレイヤーが顔を突き合わせ、ゲームマスターと呼ばれる案内役の指示や、ルールブックに記されたルールに従いながら、洞窟や秘境なりをプレイヤーのイマジネーションを頼りに、それぞれの役割を演じ、架空世界を冒険するという、トークと想像力、そしてノリが重要なゲームのことです。
プレイスタイルは、ルールブック片手のゲームマスターがプレイヤーにいろいろ状況を説明し、プレイヤーは行動を起こします。実際どんな会話が交わされるかというと、
マスター:「そのさきの突き当たりに、宝箱があるよ」
プレイヤーA:「よし、鍵開けのスキル使うぞ」
マスター:「んじゃダイス振って。5以上で成功ね」
プレイヤーA:「お、8!やったー!」
マスター:「あーその箱、トラップつき(笑)。えーとダイス振って…、2!エクスプロージョンね。」
プレイヤーA:「ええ?!ダメージは…。ぐっはー、死んじゃったよ」
プレイヤーB:「しゃあないなぁ、復活させてあげるよ。…あれ?ダイス3だから失敗だぁ(笑)」
マスター:「あ、次のターンね…、エンカウント!モンスター登場」
プレイヤーC:「うわー、マトモに動けるの、俺しかいないよ~」
プレイヤーA:「バカおまえ、さっき毒食らってたじゃん」
プレイヤーC:「うわー、全滅かも(笑)」
とまぁこんな感じです。傍目から見ると非常にマヌケですが、当人達は己が想像力をフル回転。長い間洗ってないトレーナー&ヨレヨレのジーンズを鋼鉄の鎧、ボサボサの頭を立派な鉄兜、(※1)向かいの汗臭い野郎を華奢で可憐なエルフの美少女にとそれぞれアタマの中で変換させ、人跡未踏のダンジョンを命がけで探検しているのです。
このテーブルトークRPGは海外で生まれ、80年代くらいから日本でもプレイされるようになりました。小説『ロードス島戦記』も、元はグループSNEという集団が作ったテーブルトークRPGのリプレイ集から生まれたものです。
と、このように、テーブルトークRPGは非常に知的でスリリングなゲームですが、ゲームマスター、そしてプレイヤー自身にも相当のスキルを要する、しかも「ロールプレイがわかってらっしゃる」面子が揃わないとプレイ不可な、かなり敷居の高いものです。
実はこのテーブルトークRPGをなんとかして手軽にできないものか?と考え出されたのが現在一般に知られているコンピュータゲームのRPGなのです。これさえあれば面子を揃えなくてもコンピュータの電源を入れるだけで、いつでもダンジョンを探検することが出来ます。このコンピュータRPGは『ウルティマ』『ウィザードリィ』を起点とし、現在まで脈々と受け継がれています。
しかし、このコンピュータRPG、RPGというものを手軽にしてくれたのはいいのですが、テーブルトークの最大の醍醐味である「ロールプレイ」を排除していく方向で進化していきます。キャラクターの役に徹するという「ロールプレイ」行為は、とっつきづらく面倒とされ、特に和製コンピュータRPGでは、テーブルトークからして見れば、ガチガチに固まったストーリーを、キャラを「操作」してなぞっていくものでしかなくなってしまいました。
そこで今回紹介するのはUOこと『ウルティマオンライン』です。このゲーム、「オンライン専用RPG」と銘打ってあるだけあって、インターネット接続環境が無いと全く遊ぶことの出来ないゲームです。プレイヤーは「シャード」と呼ばれる専用ゲームサーバに接続し、自ら作り出したキャラクターを操作し、シャード内を好き勝手に行動します。シャード内の、NPCやクリーチャー以外は全てあなたと同じプレイヤーキャラです。
ここで重要なのは「好き勝手」です。
プレイヤーは基本的になにやっても構いません。
普通に冒険者を目指すのもよし、鍛冶屋等の職人になって冒険者相手の武器・防具作って売るのもよし、商品の売買をする商人、果ては物乞いに身を落としても全くOK。他のプレイヤーを殺すことに命をかけたプレイヤーキラー・通称PKだろうが、ペナルティを覚悟の上なら全く問題ありません。料理のスキルを極限にまで高めた戦士?もちろん可能です。
ここでは突然額に紋章が現れ、伝説の勇者となって世界を救ったり、タダの冒険ごっこのはずが世界制服を企む悪の組織との対決になったり、ムカつくだけのおハロー女を宇宙まで行って助けることを強制されたりすることもありません。全ては自由です。
コスチュームだって、なに着ても文句言われる筋合いはありません。
オーソドックスな鎧姿はもちろん、野郎にファンシードレス、裸に赤マント・黒ブーツの変態ルック、なにも着ない生まれたままの姿も全くの合法です。事実、裸に鹿マスクかぶって「うがー」って叫びながら街を練り歩くだけの先端プレイヤーが結構いますし、それを奨励している変態プレイギルドなるものも存在します。
そのかわりUOでは、他のプレイヤーキャラとのコミュニケーションが重要になってきます。
物の売買や冒険をするためのパーティの結成、あるいはギルドと呼ばれるグループの立ち上げには、これが特に重要になってきます。ストーリーにただ漫然と乗っかる今までの閉じた和製RPGのような、独り善がりで受動的なプレイではなにをしていいかさえ判らず、たちまち行き詰まることでしょう。
そう、このUOはいままでコンピュータRPGが忘れていた「ロールプレイ」を、今ここに復活させたのです。RPGにおいて、演じるキャラの役割に徹し、そして他のプレイヤーとのコミュニケーションをとることの大切さを、UOは教えてくれたのです。そういう意味で、UOは真のコンピュータRPGと言っても過言ではないでしょう。
そしてもうひとつ、UOの特徴は特有の「泥臭さ」です。和製RPGをいちいち引き合いに出すようで悪いのですが、昨今のファイナルファンタジーシリーズをはじめとする和製RPGは、最強の戦士というよりギター持って裏声を張り上げる、お耽美ビジュアル系ロックバンドのメンバーのようなキャラ共が、いちいち「ゆくぞ!電光必撃剛斬剣~(技名適当)」なんて律儀に技名叫びながらかっこつけポーズとって、飛んだり跳ねたり光ったり眩いオーラ出したりして「ズシャァァ!」や「バシュゥゥゥ!」と派手な効果音と共に4桁とか5桁とかインフレ気味のダメージを与えるのが、どういうわけか主流です。
が、UOではそのような映画的表現(どこが?)は一切存在しません。
非常に泥臭いです。
見るからに汗臭い地味な鎧を着こみ、動物やモンスターに切りつけたり殴りかかったりします。飛んだり跳ねたり光ったり眩いオーラ出したりしません。効果音は動物たちの悲鳴、そしていかにも人が喋ってますっていうようなモンスターの声!
人が生活するためには、それなりの糧がないといけません。
倒した動物やモンスターに刃物を使って肉と皮をゾリゾリ剥ぎます。お耽美的カッコよさなんて微塵もありません。削いだ肉はその場で火を起こして焼肉、皮は裁断してから商人に売却しましょう。
また、UOのプレイヤーキャラは人間ですから、当たり前に腹を減らします。腹が減ったらどうするか?当然食わないと戦なんて出来ません。先ほどの焼肉をもりもり食いましょう。「がふっ、もしゃもしゃ、ゲップ」と、ゲップの効果音までつけてくれる人間臭さ。惚れちゃいそうです。
UOはあくまでロールプレイを目標に作られています。やはりこちらとあちらの文化の違いもあるでしょうが、これは全て、画面の中のキャラとプレイしている人間の一体感をだすための演出なのです。きっとそうです、そう思いましょう。これは、「感情移入」という言葉がせいぜい物語をストレスなく楽しむ程度の意味でしかないお耽美和製RPGに対するアンチテーゼなのです。多分。
日本の代表的RPGであるファイナルファンタジーシリーズも、どうやらオンライン化されるようですが、個人的にはとても楽しみです。え、スクウェア大嫌いの友の会代表らしくない発言だって?そりゃ「惚れる女の違いすら自分とのギャップを埋めることの出来ない主人公」のロールプレイっちゅうもんを、せっかくだから1回はやってみたいじゃなすか。ああ、考えただけでワクワクのドキドキっすよ!(でも、UOの日本発売元ってスクウェアの関連会社なんだよねぇ、皮肉なことに)
(※1)「ロードス島戦記RPGリプレイ」シリーズで、エルフ美少女のディードリットを演じていたのは、現在トンデモ本シリーズで有名な「と学会」で活躍中のSF作家、山本弘氏でした。一部で「知っちゃいけない知られちゃいけない、ディードリットが誰なのか~♪」なんて替え歌もあったらしいです。これを知っていたら、相当のマニアだぞ!ってなんでぼくもこんなこと知ってるんだろ…、このころまだ小学生だったのに。
週刊クソゲー友の会
http://www.geocities.co.jp/Playtown-Dice/1920/weekly.html
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